ページの先頭です。
本文へジャンプする。
【重要なお知らせ】このページは過去に公開された情報のアーカイブページです。更新を終了しているため、リンク切れや古い情報が含まれている可能性があります。 最新情報については、新サイト Earth-graphy (earth.jaxa.jp) をご利用ください。
ここからサイト内共通メニューです。
サイト内共通メニューを読み飛ばす。
サイト内共通メニューここまで。
ここから本文です。

地球が見える 2007年

エヴェレスト周辺でも融ける氷河

図1 エヴェレスト周辺の広域画像
(Google Earthで見るエヴェレスト (kmz形式、1.90MB、低解像度版))
図1は2007年1月の世界最高峰、エヴェレスト(標高8,848 m)を含むヒマラヤ山脈の山々です。南東から照らす太陽光のため、急峻な山頂や尾根は自身の陰を左上の方向に延ばしています。エヴェレストは図右の大きな三角形の陰のところです。さらに、ローツェ(8,516 m)、チョー・オユー(8,201 m)を含む高峰と多くの氷河、水色の氷河湖が見えています。氷河は、白、薄い水色、あるいは薄い茶色の筋として見えています。図の上半分は中国チベット自治区、下半分はネパールで、図の中央を東西に国境線が走っています。上記の3つの8,000 m峰はいずれも国境線上にあります。
エヴェレストが世界最高峰であることがわかったのは1852年のことでしたが、当時はチベットもネパールも鎖国状態で現地名が分からなかったため、インド測量局長官として業績のあったイギリス人、ジョージ・エベレストにちなんで名づけられました。チベット名「チョモランマ」は「世界の母神」を意味し、ネパール名の「サガルマータ」は「世界の頂上」を意味します。
エヴェレストの初登頂は1953年にイギリス隊によって成し遂げられ、ニュージーランド人のエドモンド・ヒラリーとシェルパのテンジン・ノルゲイが5月29日に頂上に立ちました。

(a) ツォー・ロルパ氷河湖 (b)トクパ・ナクツァン(メンルン)氷河上の氷河湖
(c) ロンプー氷河上の氷河湖 (d) イムジャ氷河湖
図2 エヴェレスト周辺の氷河湖の拡大図
図2a〜2dは図1に含まれる氷河湖のうち、主なものを拡大した図です。
図2aはエヴェレストの西南西約46 kmに位置するツォー・ロルパ氷河湖を示しています。この図で大きさを測ると、幅は約600m、長さは約3,400mあります。この氷河は国連環境計画(UNEP)の報告書*で、決壊の恐れがあると指摘されています。図4の比較画像も参照願います。
図2bはエヴェレストの西約47 kmのところのトクパ・ナクツァン(メンルン)氷河を示しています。図中央に見える氷河湖はこの10年間のうちにできたもので、幅約700 m、長さ約1,100 mの大きさとなっています。図4の比較画像も参照願います。
図2cはエヴェレストの北西約15 kmのところのロンプー氷河を示しています。この氷河の表面では、幅約500 m、長さ約2,000 mの範囲で、小さないくつかの氷河湖が互いにつながって大きな氷河湖ができました。図6の比較画像も参照願います。
図2dはエヴェレストの南約9 kmに位置するイムジャ氷河湖を示しています。幅は約600m、長さは約1,500〜2,000mあり、この氷河もUNEPの報告書*で、決壊の恐れがあると指摘されており、地元の人たちが心配しているそうです。

図3 エヴェレストの西の領域の比較
図3右は図1の黄色の四角い枠内の色違いの画像で、図3左は1996年12月の同じ領域です。
左右の図はほぼ同じ季節ですが、2007年の画像では1996年の画像に比べて、雪や氷に覆われた白い領域が少なくなり、植生を表す緑色の領域が増えたことがわかります。また、図3の拡大図である図4〜6を見ると、この10年で新たな氷河湖ができたり、多くの氷河湖が増水して湖面が拡大したり、氷河の表面が融け始めたりしたことが分かります。これらの図は、地球温暖化の影響がエヴェレスト周辺にまで及んでいることを示しています。
なお、図3〜6は図1および図2と色付けが異なるので、氷河は白や薄い紫色の筋として、氷河湖は濃い紫色に見えています。

図4 トクパ・ナクツァン(メンルン)氷河とツォー・ロルパ氷河湖周辺の拡大図
左上の矢印のところを見ると、この10年間でトクパ・ナクツァン(メンルン)氷河に新たに大きな氷河湖ができたことが分かります。決壊の恐れが心配されるツォー・ロルパ氷河湖には上流側(下の矢印のところ)で若干の変化が見られます。また、他の矢印のところの色が白から紫色に変わっており、表面の雪や氷が融け始めたことが分かります。

図5 ギャプラ氷河周辺の拡大図
濃い紫色の氷河湖がいくつか見えていますが、矢印のところに注目すると、およそ10年間で氷河湖が大きくなったことが分かります。また、1996年には白かったのに2007には紫色に変わった領域があり、表面の雪や氷が融け始めたことを示しています。植生を表す緑色の領域が増えたことも分かります。

