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陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)による東日本大震災の緊急観測結果(14)
2011年3月11日14時46分頃(日本時間、以下同じ)、東北地方の太平洋沖で国内観測史上最大となるマグニチュード9.0と推定される地震が起こりました。宮城県栗原市で震度7、仙台市で震度6強、東京都で震度5強が観測されるなど、広範囲で強い揺れが観測されました。また、同日15時15分頃に茨城県沖でマグニチュード7.4の地震が発生するなど、余震も相次いで起こっています。この地震の影響で発生した津波は、震源に近い東北地方の太平洋側では最大で10メートル以上の高さに達したと見られ、沿岸地域に甚大な被害を与えています。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)では陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)搭載のLバンド合成開口レーダ(PALSAR;パルサー)により現地の緊急観測を実施していますが、ここでは2011年3月13日22時11分頃と3月15日21時56分頃に実施したPALSAR観測を用いた海上漂流物の解析結果について示します。
図1は3月13日22時11分頃に観測したPALSAR画像全体を示したものです。この観測はオフナディア角46.6度と比較的高い入射角で取得されており、海面からの散乱が低く抑えられ、漂流物の検出に適しているといえます。広域の画像から効率よく対象を検出するために、CFAR(Constant False Alarm rate)と呼ばれる周囲と比べて明るい点を見つける手法をベースとした画像処理を実施しました。その結果、合計66個の漂流物が検出されました。
仙台湾周辺の拡大図を図2に示します。緑色円内は検出された漂流物で、個々の目標を認識できていることがわかります。海上には他にも縦方向に伸びる白い線状が多数確認されますが、これは暗い海面に明るい陸域が写り込むアンビギュイティという現象のため削除しています。なお、この画像に含まれる各点の位置(緯度経度)と推定サイズは表1に示します。
No. | 緯度 | 経度 | 推定サイズ[m] |
---|---|---|---|
1 | 37:28:56.136 | 141:02:47.881 | 178.19 |
2 | 37:24:33.980 | 141:02:08.591 | 14.8 |
3 | 37:14:01.029 | 141:07:47.649 | 14.8 |
4 | 37:13:01.799 | 141:15:24.528 | 89.41 |
5 | 37:11:17.243 | 141:13:48.132 | 192.93 |
6 | 37:11:01.883 | 141:13:42.684 | 73.99 |
7 | 37:04:33.818 | 141:19:50.145 | 177.56 |
8 | 37:02:50.861 | 141:22:03.911 | 62.75 |
9 | 37:02:29.312 | 140:58:24.504 | 14.8 |
10 | 37:01:22.879 | 141:17:30.953 | 46.78 |
11 | 37:01:24.425 | 141:04:47.268 | 20.93 |
12 | 37:00:30.079 | 141:17:12.785 | 14.8 |
13 | 37:00:27.014 | 141:19:23.921 | 14.8 |
14 | 36:59:14.488 | 141:08:02.902 | 66.15 |
15 | 36:58:19.580 | 141:21:27.284 | 133.18 |
16 | 36:58:07.622 | 140:57:54.668 | 14.8 |
17 | 36:57:29.740 | 140:57:13.990 | 93.55 |
18 | 36:57:20.159 | 140:56:57.240 | 14.8 |
19 | 36:55:46.846 | 141:15:56.338 | 85.89 |
20 | 36:55:26.984 | 140:55:00.669 | 14.8 |
21 | 36:53:55.100 | 141:02:39.425 | 121.25 |
22 | 36:53:40.682 | 140:57:01.572 | 144.16 |
23 | 36:53:03.962 | 141:11:11.178 | 163.45 |
24 | 36:52:37.292 | 140:57:00.418 | 59.19 |
25 | 36:47:19.193 | 141:04:55.935 | 183.04 |
26 | 36:46:42.553 | 141:12:24.275 | 59.03 |
27 | 36:39:33.139 | 141:07:36.378 | 417.92 |
