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陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)による東日本大震災の緊急観測結果(19)
2011年3月11日14時46分頃(日本時間、以下同じ)、東北地方の太平洋沖(北緯38.32°、東経142.37°、深さ32km)を震源とする、国内観測史上最大となるマグニチュード9.0の地震が発生しました(地震の規模・位置については米国地質調査所(USGS)による発表を参照)。宮城県栗原市で震度7、岩手県から栃木県にかけての広い範囲で震度6強が観測されるなど、極めて強い揺れが広範囲に渡って観測されました。この地震の影響で発生した津波は、震源に近い東北地方の太平洋側では最大で10メートル以上の高さに達したと見られ、沿岸地域に甚大な被害を与えています。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、2011年3月20日22時1分頃に陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)搭載のLバンド合成開口レーダ(PALSAR;パルサー)による現地の緊急観測を実施しました。本観測では2011年2月2日に同じ軌道から取得した画像と比較し、東日本大震災に伴った地殻変動の検出を試みました。また今回の観測では、2011年3月19日に茨城県北部で発生したM6.1の地震によると思われる地殻変動の検出にも成功しました。
青枠は図2で示す今回PALSARで観測した領域を、黒枠は地震後(3月15日)これまでにPALSARで観測された領域を表します。赤い星印は東日本大震災の震央位置を示しています。日本大震災に伴う地殻変動を検出するため、地震前後に取得したPALSARデータの差分干渉解析(DInSAR解析)を行いました。図2左は地震前(2011年2月2日)と地震後(2011年3月20日)のPALSARデータから得られた差分干渉画像(地殻変動図)、図2右は地震後に観測されたPALSAR画像です。図2左の差分干渉画像中、ほぼ全体に多くの干渉縞(虹色の縞々)が確認できます。これは広範囲に渡って地殻変動があったことを示しており、今回の地震が非常に規模の大きなものであったことが分かります。震央から約150km離れた山形市でも、少なくとも60cm以上の衛星から遠ざかる(東方向へのずれを含む)地殻変動があったことが分かります。
また図3では、周囲の干渉縞のパターンとは明らかに異なる局所的な干渉縞が確認できます。これは、2011年3月19日に発生したM6.1茨城県北部地震による地殻変動を表していると思われ、茨城県高萩市周辺で最大30-40cm程度の地殻変動があったと思われます。JAXAでは今後も「だいち」による当該地域への観測を継続していく予定です。
なお取得された画像は、内閣府を始めとする防災関係省庁並びに地方自治体等に提供しています。
*1 パルサー(PALSAR):
フェーズドアレイ方式Lバンド合成開口レーダ。衛星から発射した電波の反射を受信するマイクロ波レーダで、夜や曇天時も撮像が可能です。
*2 差分干渉処理:
PALSARは『2つのデータ取得時(例えば地震の前と後)における衛星-地面間の距離』に変化があった場合、それを高い精度で検出することが可能です。地震前後のデータを比較すると、地震によって発生した地面の隆起や沈降などの地殻変動は、衛星-地面間の距離の差となり、画像では干渉縞として表わされます。本例では、青→緑→黄→赤→青の色の変化は地面が衛星に近づくことを、逆の色の変化は地面が衛星から遠ざかることを表します。(今回の観測では画像の西側から東側に向けて観測しているので、地面が衛星に近づく場合は西向きの水平変動もしくは隆起を、地面が衛星から遠ざかる場合は東向きの水平変動もしくは沈降、を意味します)。なお、色の一周期は11.8cm分の距離変化(地殻変動;変動量は画像内での相対的な値)を表します。