図6 ロンプー氷河周辺の拡大図
右上の矢印のところを見ると、1996年の画像では、ロンプー氷河の表面に濃い紫色の大きさ数十mの小さな氷河湖がいくつか点在していましたが、2007年にはそれらが互いにつながり、大きな氷河湖になりつつあることがわかります。また、他の矢印のところの色がやはり白から紫色に変わっており、表面の雪や氷が融け始めたことが分かります。

図7 エヴェレスト周辺の立体視用画像
(目が疲れないように、あまり長い時間、見ないでください。カラー印刷してから見る場合は、pdfファイルをご利用下さい。左目用pdfファイル右目用pdfファイルも用意しました。)
図7はエヴェレスト周辺をパンクロマチック立体視センサ(PRISM)が2006年12月に観測した前方視画像と直下視画像による立体視用画像です。この画像では北はほぼ右側になっているので、ご注意願います。
赤と青の色メガネを使って見ると、図中央のエヴェレスト、図左下のローツェを含む急峻な山々、枝別れした深い谷、谷筋の上流を流れ下る氷河が手に取るように見えます。雪や氷を示す白い領域は標高の高いところであることが分かります。図左にはイムジャ氷河湖、右上にはロンプー氷河の表面にできた氷河湖が見えます。



* "Inventory of Glaciers, Glacial Lakes and Glacial Lake Outburst Floods Nepal," United Nations Environment Programme (UNEP) & International Centre for Integrated Mountain Development (ICIMD), 2002

参考文献:
ヒマラヤ名峰事典、平凡社、1996年

参照サイト:
赤青メガネの作り方について(「榛名山を立体視」付録参照)

観測画像について:
(図1、図2a〜d、図3〜6の右側)
観測衛星: 陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)
観測センサ: 高性能可視近赤外放射計2 型(AVNIR-2)
観測日時: 2007年1月19日05時00分頃(世界標準時)
地上分解能: 10m
地図投影法: UTM(ユニバーサル横メルカトール)
AVNIR-2は、4つのバンドで地上を観測します。図1及び図2a〜dは、いずれも可視域のバンド3 (610〜690ナノメートル)、バンド2 (520〜600ナノメートル)とバンド1 (420〜500ナノメートル)を赤、緑、青に割り当てカラー合成しました。この組合せでは、肉眼で見たのと同じ色合いとなり、雪や雲は白く、氷河は白ないし薄茶色に、露出した岩や土砂は茶色っぽく、枯れ草は焦げ茶色に見えます。黒はデータがないことを示しています。
図3〜6の右側は、バンド3(610〜690ナノメートル)、バンド4(760〜890ナノメートル)とバンド2(520〜600ナノメートル)を赤、緑、青に割り当てカラー合成したので、肉眼で見た色にほぼ近い色付けですが、植生の緑色がやや強調され、雪や氷が紫色がかって見える合成画像です。雪や氷は白または薄紫色に、森林は濃い緑色に、草地は黄緑色に、氷河湖は濃い紫色に見えます。黒はデータがないことを示しています。

(図3〜6の左側)
観測衛星: 地球資源衛星1号「ふよう1号」(JERS-1)
観測センサ: 可視近赤外放射計(VNIR)
観測日時: 1996年12月3日05時13分頃(世界標準時)
地上分解能: 18.3 m×24.2 m
地図投影法: UTM(ユニバーサル横メルカトール)
可視域の630〜690ナノメートル、近赤外域の760〜860ナノメートル、可視域の520〜600ナノメートルの各バンドに赤、緑、青色を割り当てているので、肉眼で見た色にほぼ近い色付けですが、植生の緑色がやや強調され、雪や氷が紫色がかって見える合成画像です。雪や氷は白または薄紫色に、森林は濃い緑色に、草地は黄緑色に見えます。黒はデータがないことを示しています。

(図7)
観測衛星: 陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)
観測センサ: パンクロマチック立体視センサ(PRISM)
観測日時: 2006年12月4日午前05時00分頃(世界標準時)
地上分解能: 2.5 m
地図投影法: UTM(ユニバーサル横メルカトール)
PRISMは地表を550〜720 nm (ナノメートル:10億分の1メートル)の可視域1バンドで観測する光学センサで、3 組の光学系(望遠鏡)を持ち、衛星の進行方向に対して前方、直下、後方の3方向の画像を同時に取得します。得られる画像は白黒画像です。 図7は直下視の画像(赤)と前方視の画像(緑と青)を用いています。左目で衛星の直下を、右目で衛星の前方を見るので、左側が衛星の進行方向になり、左側がほぼ南の方向に対応します。図1〜6では上側が北になっていますが、図7では右側がほぼ北になっているので、注意しましょう。

関連サイト:
ALOS 解析研究ページ
後退するフェドチェンコ氷河
8,000m峰と氷河群(その2):ヒマラヤ、チョー・オユー
地球が見える 陸地・地形
本文ここまで。
画像:人工衛星の情報を掲載 サテライトナビゲーター
画像:衛星利用の情報を発信 衛星利用推進サイト
画像:衛星から見た地球のデータ集
画像:ページTOP