地球が見える 2014年
「しずく」が捉えた北極海氷面積の最新状況 氷が増える南極海と減る北極海
今年も北極海の海氷が年間で最も小さくなる時期を迎えています。図1は2012年5月に打上げられた水循環変動観測衛星「しずく」に搭載されている高性能マイクロ波放射計AMSR2が捉えた2014年9月17日の北極域の海氷密接度分布を、また、図2は北半球の海氷域面積の季節変動を示しています。
図3は、人工衛星搭載マイクロ波放射計のデータを解析して算出した1978年から現在まで北半球の海氷面積の推移を示します。先日、南半球の海氷面積は3年連続で観測史上最大記録を更新したとお伝えしましたが、それとは対照的に、北半球では1970年代後半以降急速な減少傾向にあり、2014年も依然として面積が小さい状態であることが分かります。 図4は、2012、2013年と今年の夏期(6-8月の3カ月平均)の北極海上空の曇天率と500hPa等圧面高度の偏差を示しています。昨年は、北極点を中心に低気圧が広がりやすく、曇天率も2割程昨年より高かった(つまり雲が日射を遮り、海氷融解を抑制する天候状態となっていた)状態が持続しましたが、今年は北極海上に高気圧偏差と低気圧偏差の中心が交互に並んでいる様子が分かります。今夏はこのような局地的に偏在する気圧配置が形成されやすかったため、シベリアからの卓越風(赤線矢印)に押し込まれる形で、ラプテフ海の海氷が図1に示すように、大きく高緯度側に後退する要因になったと考えられます。
海氷が後退した海域では、日射を吸収して水温が上昇しやすくなります。図5は、8月中旬から後半(13日〜28日)にかけてNASAの地球観測衛星Terraが搭載する光学センサMODISにより観測された晴天時の陸域・海氷域反射率および海面輝度温度を合成した画像です。ラプテフ海の表面水温(点線赤丸)が5℃以上に上昇していることが分かります。このことからも、この海域では海氷が融解・後退し、海氷のない温かい海域が広がっていたことが分かります。
以上見てきたように、今年も北極域の気圧配置や気温の変動が、海氷面積の減少速度の振幅に影響を及ぼしているようです。近年の海氷面積減少により、北極海の海氷の厚さが薄くなってきていることが、周囲の環境因子の変動の影響を敏感に受けやすくなってきている要因の一つと考えられます。9月の融解最小時期を過ぎても、北極海の海氷は、まだ薄く脆い状態がしばらく続きます。JAXAでは、今後も「しずく」による北極海氷の監視を続けていき、「地球が見える」等で最新の状況をご報告する予定です。
※1 海氷密接度:衛星の瞬時視野内に含まれる海氷域の面積割合(%) ※2 海氷面積:本稿で用いる海氷面積は、海氷が浮遊する海域の広さとして定義しており、海氷密接度15%以上の海域面積の総和をとったもの(km2)。 ※3 IARC-JAXA情報システム(IJIS):1999年(平成11年)10月、(独)宇宙航空研究開発機構(JAXA)の前身である宇宙開発事業団(NASDA)が、国際北極圏研究センター(IARC)に人工衛星データ利用推進のためのコンピュータシステム「IARC-NASDA情報システム(INIS)」を設置し、IARCを拠点とする北極圏研究プロジェクトが始まりました。2005年(平成17年)3月、JAXAは、INISに代わる新たなシステム「IARC-JAXA情報システム(IJIS)」を構築し、IARC-JAXA北極圏研究を推進しています。 観測画像について
(図1)
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観測衛星: | 第一期水循環変動観測衛星しずく(JAXA) |
観測センサ: | 高性能マイクロ波放射計 AMSR2(JAXA) |
観測日時: | 2014年9月17日 |
(図4)
観測衛星: | 地球観測衛星Terra (NASA) |
観測センサ: | 中分解能スペクトロメータ MODIS (NASA) |
観測日時: | 2012、2013、2014年6-8月 |
(図5)
観測衛星: | 地球観測衛星Terra (NASA) |
観測センサ: | 中分解能スペクトロメータ MODIS (NASA) |
観測日時: | 2014年8月13-28日 |
関連サイト
- AMSR/AMSR-Eページ
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