南相馬市からいわき市にかけての沖合の拡大図を図3に示します。緑色円内は検出された漂流物です。海上には他にも縦方向に伸びる白い線状が多数確認されますが、これは暗い海面に明るい陸域が写り込むアンビギュイティという現象のため削除しています。なお、この画像に含まれる各点の位置(緯度経度)と推定サイズは表2に示します。
No. | 緯度 | 経度 | 推定サイズ[m] |
---|---|---|---|
1 | 38:23:32.591 | 141:12:40.097 | 14.68 |
2 | 38:21:58.719 | 141:08:35.345 | 43.76 |
3 | 38:21:29.653 | 141:08:03.823 | 31.15 |
4 | 38:20:58.681 | 141:10:28.972 | 20.77 |
5 | 38:20:34.856 | 141:10:17.421 | 44.05 |
6 | 38:19:51.016 | 141:04:05.931 | 14.68 |
7 | 38:19:31.003 | 141:04:41.597 | 52.82 |
8 | 38:19:22.427 | 141:06:00.817 | 14.68 |
9 | 38:19:21.951 | 141:08:20.525 | 14.68 |
10 | 38:18:33.347 | 141:06:00.750 | 111.53 |
11 | 38:15:52.767 | 141:04:00.272 | 20.77 |
12 | 38:15:51.337 | 141:03:08.299 | 92.87 |
13 | 38:13:38.871 | 141:04:47.868 | 78.94 |
14 | 38:12:46.932 | 141:04:24.259 | 29.37 |
15 | 38:12:28.826 | 141:07:36.268 | 65.61 |
16 | 38:12:25.015 | 141:09:24.954 | 78.91 |
17 | 38:12:05.002 | 141:08:46.268 | 14.68 |
18 | 38:12:00.237 | 141:08:14.861 | 14.68 |
19 | 38:11:52.136 | 141:08:32.960 | 32.83 |
20 | 38:11:40.700 | 141:08:13.617 | 32.82 |
21 | 38:04:29.470 | 141:11:32.329 | 56.47 |
22 | 38:04:13.268 | 141:08:07.359 | 43.87 |
23 | 38:01:06.475 | 140:55:16.068 | 29.37 |
24 | 37:55:19.584 | 140:55:22.455 | 14.68 |
25 | 37:54:49.565 | 140:55:27.900 | 106.78 |
26 | 37:53:50.005 | 141:02:29.478 | 46.42 |
27 | 37:52:56.642 | 141:14:08.627 | 118.23 |
28 | 37:52:30.433 | 141:10:00.879 | 74.87 |
29 | 37:52:22.804 | 140:57:51.716 | 29.37 |
30 | 37:51:18.477 | 140:58:07.373 | 20.77 |
31 | 37:51:14.188 | 140:57:06.678 | 216.68 |
32 | 37:51:05.140 | 141:12:20.702 | 65.25 |
33 | 37:50:31.781 | 141:00:02.156 | 263.58 |
34 | 37:50:04.143 | 140:58:11.610 | 14.68 |
35 | 37:49:04.581 | 140:59:33.925 | 89.3 |
36 | 37:45:44.459 | 141:18:48.130 | 78.8 |
37 | 37:40:42.357 | 141:14:35.641 | 46.42 |
38 | 37:40:04.232 | 141:01:30.866 | 196.33 |
39 | 37:39:03.717 | 141:03:08.529 | 14.68 |
次に、3月15日21時56分頃に実施したPALSAR観測結果について示します。
3月13日の観測(図1~3)同様、海上の浮遊物を探知するCFAR処理を実施して、図のような結果を得ました。漂流物の分布をみると、南部(画像下方)の沖合で密度が低いのに比べて、沿岸部周辺から北部に集中していることがわかります。この密度分布は、震災から時間経過に従って変化すると考えられ、継続的に漂流物の観測を実施することが物資輸送や救難等に重要になると思われます。
JAXAでは今後も当該地域を継続して観測する予定です。
なお、取得された画像は、内閣府を始めとする防災関係省庁並びに地方自治体等に提供しています。
*1 パルサー (PALSAR):
フェーズドアレイ方式Lバンド合成開口レーダ。衛星から発射した電波の反射を受信するマイクロ波レーダで、夜や曇天時も撮影が可能です。
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