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地球が見える 2009年

アラスカ南東部のジュノー氷原の氷河の消長

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図1 メンデンホール氷河の後退

図1は米国アラスカ州の州都ジュノーの中心部から北西へわずか16 kmのところにあるメンデンホール氷河を示しています。左は1991年に米国のランドサット5号が観測した画像で、右は2007年に日本の陸域観測技術衛星「だいち」が捉えた画像です。 左右の画像を比べると、氷河の末端がこの16年間に700〜900 m後退し、その先にあるメンデンホール湖の面積が367 ha(ヘクタール)から408 haへ11%拡大したことが分かります。
図の左下には長さ2,500 mの滑走路を持つジュノー国際空港が見えています。拡大図を見ると、通常の滑走路のすぐ南側に並行に走る長さ1,700 mの水路が見えますが、これは東南アラスカの沿岸地域でよく使われている水上飛行機*の離着陸のための水路です。また、空港の東側と北側には郊外の住宅地が広がっていることが分かります。

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図2 ジュノー氷原の広域図
(Google Earthで見るジュノー氷原(kmz形式、5.17MB、低解像度版))

図2は1991年6月にランドサット5号が観測したジュノー氷原の広域図です。ジュノー氷原は米国アラスカ州南東部とカナダのブリティッシュコロンビア州北西部にまたがり、東西90 km、南北130 kmにわたって広がっており、ここでは白ないし薄ピンク色に見えています。この氷原からは数多くの氷河が流れ出ていて、図1のメンデンホール氷河は、ジュノー氷原の南西部に位置しています。そこから時計回りに見ていくと、西部にはギルキー氷河が、北西部にはミード氷河が、北東部にはレウェリン氷河が、南東部にはタク氷河とふたご氷河が、それぞれ見えています。これらのうち、ミード氷河の北部とレウェリン氷河全体がカナダ側で、他の氷河はアメリカ側にあります。
アラスカの海岸山脈は氷原や氷河、雪原に覆われていますが、その元になるのは北太平洋の湿気を運んでくる西風がこの山脈にぶつかって降らせる大量の雪です。ジュノー氷原の降水(積雪)量は年間2,000〜4,000 mmで、これは豪雪で知られる新潟県上越市高田地区の約3,000 mmに匹敵する量です。*
氷河の末端が前進したり後退したりする消長は、氷河の入力である積雪量と氷山となって流れ出したり、融けたりする出力との収支で決まり、地球温暖化の指標の一つとなっていますが、上記の氷河のうち、前進しているのはタク氷河(図6参照)のみで、他の氷河(図1及び図3〜5参照)はすべて後退しています。

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図3 ギルキー氷河の後退

図3はジュノー氷原西部に位置するギルキー氷河を示しています。図の左の氷河の末端が1991年から2007年までの16年間で1,900〜2,500 mも後退し、先にある氷河湖の面積が171 haから397 haへ2.3倍に拡大したことが分かります。
なお、右側の画像では、太陽の仰角が19.7°と低いため、山の陰が氷河や氷河湖の表面にかかって暗くなっている部分がよく見えるように画質を調整したので、明るい部分が見づらくなっていますが、ご了承願います。

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図4 ミード氷河の後退

図4はジュノー氷原北西部に位置するミード氷河を示しています。図の左端の氷河の末端が1991年から2006年までの15年間で570 m後退し、その先に面積63 haの氷河湖ができたことが分かります。また、図の左下の支氷河の末端も570 m後退し、図の右下から北側に流れてミード氷河に合流していた二本の支氷河の末端がそれぞれ340mと680mずつ後退し、本体から離れてしまったことが分かります。
なお、ミード氷河の中流で幅が狭くなったように見えるところがありますが、右側の画像では、太陽の仰角が24.6°と低く、山の陰が氷河や氷河湖の表面にかかっているので、注意が必要です。

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図5 レウェリン氷河の後退

図5はカナダ側のレウェリン氷河を示しています。図の右上に氷河の末端と二つの氷河湖が見えますが、1991年から2006年までの15年間で氷河が後退し、氷河湖が拡大したことが分かります。末端の形が複雑なため、後退の量は測る場所によって異なりますが、北側の末端で200〜1,000 m、東側の末端で500〜1,140 mに及んでいます。また、末端の後退だけでなく、幅の縮小も見られます。

