地球が見える 2008年
JAXAにおける洪水災害観測 −ミャンマーを襲ったサイクロン「ナルギス」−
平成20年5月2日から3日にかけてミャンマーのイラワジ川デルタ地帯を襲ったサイクロン「ナルギス」による被害の様子について、JAXAでは陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)により緊急観測を実施しました。同時期に熱帯降雨観測衛星(TRMM;トリム)等による降雨観測も実施しており、このサイクロンに関係する降雨の状況を観測しています。 ①「だいち」(ALOS)搭載の高性能可視近外赤外放射計2型(AVNIR-2)による観測
図1左図は、災害前の観測画像を地図投影したもので、今回の比較対象地域を示しています。同右図は、雲の影響で全体を見ることができなかったため、黄色枠内について災害前後画像の比較を行いました。
②熱帯降雨観測衛星(TRMM)搭載センサで観測したサイクロン「ナルギス」 このサイクロンの様子は、日米協力ミッションである熱帯降雨観測衛星(TRMM)搭載のセンサや、「世界の雨分布速報」*1によっても観測されています。図6は平成20年5月3日9時(日本時間)の「世界の雨分布速報」による画像で、ミャンマー海岸部に上陸したサイクロン「ナルギス」による降雨が捉えられています。(関連サイト;ミャンマーに大きな被害をもたらしたサイクロン「Nargis」)
また、図7は、サイクロンの上陸直後の降雨と雲の様子を熱帯降雨観測衛星(TRMM)が観測した画像です。図6の動画では、4月下旬からインド洋を東進してミャンマーに近づく「ナルギス」の動きと、それとともに降雨量が多い領域(赤や黄色で示される)が東進していく様子が良くわかります。また、サイクロン上陸以前の4月28〜30日にもサイクロンによって活発化したと推測される降雨域がミャンマーの沿岸部で観測されています。
図8に、「世界の雨分布速報」による1時間ごとの降雨データを、平成20年5月2日〜3日の2日間について積算した降雨量を示します。サイクロンはミャンマーのイラワジ川デルタ地帯に5月2日21時(日本時間)頃に上陸したと考えられますが、積算降雨量の多いところ(黄色〜赤色の領域)は、このデルタ地帯やその沖の海上に見られます。デルタ地帯には2日間で200〜220mmの大きな積算降雨量が観測されています。この図から5月2日〜3日でデルタ地帯に降水量が非常に多かったことがわかります。 *1 JAXA/EORCでは、昨年11月より、「世界の雨分布速報」として、熱帯降雨観測衛星(TRMM)など複数の衛星観測データを使用して、観測から約4時間後の準リアルタイムで、高分解能の世界の降雨量の分布画像を作成し、インターネット上で毎時更新しています。 このように、衛星観測から約4時間後という準リアルタイムで、高い時間・空間分解能の世界の降雨量を算出するシステムを構築したことにより、アジアの発展途上国をはじめとする、台風や豪雨災害が頻発するにも関わらず地上で雨の情報が不足している地域に対して、速やかな情報提供を行うことが可能となりました。 参考)熱帯降雨観測衛星(TRMM)などを用いた「世界の雨分布速報」の公開について(平成19年11月14日) *2 雲画像は、気象庁、欧州気象衛星機構(EUMETSAT)、米国海洋大気局(NOAA)及び日本気象協会の提供による。
|