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地球が見える 2013年

1月の南岸低気圧と降雪
〜降雪と積雪観測の現状と次期計画〜

 今年1月14日、日本列島の南海上を低気圧が急速に発達しながら東に進み、その影響によって各地で大雪となりました。この低気圧は「南岸低気圧」と呼ばれ、寒気が緩む春先に発生し、太平洋側の関東地方などに大雪を降らせることがありますが、1月に現れることは珍しいことです。この低気圧の特徴は、北から吹き込む寒気と南から吹き込む暖かく湿った空気とがぶつかり、大雪になりやすい状態になります。
今回の場合、低気圧の中心が八丈島付近を通過し、降雨の範囲が東京に掛かっていることが、「世界の雨分布速報」(GSMaP)(図1)*1の13日午前9〜10時、14日午前9〜10時(日本時間)の2枚の降雨量分布図から見られます(参照1)。この低気圧の進路が北寄りになると暖かい空気が入り雨になりがちで、南寄りになると関東地方の雲は薄くなる傾向にあります。この時期の低気圧は日本の北側を通過することが多くなりますが、今冬はインド洋東部の海上で積乱雲が平年より多く発生し、上昇気流が北に吹出したことにより偏西風が北に押し上げられ、日本付近では偏西風の風向きが蛇行により南に押し下げられていたため、日本列島の南岸を通過したとみられています。

2013年1月の「世界の雨分布速報」(13日午前9〜10時)

2013年1月の「世界の雨分布速報」(14日午前9〜10時)
図1 2013年1月の「世界の雨分布速報」、
衛星による高精度高分解能全球降水マップ(GSMaP)
(上図:13日午前9〜10時、下図:14日午前9〜10時(日本時間)の
南岸低気圧がもたらした降雨分布を示す)

 気象庁の発表によると、東京都心では1月14日は昨冬より6日早い初雪となり、午後3時には2006年以来の水準となる積雪8 cmを記録し、また横浜市でも午後2時に13センチを観測しました。同日の24時間降雪量は、関東甲信の多くの地点で40 cm前後になり、東北地方の福島県内では20 cmを超えました。
この大雪は低気圧の急激な発達に伴い発生しました。13日正午時点で中心気圧が1,008ヘクトパスカルだった沖縄西海上の低気圧が暖気を吸い込んだ後、北西からの強い寒気とぶつかり、14日午前9時には988ヘクトパスカル、正午には984ヘクトパスカル、午後3時には976ヘクトパスカルと急速に気圧が低下しました。14日午前5時の段階で首都圏向けに出した予報は雨でしたが、その後に短時間で気温が下がったため、強い雪や風を伴う天候となり、東京都心から関東地方では、予想以上の大幅な気温低下によって大雪になったと考えられます。なお2月5日夜から6日にかけての南岸低気圧は、北から入り込む寒気が予想より弱く、雨となる地域が多く、雪を降らす雨雲の発達が小さかったため、大雪にはならずにすみました。

 降雨と降雪は、水の液体と固体の相変化によるものです。地上付近の気温や大気中の水蒸気の地域的・局所的な水平分布や鉛直分布の影響もあるため、観測データの観測範囲、空間分解能や急激な変化を追う観測の時間間隔、予報モデルの分解能などにより、雨となるか雪となるかの予測は難しい場合があります。地球観測衛星による観測では、熱帯降雨観測衛星(TRMM)を中心とする複数衛星を利用したGSMaPで降雨は観測されますが、降雪は観測されません。そのため降雨に加えて降雪も観測できる日本の2周波降水レーダ(DPR)を搭載する全球降水観測計画(GPM)が日米共同開発により進み、現在打上げに向けて衛星の最終の試験を行っています。これによって降雨と降雪の気象メカニズムの新たな知見が得られることが期待されます(参照2)。