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図6 タク氷河の前進

図6はジュノー氷原から流れ出る氷河としては最大のタク氷河を示しており、その末端の幅は4.5 kmにも及んでいます。左は光学センサの画像、右は電波センサである合成開口レーダの画像なので、対象物の見え方が異なっていますが、よく見比べると、図下の氷河の主たる末端が1991年から2009年までの18年間で300 m、その北側の支流の末端が200 mそれぞれ前進したことが分かります。タク氷河はタク入江に注ぐ海面流入氷河(海まで達する氷河)です。
図の右上には、東と西のふたご氷河が見えていますが、東ふたご氷河が500 m、西ふたご氷河が800 mそれぞれ後退したことが分かります。



参照文献

  • *東 晃(ひがし あきら)、氷河、中央公論社、1967

観測画像について


(図1の右側、図3〜5の右側。図をクリックすると2段階で拡大します)
観測衛星: 陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)
観測センサ: 高性能可視近赤外放射計2 型(AVNIR-2)(図1の右側、図3〜図5の右側)
観測日時: 2007年10月23日20時21分頃(世界標準時) (図1及び図3の右側)
2006年10月8日20時24分頃(世界標準時) (図4の右側)
2006年9月21日20時22分頃(世界標準時) (図5の右側)
地上分解能: 10 m
地図投影法: UTM(ユニバーサル横メルカトール)

AVNIR-2は、4つのバンドで地上を観測します。図1及び図3〜5の右側はいずれも可視域のバンド3 (610 〜 690ナノメートル)、バンド2 (520 〜 600ナノメートル)とバンド1 (420 〜500ナノメートル)を赤、緑、青に割り当ててカラー合成して作成しました。この組合せでは、肉眼で見たのと同じ色合いとなり、雪や氷は白ないし薄い灰青色に、露出した岩は茶色っぽく、植生は緑に、水面は青または水色に見えます。なお、図1では近赤外域のバンド4 (760 〜 890ナノメートル)を用い、緑にバンド2の値×70%とバンド4の値×30%の和を割り当てるという工夫をしたので、植生を表す緑色が少し強調されています。より広い範囲を表現するため、図1、図3〜5では地上分解能を15 mに間引いています。

(図1の左側、図2、図3〜6の左側。図をクリックすると2段階で拡大します)
観測衛星: ランドサット5号(米国)
観測センサ: セマティック・マッパー(TM)
観測日時: 1991年6月25日(世界標準時)
地上分解能: 30 m
地図投影法: UTM(ユニバーサル横メルカトール)

ここでは米国メリーランド大学のGlobal Land Cover Facility (GLCF) Earth Science Data Interfaceのサイトから無料でダウンロードしたデータを用いました。
図1の左側、図3〜6の左側では、可視域のバンド3 (630〜690ナノメートル)、可視域のバンド2 (520〜600ナノメートル)、可視域のバンド1 (450〜520ナノメートル)の各バンドに赤、緑、青色を割り当ててカラー合成したので、肉眼で見たのとほぼ同様に、雪や氷は白または薄い紫色に、露出した岩肌は茶色に、水面は青く見えます。 各図の右側に合わせるため、見かけの地上分解能を15 mに上げています。
図2では、近赤外域のバンド4 (760〜900ナノメートル)、可視域のバンド3 (630〜690ナノメートル)、可視域のバンド2 (520〜600ナノメートル)の各バンドに緑、赤、青色を割り当ててカラー合成したので、植生は鮮やかな緑色に、雲や雪、氷は白またはピンクに、露出した岩肌は濃い茶色に、水面は黒ないし濃い紫色に見えます。黒はデータのないところです。より広い範囲を表現するため、図2では地上分解能を71.25 mに間引いています。

(図6右。図をクリックすると2段階で拡大します)
観測衛星: 陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)
観測センサ: フェーズドアレイ方式Lバンド合成開口レーダ(PALSAR)
観測日時: 2009年6月22日07時08分頃(世界標準時) (図6の右側)
観測周波数: 1,275 MHz (Lバンド)
観測偏波: HV
地上分解能: 12.5m (高分解能モード)
地図投影法: UTM(ユニバーサル横メルカトール)

図6右の画像はPALSARから送信された電波が地表面で反射されて再びPALSARに戻ってくる電波の強さを表しています。このため、電波がほとんど戻ってこない水面は黒く、電波をよく乱反射する、表面がざらざらした氷河や岩場などが明るく見えています。より広い範囲を表現するため、地上分解能を15 mに間引いています。

本文ここまで。
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