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地球が見える 2007年

南極の不思議な影法師

図1 昭和基地周辺の無数の影法師
(上下逆さまの画像)
図1は今年(2007年)2月に捉えた昭和基地周辺の衛星画像です。昭和基地のあるオングル諸島が右下にこげ茶色に見えていて、図全体に無数の不思議な影法師が見えています。
これは、樹氷に夕日が当たって無数の長い陰ができているように思われますが、昭和基地の周りは海なので、木々はありません。図を拡大してみると、影法師の元は無数の氷山と露出した岩であることが分かります。図の右上隅には、テーブル状の氷山が誕生しつつある場所が見えています。
次に陰について考えてみます。このときの太陽の方位角(北が0°で、時計回りに計ります)は54°で、仰角は30°だったので、陰の方向はだいたい合っているようです。しかし、陰の長さが長いものでは4 kmにも及ぶものがあり、その場合、陰の元となる氷山は2.3 kmという信じがたい高さでなければなりません。また、よく見ると、図の右下と左上とで陰の伸びる方向が少し違うことも分かります。したがって、これらの陰は太陽光による陰ではないことが分かります。
そこで、再び図を拡大してみると、陰の部分は雪が積もっていない海氷面のように見えます。つまり、これらの陰は、地吹雪のときに氷山の陰になって雪が積もらなかったところと考えるのが、妥当と思われます。
なお、図の下とオングル諸島の東側に南極観測船「しらせ」の航跡が白または黒の線として見えています。
また、上下逆さまの画像を見ると、錯覚により元の画像とは大きく異なった印象を受けます。これは、私たちが普段、太陽光によって上から照らされた風景を見慣れているためで、光源が下にあるようなこのような画像を見ると下の方で何かが爆発したような感じに、あるいはヤマアラシの背中のように見えて、不安な気分にさせられます。

図2 昭和基地周辺の案内図
図2は今年(2007年)1月に捉えた昭和基地周辺の衛星画像です。昭和基地の北側に薄い雲がかかっています。こげ茶色のところは、岩が露出しているところで、他の大部分は雪に覆われていて、陸と海の区別がつきません。
昭和基地は、南極のリュツォ・ホルム湾にあるオングル諸島のうち、東オングル島に設置されています。オングル諸島の東には、南極大陸の一部である宗谷海岸が伸びています。オングル諸島の南のラングホブデとスカルブスネスは半島で、岩が露出していることが分かります。
昭和基地が設置されたのは、今からちょうど50年前の1957年1月29日のことで、前年、日本を出発した第1次日本南極地域観測隊が観測船「宗谷」で南極大陸に近づき、東オングル島に上陸して、付近一帯を「昭和基地」と命名しました。この活動は、太陽活動の極大期に合わせて行われた国際科学研究プロジェクト、国際地球観測年(IGY、1957年7月1日〜1958年12月31日)に参加すべく行われました。

図3 昭和基地と南極観測船「しらせ」(2007年1月1日)
図3は昭和基地と「しらせ」を含むパンシャープン画像です。矢印の先に昭和基地があり、黄色い通路で結ばれた紺色の建物群やその南東側の灰色の建物群、南西側に少し離れた赤い屋根の2棟の建物が見えています。「しらせ」は昭和基地から東へ約1.5 kmのところに停泊しており、ここから雪上車やヘリコプター、石油パイプラインを使って物資の輸送が行われました。

図4 昭和基地と南極観測船「しらせ」(2007年2月4日)
(Google Earthで見る昭和基地 (kmz形式、1.5MB、低解像度版))
図4は図3と同じ範囲のおよそ1ヵ月後の画像です。「しらせ」の位置が変わったことが分かります。

図5 昭和基地と南極観測船「しらせ」の立体視用画像
(目が疲れないように、あまり長い時間、見ないでください。カラー印刷してから見る場合は、pdfファイルをご利用下さい。左目用pdfファイル右目用pdfファイルも用意しました。)
図5は昭和基地のある東オングル島と「しらせ」の立体視用画像です。この画像では北は右上の方向になっているので、注意が必要です。赤と青の色メガネを使って見ると、海氷面が平らで、氷山が海氷面から飛び出していること、東オングル島や他の島が盛り上がっていること、東オングル島の南部に池が2つあることがよく分かります。雪上車の通った跡も見えています。



参考文献:
坂野井和代、東野(とうの)陽子、「南極に暮らす−日本女性初の越冬体験−」、岩波書店、2000年

参照サイト:
赤青メガネの作り方について(「榛名山を立体視」付録参照)

観測画像について:
(図1〜図5)
観測衛星: 陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)
観測センサ: 高性能可視近赤外放射計2 型(AVNIR-2)及びパンクロマチック立体視センサ(PRISM)
観測日時: 2007年1月1日06時23分頃(世界標準時)(図2及び図3)
2007年2月4日06時27分頃(世界標準時) (図1、図4及び図5)
地上分解能: 10 m(AVNIR-2)及び2.5 m(PRISM)
地図投影法: UTM(ユニバーサル横メルカトール)
AVNIR-2は、4つのバンドで地上を観測します。図1と図2は、いずれも可視域のバンド3 (610〜690ナノメートル)、バンド2 (520〜600ナノメートル)とバンド1 (420〜500ナノメートル)を赤、緑、青に割り当てカラー合成しました。この組合せでは、肉眼で見たのと同じ色合いとなり、雪や雲は白く、露出した岩や土砂は茶色っぽく、海面または海氷面は黒っぽく見えます。黒はデータがないことを示しています。

PRISMは地表を550〜720 ナノメートル(10億分の1メートル)の可視域1バンドで観測する光学センサで、3 組の光学系(望遠鏡)を持ち、衛星の進行方向に対して前方、直下、後方の3方向の画像を同時に取得します。得られる画像は白黒画像です。

図3と図4は上記のようにカラー合成したAVNIR-2画像を「色相(Hue)」、 「彩度(Saturation)」、 「明度(Intensity)」に変換(HSI変換)し、明度をPRISM画像で置き換えて再合成することで見かけ上、地上分解能2.5 mのカラー画像として作成したものです。このように高分解能の白黒画像と低分解能のカラー画像を組み合わせて合成された高分解能のカラー画像をパンシャープン画像と呼びます。図3及び図4は、図1及び図2と同じ色合いとなっています。

図5は直下視の画像(赤)と前方視の画像(緑と青)を用いています。左目で衛星の直下を、右目で衛星の前方を見るので、左側が衛星の進行方向になり、左側が南西の方向に対応します。図5では右上が北になっているので、注意しましょう。

関連サイト:
ALOS 解析研究ページ
インド洋に近い世界一美しい街:西オーストラリア州パース
南極大陸の夏
地球が見える 北極・南極

付録:南極観測船「しらせ」の一般的な航海スケジュール
11月14日: 東京、晴海埠頭を出航。
11月下旬: オーストラリア・パース郊外のフリマントルに寄港。
12月上旬: 生鮮食料品と飛行機で到着した観測隊員を乗せて、出航。
12月下旬: 昭和基地に到着。物資の補給、建物の建設。夏隊は観測を開始。越冬隊は前の越冬隊からの引継ぎと自らの越冬の準備。
2月下旬: 昭和基地を出航。
3月下旬: シドニーに到着。観測隊員は全員下船し、空路帰国。
4月中旬: 海上自衛隊横須賀基地に帰港。
本文ここまで。
画像:人工衛星の情報を掲載 サテライトナビゲーター
画像:衛星利用の情報を発信 衛星利用推進サイト
画像:衛星から見た地球のデータ集
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