地球が見える 2007年
南極の不思議な影法師
これは、樹氷に夕日が当たって無数の長い陰ができているように思われますが、昭和基地の周りは海なので、木々はありません。図を拡大してみると、影法師の元は無数の氷山と露出した岩であることが分かります。図の右上隅には、テーブル状の氷山が誕生しつつある場所が見えています。 次に陰について考えてみます。このときの太陽の方位角(北が0°で、時計回りに計ります)は54°で、仰角は30°だったので、陰の方向はだいたい合っているようです。しかし、陰の長さが長いものでは4 kmにも及ぶものがあり、その場合、陰の元となる氷山は2.3 kmという信じがたい高さでなければなりません。また、よく見ると、図の右下と左上とで陰の伸びる方向が少し違うことも分かります。したがって、これらの陰は太陽光による陰ではないことが分かります。 そこで、再び図を拡大してみると、陰の部分は雪が積もっていない海氷面のように見えます。つまり、これらの陰は、地吹雪のときに氷山の陰になって雪が積もらなかったところと考えるのが、妥当と思われます。 なお、図の下とオングル諸島の東側に南極観測船「しらせ」の航跡が白または黒の線として見えています。 また、上下逆さまの画像を見ると、錯覚により元の画像とは大きく異なった印象を受けます。これは、私たちが普段、太陽光によって上から照らされた風景を見慣れているためで、光源が下にあるようなこのような画像を見ると下の方で何かが爆発したような感じに、あるいはヤマアラシの背中のように見えて、不安な気分にさせられます。
昭和基地は、南極のリュツォ・ホルム湾にあるオングル諸島のうち、東オングル島に設置されています。オングル諸島の東には、南極大陸の一部である宗谷海岸が伸びています。オングル諸島の南のラングホブデとスカルブスネスは半島で、岩が露出していることが分かります。 昭和基地が設置されたのは、今からちょうど50年前の1957年1月29日のことで、前年、日本を出発した第1次日本南極地域観測隊が観測船「宗谷」で南極大陸に近づき、東オングル島に上陸して、付近一帯を「昭和基地」と命名しました。この活動は、太陽活動の極大期に合わせて行われた国際科学研究プロジェクト、国際地球観測年(IGY、1957年7月1日〜1958年12月31日)に参加すべく行われました。
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