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地球が見える 2009年

天使が舞い降りた島、モン・サン・ミシェル

図1 フランスのサン・マロ湾周辺
図1は2008年6月中旬にフランス北部のブルターニュ地方(ブルターニュ半島)とノルマンディ地方(ノルマンディ半島、別名コタンタン半島)の境界付近を捉えた画像です。図左上の濃紺の海は風光明媚なサン・マロ湾です。サン・マロ湾は干満の差が激しく、その海水面は約15 mも上下すると言われています。このため引き潮時には湾奥部やブルターニュ地方の沿岸部に広大な干潟が姿を現し、砂泥による赤茶けた海水が沖の方まで漂っているのが画像からもよく分かります。豊かな自然の息づく干潟は牡蠣やムール貝の生育に適しており、ブルターニュ地方の湾岸はフランス有数の養殖産地として知られています。

この湾奥部の干潟の中に、フランスの観光地として名高いモン・サン・ミシェルがあります。パリから西へ約300 km離れたところに位置する、この図では緑色の点としてしか見分けられないほどの小さな島(直径500 m)です。モン・サン・ミシェルとはフランス語で「聖ミカエルの山」の意味で、大天使ミカエルが舞い降りた奇跡の島と言い伝えられています。

フランスは日本の約1.5倍の国土を有するEU(欧州連合)最大の農業国です。大陸を見ると草地と思しき緑色の地に畑が金箔を散らしたように延々と広がり、農業大国の一端は画像からも窺えます。しかし、ブルターニュ地方の湾岸だけは他と様相が異なり農地が白く輝いて見えています。ここはサン・マロ湾の干潟を埋め立てた干拓地です。干拓による大規模な農地化は19世紀に盛んに行われました。

図2 モン・サン・ミシェル周辺の拡大図
図2はモン・サン・ミシェル周辺の拡大画像です。図中央の干潟の中に見える丸い小さな島がモン・サン・ミシェルです。ブルターニュとノルマンディとの境界をなすクエノン川の河口付近にあります。708年にこの島に修道院が設立されて以来、モン・サン・ミシェルは1,000年にわたって中世西欧の重要な巡礼地として栄えました。
19世紀になって大陸と島をつなぐ堤防ができたことで、危険な干潟を歩いてわたる必要もなくなりましたが、この土堤によって潮の流れが変わり、流砂が島の周囲に年々堆積したことにより、海水に囲まれる孤島という神秘的なイメージは薄れました。
さらに干潟の一部はすでに草原と化し、広大な緑の草地が島の間近まで迫っています。草地に隣接する白や緑、茶に彩られた美しい幾何学模様の農地はかつて干潟だったところです。今日では地平にそびえる修道院を背景にして、羊の群れがのんびり草を食む牧歌的な風景を見ることができます。

図3 モン・サン・ミシェルの拡大図
(Google Earthで見るモン・サン・ミシェル(kmz形式、3.11MB、低解像度版))
図3はモン・サン・ミシェルの拡大画像です。島の中心に見える建物が修道院です。この図からは天空の城郭のような幻想的なシルエットはうかがい知れませんが、思いのほか緑地が多いことが見て取れます。今日の姿になったのは、修道院北面を飾る美しい回廊と食堂からなる「ラ・メルヴェイユ(驚異)」というゴシック様式の建物が増築された13世紀頃だと言われています。14世紀の仏英百年戦争時に要塞化されました。その当時のなごりが城壁や見張りに使ったガブリエル塔などの軍用施設に残っています。さらに時代は下って18世紀末のフランス革命以降は孤島ゆえに監獄としても利用されました。

島と陸をつなぐ土堤の両側を見ると、観光バスや自動車が列をなしています。画像から有名な観光地としての賑わいが確かに伝わってきます。島の右下手に見える密集した建物群は、観光客相手のホテル・レストラン・土産物屋などが集まるグランド・リュ、いわゆる表参道の仲見世にあたる地区です。

モン・サン・ミシェルは今日年間300万人もの観光客が訪れるフランス第一の観光地です。1979年に「モン・サン・ミシェルとその湾」としてユネスコの世界遺産(文化遺産)に登録され、1994年にはラムサール条約登録地となりました。近年の世界的な環境意識の高まりを受けて、2006年には島の周囲に堆積した砂を排除するための大規模土木プロジェクトが立ち上がりました。クエノン川の河口に堰を設け、陸つづきの土堤に代わって橋を架け、かつての潮の流れを取り戻そうという壮大な計画です。2012年の竣工の暁には、孤島としての神秘的な佇まいを取り戻すことでしょう。



観測画像について:


観測衛星: 陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)
観測センサ: 高性能可視近赤外放射計2 型(AVNIR-2)(図1〜3)
パンクロマチック立体視センサ(PRISM)(図2〜3)
観測日時: 2008年6月10日11時08分頃(世界標準時)
地上分解能: 10m(AVNIR-2)および2.5m(PRISM)
地図投影法: UTM(ユニバーサル横メルカトール)

(図1〜3)
AVNIR-2 は4つのバンドで地上を観測します。図はいずれも可視域のバンド3(610 〜 690ナノメートル)、バンド2(520〜600 ナノメートル)、バンド1(420〜500ナノメートル)を赤、緑、青に割り当てカラー合成しました。通常と異なって、緑にバンド2の値×90%とバンド4の値×10%の和を割り当てるという工夫をしたので、植生の分布が見やすくなっています。この組合せでは、肉眼で見たのと同じ色合いとなり、次のように見えています。

濃緑色: 森林
緑色: 草地、農地
灰色: 市街地
白色: 雲、農地(ブルターニュ地方の湾岸のみ)
茶色: 裸地
濃紺: 海(湾)

(図2〜3)
PRISMは地表を520〜770 ナノメートル(10億分の1メートル)の可視域から近赤外域の1バンドで観測する光学センサです。得られる画像は白黒画像です。前方、直下、後方の観測を同時に行いますが、ここでは直下視の画像を使っています。
AVNIR-2の、バンド3 (610〜690ナノメートル)、バンド2 (520〜600ナノメートル)とバンド1 (420〜500ナノメートル)を赤、緑、青色に割り当てカラー合成したAVNIR-2画像を「色相(Hue)」、「彩度(Saturation)」、「明度(Intensity)」に変換(HSI変換)し、明度をPRISM画像で置き換えて再合成することで見かけ上、地上分解能2.5mのカラー画像を作成することができます。図2〜3はこのように高分解能の白黒画像と低分解能のカラー画像を組み合わせて合成された高分解能のカラー画像、つまりパンシャープン画像です。

関連サイト:
ALOS 解析研究ページ
コート・ダジュールのリゾート立国、モナコ
二つの森と環状道路に囲まれた芸術の都:パリ
世界一高い南仏のミヨー橋を立体視
地球が見える 陸地・地形
本文ここまで。
画像:人工衛星の情報を掲載 サテライトナビゲーター
画像:衛星利用の情報を発信 衛星利用推進サイト
画像:衛星から見た地球のデータ集
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