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地球が見える 2016年

グリーンランド氷床 春の大融解

2016年4月11日、グリーンランド氷床で大規模な表面融解が生じたことを水循環変動観測衛星「しずく」が捉えました。北極圏に位置し、寒冷なグリーンランドでは例年5月下旬から6月上旬に氷床表面の融解が始まりますが、異例の早さで融解が生じた可能性が高いと考えられます。

図1は「しずく」に搭載されているマイクロ波放射計によって撮影されたグリーンランド氷床表面の18GHzの垂直偏波と36GHzの水平偏波、垂直偏波の輝度温度画像を用いた合成画像です。白色は輝度温度が高い融解領域を示しており、緑から黒色が乾いた表面状態(非融解領域)を示しています。図1中央の赤枠で示した部分、グリーンランド南西部において融解領域が広がっていることが確認できます。そして5月11日にも再び顕著な融解現象が起きたことがわかりました(図1右)。図中の青枠で囲った領域において、4月の融解時よりもさらに広い範囲で表面融解が起きていることが確認できます。

この急激な融解は、4月に入ってからの急激な気温上昇が原因であると考えられます。デンマーク・グリーンランド地質調査所が公開しているグリーンランド南西部カンゲルサック地域に設置された自動気象観測装置によって取得された気温データ(図2)によると、図2の赤枠で囲った4月11日は、標高の低い地点(観測点名:KAN_B、標高350m、紫色プロット)において最高気温が11.4℃に達しました。また、氷床上内陸側の地点(観測点名:KAN_U、標高1840m、青色プロット)においても気温が0℃を上回る値を記録していることがわかります。また、5月の融解時にも同様に、全ての観測点において気温が上昇していることが読み取れます。このことから南西部の広い範囲で生じた極端な昇温によって、二度にわたる氷床表面融解が引き起こされたと考えられます。

今回のような早い時期の融解現象は、2012年4月5日にも生じていたことが、米国雪氷データセンターの公開しているグリーンランド氷床融解領域プロダクトデータから明らかになっています(図3)。赤色で示されている融解領域が、南西部の広い範囲に分布していることがわかります。2012年は近年では最も大規模な融解が生じた年で、 7月12日に氷床の約97%の領域で表面が融解したことを、「地球が見える」に2012年7月25日に掲載した記事「しずくが捉えたグリーンランド氷床表面の全面融解」でも報告しました。このような早い時期の融解は、氷床表面を覆っている積雪の粒径を増大させることでアルベドを低下させるため、氷床表面のエネルギー吸収を促進させることが理論的に予想されます。つまり、今年も大規模な融解が生じる可能性があると推測できます。

2016年5月7日時点の北極海の海氷密接度の分布(黄色、橙色の線は1980年代、2000年代の平均的な分布を示している)
地名なし:
地名あり:

図5 2016年5月7日時点の北極海の海氷密接度の分布(ボタンをクリックすると1980年代、2000年代の平均的な分布の表示を切り替えられます)

グリーンランド氷床だけでなく、北極海の海氷も今年は少ない状態が続いています。図4は人工衛星搭載マイクロ波放射計が捉えた1978年以降の北極海海氷域面積の季節変化(JASMES-Climateのデータより作成)を、また、図5はしずくが2016年5月7日にとらえた北極海の海氷分布を示しています。今年は、1-3月の間も例年に比べて小さい状態が続いてきましたが、春を迎え急速に融解が進み、5月7日現在、観測史上最小の面積で推移しています。図5より、今年は、バレンツ海(大西洋側)、ベーリング海(太平洋側)の双方にて大きく海氷が後退し始めている様子が分かります。4年前の2012年には、上述したグリーンランド氷床の全面融解現象が7月に発生した後、9月に衛星観測史上最小の海氷面積が記録されています。このままの状態で推移すれば、今年は海氷面積の縮小もさらに進む恐れがあり、今後も注視していくことが必要です。

JAXAは2012年5月に打ち上げられ、現在運用中の第一期水循環変動観測衛星「しずく」や、2017年に打ち上げを予定している気候変動観測衛星「GCOM-C」などを用いて、グリーンランドや北極海氷をはじめとする北極圏環境変動の観測を継続して行っていく予定です。

なお、北極海の海氷密接度の分布画像および海氷面積値情報は、JAXAの地球環境監視webサイト(JASMES)および極地研究所が開設している北極域データアーカイブweb上の海氷モニターViSHOP上で日々更新を行い、公開しております。

※1 海氷密接度:衛星の瞬時視野内に含まれる海氷域の面積割合(%)
下図のような、衛星搭載のマイクロ波放射計がある時刻に観測した瞬時視野(仮に10km×10km とする)に占める面積の割合が海氷50%、海面50%である場合、その海域の海氷密接度を50%と 定義する。

海氷密接度:衛星の瞬時視野内に含まれる海氷域の面積割合(%)

※2 海氷面積:本稿で用いる海氷面積は、海氷が浮遊する海域の広さとして定義しており、海氷密接度15%以上の海域面積の総和をとったもの(km2)。

観測画像について

画像:観測画像について

図1

観測衛星 水循環変動観測衛星 しずく(GCOM-W)
観測センサ 高性能マイクロ波放射計2(AMSR2)
観測日時 2016年3月11日、4月11日、5月11日

いずれもAMSR-2の18GHzの垂直偏波、36GHzの水平偏波、垂直偏波の輝度温度データをカラー合成した画像で、データの空間分解能は25kmです。

図3

観測衛星 DMSP 5D-3/F17 (NOAA)
観測センサ Special Sensor Microwave Imager/Sounder (SSMIS)
観測日時 2012年4月4日から4月6日

米国雪氷データセンター公開のデータをJAXAで作図したもので、赤色が融解領域を示しています。融解域の判定方法については、以下の論文を参照ください。
Mote, T. L. 2014. MEaSUREs Greenland Surface Melt Daily 25km EASE-Grid 2.0, Version 1. Boulder, Colorado USA. NASA National Snow and Ice Data Center Distributed Active Archive Center
doi

図5

観測衛星 水循環変動観測衛星 しずく(GCOM-W)
観測センサ 高性能マイクロ波放射計2(AMSR2)
観測日時 2016年5月7日

いずれもAMSR2の6つの周波数帯のうち、36.5 GHz帯の水平・垂直両偏波と18.7 GHz帯の水平・垂直両偏波のデータを元に、アルゴリズム開発共同研究者(PI)であるNASAゴダード宇宙飛行センターの Josefino C. Comiso博士のアルゴリズムを用いて算出された海氷密接度を表しています。データの空間分解能は25 kmです。

気象観測データについて

気温データはProgramme for Monitoring of the Greenland Ice Sheet (PROMICE)およびGeological Survey of Denmark and Greenland (GEUS)によるGreenland Analogue Project (GAP)によって公開されているデータを加工して使用しました。

関連情報

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画像:人工衛星の情報を掲載 サテライトナビゲーター
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