画像ライブラリー
陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)搭載のLバンド合成開口レーダ(PALSAR;パルサー)によるハイチ地震にともなう緊急観測(3)
2010年1月13日(水)午前6時53分頃(日本時間、以下同じ)に中米のハイチで発生したマグニチュード7.0(USGS発表)、震源の深さ約10 kmの地震による被害状況を把握するために、宇宙航空研究開発機構(以下JAXA)は、1月26日に陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)搭載のLバンド合成開口レーダ(PALSAR;パルサー)による緊急観測(3)を実施しました。本観測では、2009年3月10日に取得した同じ軌道からの画像と比較し、被害域抽出と地殻変動検出を実施しました。「だいち」は当該地域を北から南へ飛行しながら、首都ポルトー・プランス及び震央を含む領域を観測しました。
1. 被害域抽出
変化抽出解析として二時期(地震前後)のPALSAR強度画像の差分解析を行いました。
図2は、PALSARによる地震前後の変化抽出画像です。この画像は、地震前(2009年3月10日観測)のPALSAR画像を赤色に、地震後(2010年1月26日観測)のPALSAR画像を緑色と青色に着色してカラー合成しているものです。画像中赤や青に色づいている領域では、2枚の画像が重ならない、もしくは明るさが変化している場合に対応しますので、地震前後に地表に何らかの変化が生じた可能性があります。
地震災害により地震後の画像でレーダの反射が弱くなった場合には、赤色に着色した地震前の画像が強調されることになりますので、都市域で赤く見える場所では建物等の倒壊が起こった可能性があります。
図3、図4は図2で明瞭な変化が見られた地域の拡大図です。図3は大きな被害が報告されている首都ポルトー・プランスの画像で、街全体で赤色が目立ちます。この画像からも、ポルトー・プランス市街で多くの建物倒壊があったことが分かります。図4はポルトー・プランス北部の村で、ここでも同様の規模の建物倒壊があったと考えられます。
2. 地殻変動検出
地殻変動検出のため、地震前後に取得したPALSARデータの差分干渉解析を行いました。
図5は地震前(2009年3月10日)と地震後(2010年1月26日)のPALSARデータから得られた差分干渉画像(地殻変動図)、図5右は地震後の強度画像を示したものです。
図6では、震央(赤い星印)の西(図中A)を中心とする明瞭な干渉縞が確認でき、本画像中では、少なくとも6周期=70.8 cmの地殻変動があったことが分かります。また震央の北にも目玉状の干渉縞が見られ、複雑な地殻変動が起こった可能性があります。
(注1) 軌道情報は暫定軌道情報(予測値)を用いました。
JAXAでは今後も「だいち」によるハイチ地震に関する観測を継続していく予定です。
JAXA EORC