日本列島周辺の陸上の積雪・海上の雪氷分布(2013年1月1日〜15日)日本列島周辺の陸上の積雪・海上の雪氷分布(2013年1月16日〜31日)
図2 日本列島周辺の陸上の積雪・海上の雪氷分布
上図:2013年1月上旬(1〜15日)
下図: 2013年1月下旬(16〜31日)
(陸上の白色は乾雪、水色は湿雪、海上の藤色は乾雪氷、青色は湿雪氷を表す)

 2013年1月上旬(図2、左図)の積雪分布からは、北海道から東北、北陸の日本海沿岸の積雪が見られます。下旬(図2、右図)には太平洋側にも積雪、主に湿雪の分布が広がり、南岸低気圧の残した積雪の様子が見られます。しかし、雲の合間から見る地表の積雪状況を半月間分合成した画像(空間分解能500 m)では、短期に融けてしまう積雪は観測されません。そのため空間分解能が250 mと高い気候変動観測衛星(GCOM-C)の多波長光学放射計(SGLI)では、積雪情報の改善が期待されます(参照3)。

 昨年5月18日にJAXAが打上げた第一期水循環変動観測衛星「しずく」(GCOM-W1)の初期校正作業完了に伴い、「しずく」に搭載している高性能マイクロ波放射計2(AMSR2)の輝度温度プロダクトの提供を1月25日から開始し、打上げ後1年の今年5月には、物理量プロダクトの提供を開始します(参照4)。衛星「しずく」のマイクロ波放射計AMSR2は雲を透過して大気や地表から射出するマイクロ波の放射輝度データが得られます(参照5, 6)。2002年の打上げ以来10年間定常利用されてきたマイクロ波放射計AMSR、AMSR-Eデータの事例解析、利用検証、定常利用による経験の蓄積を経て、水蒸気、降水量のデータの初期値作成への利用、海面水温、海氷、積雪、土壌水分のデータの境界値作成への利用、さらに高分解能化や海上風速など新たな観測データ利用の研究開発による、気象メカニズムの理解促進が進みつつあります。



<脚注>

*1 「世界の雨分布速報」では、世界の雨分布を準リアルタイム(観測から約4時間遅れ)で1時間ごとに、複数の静止・極軌道気象衛星と地球観測衛星の放射計やサウンダー(TRMM TMI, Aqua AMSR-E, DMSP SSM/I, DMSP SSMIS, NOAA-19 AMSU, MetOp-A AMSU, GEO IR)のデータを一体的に利用して提供しています。なお、背景の雲画像には、米国海洋大気庁(NOAA)気候予測センター(CPC)の作成による全球雲データを利用しています。このデータは気象庁の静止気象衛星ひまわり(MTSAT)、米国海洋大気庁の静止気象衛星(GOES)、欧州気象衛星機関(EUMETSAT)の静止気象衛星(Meteosat)のIR情報を利用しています。

観測画像について



観測衛星: TRMM, Aqua, DMSP, NOAA-19, MetOp-A, GEO (図1)
観測センサ: TMI, AMSR-E, SSM/I, SSMIS, AMSU, AMSU, IR(図1)
観測日時: 2013年1月13日、午前9〜10時(日本時間)(図1上段)
2013年1月14日、午前9〜10時(日本時間)(図1下段)

図1は、JAXA/EORCの画像検索サイト「世界の雨分布速報」からダウンロードしたデータを用いました。
地上分解能: 緯度経度0.1度格子(赤道付近で約11 kmメッシュ)
地図投影法: 等緯度経度座標


観測衛星: Aqua/Terra (図2)
観測センサ: MODIS (図2)
観測日時: 2013年1月上旬(1〜15日)(図2左図)
2013年1月下旬(16〜31日)(図2右図)

図2は、JAXA/EORCの画像検索サイト「JASMES JAXA地球環境モニター」からダウンロードしたデータを用いました。
地上分解能: 250 m(バンド1,2)、500 m(バンド3-7)、1000 m(バンド8-36)
地図投影法: 等緯度経度座標

本文ここまで。
画像:人工衛星の情報を掲載 サテライトナビゲーター
画像:衛星利用の情報を発信 衛星利用推進サイト
画像:衛星から見た地球のデータ集
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