地球が見える 2009年
北極海の海氷 やや回復
今年もまた、北極海の海氷域が融解最小時期を迎えました。昨年、一昨年と最小面積値が500万km2を大きく割りこむ状態が続きましたが、今年は3年ぶりに525万km2にまで回復しました。 図1は、今年の最小面積が記録された2009年9月13日の海氷分布の様子です。また、図2は2002年以降一日毎に観測された海氷面積の季節変化の様子を、年毎に色別の線で示しています。昨年(橙色の線)は、8月上旬までは2005、2006年と同様の面積で推移していましたが、8月中旬を過ぎてから異例の早いペースで縮小が進み、2007年に次ぐ史上2番目の小ささにまで縮小しました。一方今年は、ちょうど2003-2008年の平均的な振る舞い(図2の灰色太線)に寄り添うように推移しました。海氷面積曲線はすでに上昇を始め、海氷縁では結氷も始まりだしていますので、9月13日の面積がこのまま今年の最小面積となる見込みです。結果的に、今年の最小面積は、2007、2008年に次ぐ3番目の小ささとなりそうです。 図3 人工衛星がとらえた融解最小時期の北極海氷分布
(左:1979年、中央:2007年、右:2009年) 図3は、AMSR-Eが捉えた今年の海氷分布の様子を、衛星観測史上最小面積を記録した2007年の分布、そして今から30年前(1979年)にNASAのSMMRによって観測された分布と比較した画像です。今年の海氷分布は、2007年に比べれば、東シベリア海で若干回復している様子がわかりますが、それでも30年前に比べるとシベリア沿岸からすっかり海氷がなくなっている様子が見て取れます。また、カナダの多島海付近の海も以前は氷で埋め尽くされていましたが、最近は島と島の間に海氷がない水路ができている様子がわかります。
「地球が見える」の中でたびたびご紹介しているように、今年春の海氷状態は昨年に引き続きもろい状態が続いていました。しかし、今年の夏は北極域の天候が、前半(6-7月)と後半(8月)で激しく変動しました(図4)。前半は2007年と同様、カナダ寄りの海域を高気圧が覆い晴天率が高い状態が続きましたが、後半は一転し、北極海上空に低気圧が居座って曇りがちとなり、海氷が2007年のように高緯度側に風で押し込まれることもありませんでした。 しかしながら、回復したとはいっても、昔と比べればまだまだ海氷が少ない状態が続いていますので、今後も注意深く監視していく必要があるでしょう。JAXAでは、これからも北極海の海氷変動を常時監視し、最新の状況をご報告していきます。 なお、北極海の海氷密接度の分布画像および海氷面積値情報は、JAXAが米国アラスカ州立大学北極圏研究センター(IARC)に設置しているIARC-JAXA情報システム(IJIS)を利用した北極海海氷モニター上で日々更新を行い、公開しております。 観測画像について(図1)
いずれもAMSR-Eの6つの周波数帯のうち、36.5 GHz帯の水平・垂直両偏波と18.7 GHz帯の水平・垂直両偏波のデータを元に、AMSR/AMSR-Eのアルゴリズム開発共同研究者(PI)であるNASAゴダード宇宙飛行センターの Josefino C. Comiso博士のアルゴリズムを用いて算出された海氷密接度を表しています。データの空間分解能は25 kmです。
海氷域はSMMR(米国雪氷データセンターより取得)、AMSR-Eの海氷密接度データを、また、陸域については1ヶ月間のMODISデータから晴天域の画像のみを抽出した画像を合成したものです。MODIS画像の色付けは、MODISの 36 のチャンネルのうち、いずれも可視域のチャンネル1(620 〜 670 nm) に赤、チャンネル2 (841 〜 876 nm) に緑、チャンネル3 (459 〜479 nm) に青を割り当てて合成しています。また、海氷がない海域は紺色になるように合成しています。元の画像の分解能は9 kmです。
(図4)
MODISの可視−熱赤外域の反射率・輝度温度データから曇天域を特定し、1か月ないし2ヶ月間の曇天日の割合(曇天率)を算出しています。画像は、2000年以降の曇天率の平均値からの差(偏差)をとったもので、晴天が多いところが赤く、曇天が多いところが青く色づけされています。元の画像の分解能は9 kmです。 |