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地球が見える 2006年

北極海の海氷域に出現した巨大ポリニア

ここ数年来、北極海の夏の海氷面積は減少を続けています。特に昨年(2005年)の夏は、例年よりも一段と面積が縮小し、衛星観測史上最小となったのは記憶に新しいところです。そして、その傾向は今年も継続しています。
図1 AMSR-Eにより観測された過去5年間の9月10日の北極海の海氷密接度分布
図1は、NASAの地球観測衛星Aquaに搭載されているJAXAの改良型高性能マイクロ波放射計AMSR-Eの観測により捉えられた過去5年間の9月10日の北極海の海氷密接度分布の様子を順に並べたものです。図では観測された海氷密接度の大きな部分を赤色〜白色で、小さな部分を水色〜青色で表しています。また、海氷のない海域を濃い青、陸域を灰色で表しています。赤い線は1988〜2000年の9月の海氷の端の平均値(*1)を示しています。なお、北極点のところの黒い円はAMSR-Eが観測できない領域、つまりデータのない領域を示しています。
9月は北極海の海氷の面積が1年のうちで最も小さくなる月ですが、図1より、最近5年間はいずれの年も、海氷面積が過去の平均値よりも縮小していることが分かります。昨年ほどではありませんが、今年(2006年)の海氷分布も、東部シベリアの北方沖で海氷域が赤い線の内側(極側)に後退している様子が伺えます。また、米国アラスカ州バローの沖合いには、海氷域の内側にぽっかりと大きな穴(海水面)が開いている様子が分かります。
図2 MODISにより観測された過去5年間の9月6-13日(2004年は5-12日)の
北極域の画像
図2はNASAの地球観測衛星Terraに搭載されている光学センサMODISにより捉えられた9月10日前後の8日間の北極域の画像です。各画像は、8日間の画像から晴天域のみを抽出して一枚の画像に合成したものです。グリーンランドなどの陸上の氷域と海氷域が白〜水色で表されており、その濃さが氷の表面の融解の程度(濃い水色のところほど表面が融解している)を示しています。また、8日間で除去できなかった雲は白〜灰色に、陸域は赤褐色に、そして海氷のない海域は黒にそれぞれ表されています。

図2からも、アラスカ州バローの沖合いに黒い海水面が大きく開いている様子を確認することができます。そしてその大きな穴の周辺(特に低緯度側)の海氷は濃い水色に見えており、表面が融解していることが分かります。このような海氷域の内側にできる海水面は、「ポリニア」と呼ばれています。ポリニアは、周辺の海氷域に比べて反射率が低いため、降り注ぐ太陽光をより多く吸収して海水温を上昇させ、周囲の海氷をさらに融解させるように働くと考えられています。

今年バロー沖に見つかったポリニアは、8月上旬に出現して以来2ヶ月近くにわたって維持され、10月初めにようやく消滅しました。これほど大規模なポリニアは、人工衛星による北極海の海氷観測ではこれまでに報告されていません。一体どのようなメカニズムで形成されたものなのか、また、今年の冬そして来年の北極海の海氷分布の変動にどのような影響を及ぼしていくのか、今後も注意深く監視を続けていく必要があります。



(*1)海氷の端の平均値:
ここでは1988年から2000年の平均値を示しています。1988年から2000年の9月の月平均データは13回あり、ある画素でこれらをカウントしていって半数以上が海氷あり(密接度で15%を超えていることを示す)の場合に、その画素では海氷が存在すると判断しています。海氷端の線は、これらの海氷範囲図の一番外側を取ったものです。
また、海氷面積は、海氷がある各画素の面積(標準的には625km2)を合計して求めています。なお、北極点付近は観測できませんが、海氷があるとして計算されています。

観測画像について:
(図1)
観測衛星: 地球観測衛星Aqua (NASA)
観測センサ: 改良型高性能マイクロ波放射計 AMSR-E (JAXA)
観測日時: 2002〜2006年の9月10日
いずれもAMSR-Eの6つの周波数帯のうち、36.5 GHz帯の水平・垂直両偏波と18.7 GHz帯の水平・垂直両偏波のデータを元に、AMSR/AMSR-Eのアルゴリズム開発共同研究者(PI)であるNASAゴダード宇宙飛行センターの Josefino C. Comiso博士のアルゴリズムを用いて算出された海氷密接度を表しています。図1のデータの空間分解能は25 kmです。

(図2)
観測衛星: 地球観測衛星Terra (NASA)
観測センサ: 中分解能撮像分光放射計 MODIS (NASA)
観測日時: 2002〜2006年の9月6〜13日(2004年のみ9月5〜12日)の8日間
地上分解能: 18.3 m×24.2 m
地図投影法: UTM(ユニバーサル横メルカトール)
いずれもMODISの1,230〜1,250 nm、545〜565 nm、459〜479 nmの各バンドの反射率をそれぞれ赤、緑、青に割り当ててカラー合成した画像です。8日分の画像から晴天部分の画像を抽出して合成したもので、空間分解能は10 kmです。

関連サイト:
AMSR/AMSR-Eページ
縮小が進む北極海の海氷−2005年は観測史上、最小−
地球が見える 北極・南極のページ
本文ここまで。
画像:人工衛星の情報を掲載 サテライトナビゲーター
画像:衛星利用の情報を発信 衛星利用推進サイト
画像:衛星から見た地球のデータ集
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