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陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)によるハイチ大地震の経過観測(2)

2010年1月13日(水)午前6時53分頃(日本時間,以下同じ)に中米のハイチでマグニチュード(M)7.0、震源の深さ約10kmの大地震が発生し、建物倒壊などにより大きな被害が出ました。宇宙航空研究開発機構(JAXA)ではその後の復興状況の把握を目的として、2010年5月13日(木)に引き続き2010年6月11日(木)0時28分頃に陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)搭載のパンクロマチック立体視センサ(プリズム)と高性能可視近赤外放射計2型(アブニール・ツー)による観測を実施しました。

図1は今回観測した画像全体の様子を示したものです。白く見えるのは雲ですが、首都のポルトープランス上空には雲がなく、地上の様子を確認することができました。アブニール・ツーのバンド3, 2, 1を使ったトゥルーカラー合成画像で表示しており、人の目で見た色に近くなっています。
図1: 2010年6月11日に観測したアブニール・ツー画像
図1: 2010年6月11日に観測したアブニール・ツー画像
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観測日時: 2010年6月11日 0時28分頃(日本時間) センサ: AVNIR-2(アブニール・ツー) ポインティング角度: 0.0° 黄枠: 図2の拡大画像の範囲

図2は2010年6月11日観測と、地震発生から11日後の2010年1月24日観測のプリズムとアブニール・ツーから作成されたパンシャープン画像*を比較したものです。2010年6月11日の画像内に青い点が密集している箇所(例えば赤丸の箇所)がいくつもありますが、いまだ避難生活をおくっている人々の仮設住居が集まっている居住区と考えられます。図3, 4は両画像を比較して大きな違いのあった場所の拡大画像です。
図2: ポルトープランス市中心部のパンシャープン画像

(それぞれ約4km四方、左:2010年6月11日、右:2010年1月24日) 黄色枠:図3, 4の拡大範囲

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図3は大統領宮殿付近の約1km四方を拡大したもので、上の赤枠が大統領宮殿、下の赤枠が宮殿近くのスタジアムです。大統領宮殿に隣接して新しい建造物が建てられており、周辺の広場にも仮設住居が密集していることが分かります。スタジアム内に避難していた人々がスタジアム周囲に建設された仮設住宅に移っていると思われます。画像内で青い点が密集しているところがありますが、これは図2と同様に仮設住居が集まっている箇所と考えられます。
図3: ハイチ大統領宮殿付近の拡大
図3: ハイチ大統領宮殿付近の拡大

(それぞれ約1km四方、左: 2010年6月11日、右: 2010年1月24日)

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図4はポルトープランスの港の拡大画像です。赤枠内を見ると、地震により崩壊していた桟橋の修復が済んでいる様子が分かります。また、新たな埠頭が建設され、船舶が停泊している様子も分かります。この他にも、この画像からは沿岸の埋め立てや新しい建造物が見られることから、順調に復興が進んでいることが分かります。
図4: ポルトープランスの港の拡大
図4: ポルトープランスの港の拡大

(それぞれ約1km四方、左: 2010年6月11日、右: 2010年1月24日)

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図5は図2で示した2010年6月11日と2010年1月24日の画像をアニメーション表示したもので、約1秒間隔でそれぞれの画像が切り替わります。これを見ると約5ヶ月間の変化を詳細に把握することができます。
図5: 図2の範囲のアニメーション
図5: 図2の範囲のアニメーション (約1秒間隔で2010年6月11日と2010年1月24日の画像が切り替わります)

JAXAでは今後も当該地域を継続して観測する予定です。

* プリズムとアブニール・ツーによるパンシャープン画像

プリズムとアブニール・ツーによるパンシャープン画像とは、2.5mのものが識別できる能力(地上分解能)を持つプリズムと、地上分解能10mですがカラー情報を持つアブニール・ツーを用いて、擬似的に地上分解能2.5mのカラー画像にしたものです。

JAXA EORC