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地球が見える 2007年

西遊記の世界、火焔山

図1 トルファン、火焔山周辺
(Google Earthで見る火焔山 (kmz形式、1.89MB、低解像度版))
図1は陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)に搭載された高性能可視近赤外放射計2型(AVNIR-2)が2007年2月に捉えたシルクロードのオアシス都市トルファン(吐魯番、人口25万人)と西遊記にも登場する火焔山周辺です。沙漠地帯なので全体に茶色っぽく見えていますが、図右下の焦げ茶色のトルファン周辺はブドウ溝と呼ばれる畑が広がっています。画像は冬に取得されたので、緑がほとんどありませんが、トルファンは天山山脈からの雪解け水で潤う緑豊かなオアシスの町です。周辺の畑では、ハミウリ、西瓜、桃そして栽培品種が6,000種を超えるブドウが栽培されています。沙漠なのに水が豊富なのは、天山山脈からの雪解け水だけではなく、カレーズと呼ばれる地下灌漑水路(20〜30mの間隔で井戸を掘り、その底をつなげて水路としているので水の蒸発を防いでいる)が町のいたるところを流れているおかげです。トルファンは、中国全土の約1/6を占める中国西端の民族自治区新疆(しんきょう、シンチャン)ウイグル自治区にあります。その自治区の首都ウルムチ(人口210万人)からは天山山脈を隔てて、180km南東に離れた位置にありますが、1998年にできた高速道路を用いると約2時間で行くことができます。ラクダで沙漠を横断したシルクロードの時代と比べると隔世の観があります。

図右には、西遊記で牛魔王と孫悟空が芭焦扇を巡って戦った火の山のモデルとされる火焔山があります。ウイグルの人々はクズルターダ(赤い山)と呼び、トルファンのシンボルとなっています。火焔山の最高峰は標高850mです。山と言っても一つの山ではなく、赤色砂岩でできた赤い岩肌が100kmに渡り屏風のように広がっています。火焔山の山肌には荒々しいシワが刻まれており、長い年月にわたる地殻変動と風雨による侵食によって作られました。今でこそ極端な乾燥地帯ですが、その昔にはこの土地にも雨がよく降ったようです。この地域では最高気温が48℃にも達し、陽炎が立ち上ります。陽炎により赤い岩肌のひだが揺れる様は、まさに燃え上がる火焔山そのものです。ただ、冬の1〜2月ともなると-4〜-16℃ととても寒くなります。本来の火焔山を見るのならば夏場が良いのですが、あまりにも暑いので体調にはくれぐれも注意した方がいいでしょう。

図2 トルファン市街の拡大図
図2はトルファン市街の拡大図です。トルファン近辺は、5世紀から7世紀の頃、高昌(こうしょう)国が栄えており、玄奘三蔵(げんじょうさんぞう)が天竺(てんじく、インド)に向かう際に立ち寄ったところです。仏教を篤く信じていた高昌国の王「麹文泰(きくぶんたい)は玄奘三蔵を逗留させ、その教えを聞いたといいます。しかし、数年後、天竺の帰りに三蔵が再度訪れようとしたときには高昌国は既に滅び廃墟と化していました。図には含まれておりませんが、現在のトルファン市街から南東へ40 kmのところにその遺跡が高昌故城(こうしょうこじょう)として残っています。この城は、ピンクの花が咲く植物タマリスクの枝や草などを混ぜた日干し煉瓦を積み上げて作られておりました。そのため少し残った廃墟も近隣の農家によって燃料・肥料用として持ち去られたためさらに昔の面影がなくなってしまったようです。

図2左のトルファン市街の西約15kmには巨大な軍艦を思わせる交河故城(こうがこじょう、ヤルホト)があります。高昌国と並び西域36国の一つとして権勢を誇った車師前国(しゃしぜんこく)の跡です。交河故城は断崖に彫刻して作られた町です。二つの河に挟まれた台地を利用した軍艦の形をした堅固な砦でしたが、車師前国は5世紀半ばに高昌国に滅ぼされました。その高昌国も唐に滅ぼされ、交河故城はその後、唐の砦となり14世紀にモンゴル軍によって破壊されるまでの間、西域の軍事拠点でした。



ハミウリ:新疆ウイグル自治区特産の瓜、果肉はオレンジ色で西瓜のようにしゃりしゃりした食感が特徴、ハミはトルファンから東へ約360 km離れた都市。

観測画像について:
(図1及び図2)
観測衛星: 陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)
観測センサ: 高性能可視近赤外放射計2 型(AVNIR-2)
観測日時: 2007年2月10日05時11分頃 (世界標準時)
地上分解能: 10 m
地図投影法: UTM(ユニバーサル横メルカトール)
AVNIR-2は、4つのバンドで地上を観測します。図1及び図2は、いずれも可視域のバンド3 (610〜690ナノメートル)、バンド2 (520〜600ナノメートル)とバンド1 (420〜500ナノメートル)を赤、緑、青に割り当てカラー合成しました。この組合せでは、肉眼で見たのと同じ色合いとなります。沙漠なのではっきりしませんが、露出した岩や土砂は茶色、焦げ茶色は畑です。

関連サイト:
ALOS 解析研究ページ
沙漠を前進する不思議な河
地球が見える 陸地・地形
本文ここまで。
画像:人工衛星の情報を掲載 サテライトナビゲーター
画像:衛星利用の情報を発信 衛星利用推進サイト
画像:衛星から見た地球のデータ集
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