地球が見える 2007年
ベトナムの苦い果実「LEKIMA」−台風14号
奇しくもベトナム語で果実の名を持つ台風が、2007年10月3日現地時間19時頃にベトナム中央部の沿岸に上陸しました。今年14個目の台風LEKIMA(レキマー)は、ベトナムに大きな被害をもたらした台風となりました。 図1〜2は、熱帯降雨観測衛星(TRMM)が捉えた、ベトナム上陸前の台風14号の姿です。 図1は、2007年10月3日、台風上陸の約9時間前に、TRMM搭載の降雨レーダ(PR)で観測した台風14号の降水量と、可視赤外放射装置(VIRS)で観測した雲画像の重ね合わせ(左)と、TRMM マイクロ波観測装置(TMI)が観測した降水量(右)です。図1左では、台風の目の南西側のベトナム沿岸に近い地域に、強い雨を示すオレンジ〜赤い領域が拡がっており、その一部はすでに内陸側にも豪雨をもたらしていることがわかります。このように、PRでは海陸を問わずに、降雨の細かな構造を観測することができます。
図2は、その8時間後に、再びTRMMが台風14号を捉えたものです。あいにく、PRの観測領域は、台風の中心よりも北側しかカバーしていませんが(左)、TMIによる観測では台風の中心となる、雨のない台風の目の領域が、まさにベトナムの海岸にかかろうとしており(右)、上陸直前の姿をはっきりと観測しています。
台風14号は、ベトナム上陸後に熱帯低気圧となり、ベトナムを横断してラオスに至りました。例年、台風やモンスーンに伴う豪雨や洪水に直面することが多いベトナムですが、この台風によって、ベトナムでは10月7日時点で67名の死者・行方不明者があったほか、20万人以上が避難をし、国際災害チャーターが発動される事態となりました。さらに台風に伴う降雨による影響は中国南部にも及び、被害をもたらしました。
台風14号の被害が続く中、10月1日に発生した台風15号KROSA(クローサ)が、急速に発達し、「猛烈な」強さとなって、6日に台湾北部を直撃しました(図3)。この台風により台湾では10月7日現在、7名の死者・行方不明者が出ています。この台風15号は、中国に再上陸した後、急速に弱くなり、9日には熱帯低気圧になる見込みですが、今後形を変えて日本にやってくる可能性もあります。今後も大雨に対する警戒が必要です。
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