地球が見える 2005年
2005年初の接近台風:台風4号−新しい台風データベースも公開−
今年初めて日本に接近する台風4号ネサット(NESAT)は、6月10日から11日にかけて関東に近づく見込みです。10個の台風が上陸した昨年の場合、最初に日本に接近した台風は4月に発生しましたが、6月には3個の台風が接近し、そのうち2個が上陸しました。中でも、2004年の台風4号は6月11日に室戸岬に上陸し、上陸時期が早い台風としては歴代5位を記録しました。 図1は、2005年6月5日17時28分(日本時間)に、熱帯降雨観測衛星TRMM搭載の降雨レーダ(PR)で観測した台風4号の地表面付近の降水量を、可視赤外放射装置(VIRS)で観測した雲画像に重ねたものです。また、図2は、TRMMに搭載されているTRMMマイクロ波観測装置(TMI)が同時に観測した地表面降雨量です。6月5日の15時(日本時間)発表の中心気圧は940hPa、最大風速は45m/sでした。 雲画像からだけでは台風の中心にあたる「台風の目」は明確には見えません。しかしながら、降雨レーダによる観測は、台風の目を取り囲む壁雲に沿って雨域が発達しており、特に東側で強い雨が降っていることがわかります。また、マイクロ波放射計による観測も、台風の目の存在と、台風の周りで「の」の字形に発達している雨域を明らかにしています。
図3は、このときの降雨レーダによる降雨の立体観測を、3次元ムービーにしたものです。台風の雲は、VIRSによって観測された雲頂輝度温度データを用いて作成しています。台風の壁雲の付近で、塔状の降雨が非常に高い高度まで発達しているのが見て取れます。
図4は、2005年6月7日1時54分(日本時間)に、米国の地球観測衛星Aqua搭載のマイクロ波放射計AMSR-Eが観測した、台風4号の降雨量です。2日前のTRMMの観測と比較すると、発達した雨域が北東域に移動していることがわかります。台風の目も、やや弱まってはいますが、存在を確認することができます。 EORCでは、2005年6月8日に「TRMM台風データベース」と「AMSR/AMSR-E台風データベース」を統合した、「JAXA/EORC台風データベース」を新たにオープンしました。これまで両データベースは別々に運用してきましたが、今回これを統合し、TRMM/PR、TMI、VIRS、Aqua/AMSR-E及び、みどりII(ADEOS-II)/AMSRにより観測された台風やハリケーンなどの熱帯低気圧を、同時に検索できるようになりました。また今回から新たにTRMM PRによる3次元ムービー(現在は、時期を限定した公開。今後順次アップデート予定)がコンテンツに加わり、図3のように、これまでより詳細に台風の立体構造を見ることが出来ます。 なお「台風速報ページ」に関しては、これまで通り衛星別での運用となりますので、「TRMM台風速報ページ」と「AMSR-E台風速報ページ」のそれぞれをご参照ください。
関連サイト: JAXA/EORC台風データベース TRMM台風速報 AMSR-E台風速報 AMSR-E「今日の一枚」 付録: 台風4号の名前「ネサット(NESAT)」は、カンボジア語で「漁師」を意味します。平成12年に始まった台風のアジア名は、北西太平洋域の加盟14カ国から提案された、140個の名前のセットです。127番目の「ネサット」から始まる14個の名前は、この名前のサイクルの最後の14個にあたり、一巡の後は再び1番に戻ります。過去の台風の年間発生頻度を考えると、今年中にはこれら140個すべての名称を一巡することになるでしょう。 台風の名前に関する詳細はこちら |