地球が見える 2004年
インド洋に浮かぶ島大陸:マダガスカル
図1はアフリカ大陸の南東に位置し、インド洋に浮かぶマダガスカル島を捉えています。島の中央より東寄りに深緑色の帯(熱帯雨林)が南北に走り、その東側は緑色(草原や畑地)で、西側には黄緑や赤茶色(サバンナや砂漠、露出した岩石)が見えます。これは、南北に延びる中央高地を境にして、東側が湿潤な地域で、西側が乾燥地帯であることを意味します。サン・テクジュペリの童話「星の王子様」で有名になったバオバブの木はこの乾燥地帯に生えています。一方、島の東側はかつて豊かな熱帯雨林に覆われていましたが、急激な経済発展のために伐採が進み、現在では、かつての1/4ないし1/5しか残されていないとのことです。島の東側の緑色の多くの部分は熱帯雨林の伐採跡地なのです。アイアイ(ユビザル)を含むキツネザルは森林に生息しているので、森林の伐採はキツネザルたちを絶滅の危機へと追いやりつつあります。なお、白や水色は雲を、黒は海や湖などの水面またはデータのないことをそれぞれ表しています。島の西部の乾いた川原も白っぽく見えています。 (A)はマダガスカル島北西部の拡大図です。ベツィボカ川が河口付近でたくさんの支流に別れ、クラゲの足のように見えるのが印象的です。 マダガスカル西部の世界自然遺産に登録された「ツィンギー・ド・ベマラハ国立公園」には石灰岩が雨で削り取られて針山が連なったように見える特殊な地形「ツィンギー」((B)の赤茶色の部分)があります。「ツィンギー」とは、マダガスカル語で「ブンブン言う」という意味で、これは針山を叩いたときに出る音から名づけられたそうです。より規模の小さな「ツィンギー」は、マダガスカル北部のアンカラナ特別保護区((C)の赤茶色の部分)にもあります。 (D)はマダガスカル西部の拡大図ですが、他の図と異なり目で見た状態に最も近いカラー合成画像です。海岸線に沿って延べ100kmにわたって延びるエメラルドグリーンの海は、サンゴ礁が生息する浅い海底の白い砂が太陽光を反射して輝いています。 マダガスカル島の大部分は、カンブリア紀(5〜6億年前)またはそれ以前にできた中央高地から成ります。この中央高地はかつてゴンドワナ超大陸を構成していましたが、ゴンドワナ超大陸の分裂(ジュラ紀後期:1億6000万年前ころ)を経て、インド亜大陸からの分離(白亜紀後期:9000万年前ころ)以降、他の大陸から孤立した島となりました。このため、マダガスカル島の動植物の多くは固有の進化を遂げることになりました。なお、ツィンギーを構成する石灰岩はこのような大陸の分裂の過程でできた浅海にサンゴ礁が発達し、それが隆起してできあがったものです。 一方、4億年前(デボン紀初め)の姿を現在までとどめているのがシーラカンスです。シーラカンスは以前は6500万年前に恐竜とともに絶滅したと思われていましたが、1938年以降、マダガスカル島北西のコモロ諸島(E)では毎年10〜13匹が捕獲されている(関連サイト参照)ことが分かっており、モザンビーク海峡を中心に、ケニア沖やインドネシアのスラウェシ島近海でも捕獲されています。なお、シーラカンスとは、ギリシャ語で「中空の脊椎」を意味します。
関連サイト: ・シーラカンスについて(英語版のみ) |