地球が見える 2007年
サンタアナ風が影の主役・カリフォルニア州南部大森林火災
2007年10月20日から23日にかけて出火した米国カリフォルニア州南部の火災は、27日までのわずか1週間に2,090平方kmを焼き、約2,000件の住居が失われました。これは、ほぼ東京都の面積(2,187平方km)にあたります。図1(a, b, c)は、NASAの地球観測衛星Terra搭載のMODIS(中分解能撮像分光放射計)のRGB画像上に、赤い印で火災の検知箇所(Hotspot)を示したものです。日を追って延焼が広がり、23日には300km以上にわたり煙がたなびく様子が見られます。他方、図1(d, e, f)に示す短波長赤外線を用いると、煙を透過して火災から熱が放射されている部分が橙色に直接見られます。衛星画像による火災検知は、このように赤外線の輻射をまわりと比較して火災を見つけるのです。 さて、今回の火災はなぜこれほど速く広がったのでしょうか?これを考えるため、気象条件と、火災の燃料となる植生と関係の深い土壌水分を見てみます。図2は、ある火災の延焼範囲から約12km離れたカールスバッド・パロマ空港の気象データと、NASAの地球観測衛星Aqua搭載のAMSR-E(改良型高性能マイクロ波放射計/JAXA開発)データから抽出した延焼範囲の土壌水分量のグラフです。上段は降水(青棒)と土壌水分量(赤丸)、中段は風速(赤線)と風向(青線)、下段は気温(赤線)と比湿(空気中の水蒸気の重量割合・青線)を示しています。 この地域は元来乾燥している地域なのですが、上段を見ると10月13日の降雨ののち、10月19日には土壌水分量が10%以下と乾燥した状態となった事が分かります。次に中段をみると、10月21日より急に風向き(青矢印)が変わり、東よりの乾燥した風が内陸より強く吹き降ろした(赤矢印)事が分かります。最後に下段を見ると、風向きの変わった21日以降、比湿がおよそ8分の1に下がり(黒矢印)、非常に乾燥した風が吹いていた事が分かります。今回は、この乾燥した土壌と乾燥した風の組み合わせが3日間続いたため、この期間に一度着火した火災が大きく延焼したと見られます。今後もこの様な組み合わせが生じると、大規模な火災が生じる危険性が高いといえます。 この乾燥した風はサンタアナ風と呼ばれ、高気圧が一時的にネバダ州からユタ州にかけての砂漠地帯に留まると、この地域から乾燥した高温の風がカリフォルニア州南部に吹き降ろします。 このように毎日刻々と変化する様子を捉えられるのは、中分解能の地球観測衛星の強みといえるのではないでしょうか。
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