ページの先頭です。
本文へジャンプする。
【重要なお知らせ】このページは過去に公開された情報のアーカイブページです。更新を終了しているため、リンク切れや古い情報が含まれている可能性があります。 最新情報については、新サイト Earth-graphy (earth.jaxa.jp) をご利用ください。
ここからサイト内共通メニューです。
サイト内共通メニューを読み飛ばす。
サイト内共通メニューここまで。
ここから本文です。

地球が見える 2016年

地球上の年最大海氷面積が観測史上最小に

水循環変動観測衛星「しずく」による観測データを解析した結果、今年は地球上に存在する海氷の年最大面積が観測史上最小になったことがわかりました。2016年における北半球と南半球を合わせた海氷面積の年間最大値(23,908,622 km2)は観測開始の1979年から2015年までの最大面積の平均値(26,938,556 km2)と比較して3,029,934km2(日本列島約8個分!)小さく、前回最小となった2012年と比較しても1,799,689 km2(日本列島約4.8個分!)小さいことが衛星データ解析から明らかになっています(図1)。

両極の海氷面積の季節変化(赤枠が一つ目の極大値,青枠が二つ目の極大値)(2016年11月18日現在)

図1 両極の海氷面積の季節変化(赤枠が一つ目の極大値,青枠が二つ目の極大値)(2016年11月18日現在)

海氷面積は例年、北極では2~3月に最大、9月に最小となり、南極では9月頃に最大、2月頃に最小となります。これら両極に存在する海氷面積の総和は、年間で2つの極大値を持って推移しています(図1、赤・青枠)。
一つ目のピーク(図1赤枠)は6~7月頃、北極海氷が夏の訪れと共に融解しながら縮小していくのと同時に、秋を迎えた南極海における海氷の成長がバランスして極大値となります。
二つ目のピーク(図1青枠)は11月頃、秋に縮小しきった北極海氷が成長し始めるとき、南極では夏に向かって融解が始まります。このときこれらがバランスして極大値をとります。例年の年間最大値はこの二つ目のピークの時に記録されます。
ところが今年は11月に形成される二つ目のピークが例年よりも小さく、結果として7月8日に記録した一つ目のピークが年間最大値となりました。このような変化の仕方は、1978年の観測開始以降1979年に一度見られただけで、非常に珍しい現象です。

このように年最大海氷面積が小さくなった要因として、北極・南極両方の氷が失われつつあることが挙げられます。
北極海氷は近年縮小傾向にあり、今年の夏は2012年に次いで観測史上2番目の小ささに縮小した年でした(図2)。それに加え、年間で最も面積が小さくなる8月~9月頃を除けば、今年は海氷面積が観測史上最小の状態で推移していました。冬の訪れと共に結氷が始まり、海氷面積は拡大していきますが、今年は特にその拡大速度が鈍く、AMSR2が観測した海氷密接度画像(図3)を見ると,バレンツ海・グリーンランド海・バフィン湾では海氷の成長・拡大傾向が小さくなっている様子が分かります。グリーンランド北西部、シオラパルク村に滞在中の冒険家山崎哲秀氏からも、今年は特に暖かい状況であると報告がありました。11月中旬の時点では薄い海氷が徐々に張り始めているものの、海はまだ暖かく、凍っていない部分があることが観察できます(図4)。山崎氏は「十数年以上前だと、10月末くらいには海氷がある程度張って、その上を犬ぞりで走れていましたが、近年はままならない状態で、なかなか海氷上に乗り入れることができません」とコメントしており、近年の北極圏における急激な温暖化が表れているようです(情報提供:北海道大学低温科学研究所 的場澄人助教)。

北極海氷面積の季節変化(2016年11月18日現在)

図2 北極海氷面積の季節変化(2016年11月18日現在)

北極海氷の分布(2016年11月20日時点)。橙色の線は2000年代の平均的な海氷縁の分布を示す。

図3 北極海氷の分布(2016年11月20日時点)。橙色の線は2000年代の平均的な海氷縁の分布を示す。

グリーンランド北西部シオラパルク村から見た海の状況、写真左側の白い部分は海氷、右側の黒い部分は海が見えている(北極探検家 山崎哲秀氏撮影、2016年11月22日)

図4 グリーンランド北西部シオラパルク村から見た海の状況、写真左側の白い部分は海氷、右側の黒い部分は海が見えている(北極探検家 山崎哲秀氏撮影、2016年11月22日)

一方、南極海氷は近年、北極とは異なり縮小傾向は見えず、両極の海氷面積の縮小をせき止めていました(南極海の海氷面積 観測史上最大に(速報))が、今年は融解開始以降急激に減少し、観測史上最速のペースで海氷が失われています(図5、図6)。

南極海氷面積の季節変化(2016年11月18日現在)

図5 南極海氷面積の季節変化(2016年11月18日現在)

南極海氷の分布(2016年11月20日時点)。橙色の線は2000年代の平均的な海氷縁の分布を示す。

図6 南極海氷の分布(2016年11月20日時点)。橙色の線は2000年代の平均的な海氷縁の分布を示す。

海氷は、海水面と比較して白くアルベドが高いため、太陽エネルギーの大半を反射します。このことから積雪や氷河と共に、地球の冷源としての役割を持っています。ところが海氷が失われるとその下にある黒い海水面が現れ、熱吸収が促進されます。それにより海水が温められ、海氷はより融解しやすい状態になります。このような関係は海氷以外の雪氷(積雪・氷河など)でも見られ、これをアイス・アルベド・フィードバックといいます。つまり、一度減少し始めた雪氷は加速度的に減少していく可能性があります。
このまま南極海氷面積の減少、北極海氷面積の拡大鈍化が継続すれば、年間最大海氷面積だけでなく、例年2月頃にみられる年最小海氷面積も観測史上最小となる恐れがあります.

JAXAでは現在運用中の水循環変動観測衛星「しずく」や、2017年度打ち上げ予定の気候変動観測衛星「GCOM-C」などを用いて、グリーンランドや北極海氷をはじめとする北極圏環境変動の観測を継続して行っていく予定です。

なお、北極海の海氷密接度の分布画像および海氷面積値情報は、JAXAの地球環境監視webサイト(JASMES)および極地研究所が開設している北極域データアーカイブweb上の海氷モニターViSHOP上で日々更新を行い、公開しています。

観測画像について

画像:観測画像について

図3、6

観測衛星 水循環変動観測衛星 しずく(GCOM-W)
観測センサ 高性能マイクロ波放射計2(AMSR2)
観測日時 2016年11月20日

いずれもAMSR2の6つの周波数帯のうち、36.5 GHz帯の水平・垂直両偏波と18.7 GHz帯の水平・垂直両偏波のデータを元に、アルゴリズム開発共同研究者(PI)であるNASAゴダード宇宙飛行センターの Josefino C. Comiso博士のアルゴリズムを用いて算出された海氷密接度を表しています。データの空間分解能は25 kmです。

関連情報

本文ここまで。
画像:人工衛星の情報を掲載 サテライトナビゲーター
画像:衛星利用の情報を発信 衛星利用推進サイト
画像:衛星から見た地球のデータ集
画像:ページTOP