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地球が見える 2008年

グリーンランド西部の融ける氷床(その2)

図1 グリーンランド西部の氷床上の融解池の16年を経た変化
図1はグリーンランド西部の海岸から東に約100〜175kmの領域で、合成開口レーダで観測した氷床の表面上の様子を示しています。左は日本の地球資源衛星1号「ふよう1号」による1992年10月の画像で、右は本年(2008年)8月と10月の陸域観測技術衛星「だいち」による画像です。
左の画像を見ると、今から16年前の1992年の時点ですでに多くの融解池(氷床の表面上の雪や氷が融けてできた池)ができていたことが分かります。左右の画像を比べると、1992年にできていた池は2008年にも同じ場所にできていて、拡大したものもあること、そして2008年の画像では池の数が増えるとともに、1992年には融解池ができていなかった東側の内陸部にも融解池ができたこと、つまり融解池の分布域が内陸部に拡大したことが分かります。
左右いずれの画像でも、西側半分が暗く、東側半分が明るく見えていますが、これは西側の氷床の表面の雪や氷が融けたり、一旦、融けた後に凍ったりして表面が滑らかになっており、一方、東側では氷床の表面に積もった雪が融けずに残っているためだと思われます。また、両画像ともに画像全体に東西方向の筋がたくさん見えていますが、これらは地吹雪の跡か、氷床表面の水の流れの跡ではないかと思われます。

図2 グリーンランド西部の広域図
(Google Earthで見るグリーンランド西部(kmz形式、3.44MB、低解像度版))
図2はだいち搭載の合成開口レーダPALSARが広観測域モードで本年(2008年)9月に観測したグリーンランド西部の広域画像です。図の範囲は東西190km、南北290kmに及んでいます。図の左中央にイルリサット・アイスフィヨルドが明るい灰色に見えており、その河口の北側にはディスコ湾に臨むイルリサットの市街地が明るい点として見えています。一方、イルリサット・アイスフィヨルドの東側には先端が三ツ股に分かれた黒い筋が延びています。これはヤコブスハン氷河(グリーンランド語ではセルメク・クジャレク)の源頭部だと思われます。
図を西側から見ていくと、海に続いて、フィヨルドと露出した岩が複雑に入り混じった領域、黒く見えて表面が滑らかな氷床、白地に黒い点が点在する融解池のある領域、そして白く見える本来の氷床の領域に分けられることが分かります。
イルリサット・アイスフィヨルドを含む左側の大きな黄色い枠は、前回の記事「グリーンランド西部の融ける氷床」の図2の範囲を示しています。図1の場所はその東側に相当します。
広観測域モードでは地上分解能が100mと粗くなりますが、250〜350kmの広い幅で地表面を観測することができるので、広大なグリーンランドの氷床の様子をモニタするには適しています。

図3 融解池の見え方の違い
図3はイルリサットから南東へ約100kmの領域で、前回記事の図4と同じ場所です。左側は本年(2008年)7月3日の昼間に光学センサのAVNIR-2が観測した画像で、右側は約2週間後の夜間にPALSARが観測した画像です。
左の画像で青く見える融解池は、右の画像では周囲よりも明るく見えたり、真っ黒に見えたりしています。融解池が真っ黒に見えるということは、PALSARの電波が衛星の方にほとんど戻ってこないことを意味するので、表面が凍らずに滑らかな水面となっていることを示しています。一方、融解池が明るい灰色に見えるということは、PALSARの電波が衛星の方にある程度戻って来たことを意味するので、表面が気泡を多く含んで凍っている状態か、あるいは表面が凍らずに水面が波立った状態であることを示しています。

このようにAVNIR-2のような光学センサとPALSARのような電波センサでは、融解池の見え方が異なりますが、大部分が北極圏にあり、冬が近づくと日差しが弱まって、さらに極夜となるグリーンランドの氷床のモニタには、雲や昼夜の別なく地表の様子を観測できる電波センサの方がその威力を発揮します。



観測画像について:


(図1左、図をクリックすると2段階で拡大します)
観測衛星: 地球資源衛星1号 (JERS-1)
観測センサ: 合成開口レーダ (SAR)
観測日時: 1992年10月24日14時22分頃 (世界標準時)
1992年10月26日14時26分頃 (世界標準時)
観測周波数: 1,275 MHz (Lバンド)
地上分解能: 18m
地図投影法: UTM(ユニバーサル横メルカトール)
合成開口レーダは昼夜、天候に関わらず地球表面を観測することができるセンサです。得られる画像は白黒で、合成開口レーダから送信された電波を強く反射したところが明るく見えます。図1左の画像はSARの画像6枚を貼り合わせて作成しました。より広い範囲を表現するため、図1左では地上分解能を75mに間引いています。

(図1右、図2及び図3右側。図をクリックすると2段階で拡大します)
観測衛星: 陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)
観測センサ: フェーズドアレイ方式Lバンド合成開口レーダ(PALSAR)
観測日時: 2008年8月29日01時05分頃 (世界標準時) (図1右側)
2008年10月26日01時02分頃 (世界標準時) (図1右側)
2008年9月15日14時28分頃 (世界標準時) (図2)
2008年7月19日01時10分頃 (世界標準時) (図3右側)
観測周波数: 1,275 MHz (Lバンド)
観測偏波: HH
地上分解能: 12.5m (高分解能モード、図1及び図3)、100m (広観測域モード、図2)
地図投影法: UTM(ユニバーサル横メルカトール)
図1右、図2、図3右の画像はいずれも、PALSARから送信された電波が地表面で反射されて再びPALSARに戻ってくる電波の強さを表しています。このため、電波がほとんど戻ってこない水面や表面が滑らかな氷河や氷床は黒く、電波をよく乱反射する、表面がざらざらした氷床が明るく見えています。
なお、PALSARはJERS-1衛星に搭載された合成開口レーダ(SAR)の機能・性能を向上させたセンサです。図1右の画像はPALSARの画像6枚を貼り合わせて作成しました。より広い範囲を表現するため、図1右では地上分解能を75mに、図3右では20mにそれぞれ間引いています。

(図3左側。図をクリックすると2段階で拡大します)
観測衛星: 陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)
観測センサ: 高性能可視近赤外放射計2 型(AVNIR-2)
観測日時: 2008年7月3日15時10分頃 (世界標準時) (図3の右側)
地上分解能: 10m
地図投影法: UTM(ユニバーサル横メルカトール)
AVNIR-2は、4つのバンドで地上を観測します。いずれも可視域のバンド3 (610 〜 690ナノメートル)、バンド2 (520 〜 600ナノメートル)とバンド1 (420 〜500ナノメートル)を赤、緑、青に割り当ててカラー合成して作成しました。この組合せでは、肉眼で見たのと同じ色合いとなり、雪や氷は白ないし薄い灰青色に、露出した岩は茶色っぽく、水面は青または水色に見えます。黒はデータがないことを示しています。より広い範囲を表現するため、図3左では地上分解能を20mに間引いています。

関連サイト:
ALOS 解析研究ページ
IPYデータセットホームページ
グリーンランド西部の融ける氷床
25万年前の氷を蓄える白い島:グリーンランド
地球が見える 陸地・地形
本文ここまで。
画像:人工衛星の情報を掲載 サテライトナビゲーター
画像:衛星利用の情報を発信 衛星利用推進サイト
画像:衛星から見た地球のデータ集
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