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陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)による東日本大震災の緊急観測結果(12)

2011年3月11日14時46分頃(日本時間、以下同じ)、東北地方の太平洋沖(北緯38.32°、東経142.37°、深さ32km)を震源とする、国内観測史上最大となるマグニチュード9.0の地震が発生しました(地震の規模・位置については米国地質調査所(USGS)による発表を参照)。宮城県栗原市で震度7、岩手県から栃木県にかけての広い範囲で震度6強が観測されるなど、極めて強い揺れが広範囲に渡って観測されました。この地震の影響で発生した津波は、震源に近い東北地方の太平洋側では最大で10メートル以上の高さに達したと見られ、沿岸地域に甚大な被害を与えています。

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、2011年3月20日22時1分頃に陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)搭載のLバンド合成開口レーダ(PALSAR;パルサー)による現地の緊急観測を実施しました。以下に観測データの解析結果を報告します。図1に観測位置、図2に観測データの全体図、図3に茨城県の拡大図、図4に震災前と震災後で変化が大きかった箇所の拡大図を示します。ここで紹介する画像解析手法は、今回の震災の前後で得られた画像に異なる色(赤、緑、青)をつけて合成化するものです。色がにじむところは大きな変化を表しています。この画像では、茨城県から千葉県の太平洋沿岸の被災地である、平潟港、川尻海岸、日立港、常陸那珂火力発電所、大洗町、鹿島港の被災の状況を表したものです。

図1は今回観測した範囲を示したもので、赤枠がPALSARでの観測位置を示しています。
図1: 全体図
図1: 全体図
図2は、PALSARでの災害前の2011年2月2日観測の画像を赤に、災害後の2011年3月20日の画像を緑と青に割り当てたカラー合成画像です。図2の黄枠の範囲を拡大したものを図3に示します。
図2: PALSAR災害前後のカラー合成画像全体図
図2: PALSAR災害前後のカラー合成画像全体図

(R:2011年2月2日観測 入射角34.3度 GB:2011年3月20日観測 入射角34.3度)

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図3のうち、比較的津波被害が大きかったと見られる沿岸部を更に拡大したものを図4(a)~(f)に示します。
図3: 茨城県の拡大図
図3: 茨城県の拡大図
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図4(a): 平潟港および大津港周辺の拡大図
図4(a): 平潟港および大津港周辺の拡大図
図4(b): 川尻海岸周辺の拡大図
図4(b): 川尻海岸周辺の拡大図
図4(c): 日立港周辺の拡大図
図4(c): 日立港周辺の拡大図
図4(d): 常陸那珂火力発電所周辺の拡大図
図4(d): 常陸那珂火力発電所周辺の拡大図
図4(e): 大洗町周辺の拡大図
図4(e): 大洗町周辺の拡大図
図4(f): 鹿島港周辺の拡大図 (クリックで拡大画像へ)
図4(f): 鹿島港周辺の拡大図 (クリックで拡大画像へ)

(a)は平潟港および大津港周辺、(b)は川尻海岸、(c)は日立港周辺、(d)は常陸那珂火力発電所周辺、(e)は大洗町周辺、(f)は鹿島港周辺のカラー合成画像です。海岸付近の赤色に変色している箇所は災害後に反射が弱くなったあるいはなくなったことを意味しており、津波により防波堤や港湾構造物等が流されたなど、今回の大規模な岸壁の被害を反映していると考えられます。

JAXAでは今後も当該地域を継続して観測する予定です。

なお、取得された画像は、内閣府を始めとする防災関係省庁並びに地方自治体等に提供しています。

*1 パルサー (PALSAR):

フェーズドアレイ方式Lバンド合成開口レーダ。衛星から発射した電波の反射を受信するマイクロ波レーダで、夜や曇天時も撮影が可能です。

JAXA EORC