地球が見える 2009年
流氷の季節到来2009
図1の左図は、人間の目に見える波長の光を捉える光学センサMODISが捉えた2009年2月11日のオホーツク海南部の様子です。北海道付近をうっすら覆った白い雲の下に、黄色い流氷が知床半島から紋別市沿岸付近にかけての海域を広く覆っている様子が分かります(なお、この図では、流氷を雲と区別しやすいように黄色く着色しています。実際の流氷は黄色ではなく白色であることにご注意ください)。また、右側の図は、目には見えないマイクロ波帯の電波を捉えることができるAMSR-Eセンサが捉えた同じ日・同じ領域の流氷(右側の図では流氷は赤色で示されています。また、白い部分は観測されていない領域です。)の画像です。マイクロ波は雲を透過するので、天候に左右されず、流氷分布の様子を毎日捉えることができますが、光学センサに比べると画像の細かさ(分解能)が劣ります。 図1からも、AMSR−Eの画像からは、分解能は粗いものの、オホーツク海に浮かぶ流氷の集まり具合(密接度といいます)が、北海道沿岸付近では小さくなっており、樺太付近では大きくなっている様子が分かります。さらに、分解能が細かいMODISの画像を見ると、密接度が小さくなっていた北海道沿岸では、細かい流氷が細かく渦巻いている様子が見て取れます。一方、AMSR-E画像上で密接度が大きくなっていた沖合では、流氷自身が明るく、また、一つ一つの氷板の大きさが大きく、お互いに寄り集まっている様子を教えてくれています。このように、それぞれのセンサの特徴を生かすことで、流氷の様子をより詳しく診ることができます。 さて、今年の流氷の特徴はどのようになっているのでしょう。紋別市ホームページ*1によると、紋別市では2月10日に流氷接岸初日が観測され、平年より5日、昨年より16日遅い観測とのことです。しかし、昨年の流氷接岸が平年に比べて早かったこともあり、今年が極端に遅いというわけではありません。
北極海に目を移すと、近年、融解期(9月)の海氷面積が顕著な減少傾向にあることが注目を集めています。しかし、厳冬期の海氷面積に限ってみてみると、最近6年間で最も小さい面積で推移した2006年を境に、徐々に増加しており、回復傾向を示しているようにも見えます*2。このことは、2008年1月の世界の平均気温が大きく低下した*3ことが大きな要因として考えられ、昨年のオホーツク海の海氷面積が大きかったこととも一致します。実際に、昨年1月下旬から2月上旬にかけては、偏西風の蛇行パターンがアジア域に寒気を吹き込み、一時的にアジア域を大寒波が襲い、中国を始めとする広い範囲で大雪が観測されました。また、今冬は、ロンドンを初め欧州や北米方面に寒気が流入しているようです*4。地球の温暖化が叫ばれる中、全球各地の気温がどのように推移していくのか、そして、海氷を始めとする世界各地の環境要素がどのように変動していくのか、今後も注意深く観測を続けていく必要があります。海氷が毎冬形成される海としては最南端に位置するオホーツク海は、そのような気候変動の兆候を診る上で重要な海域といえるでしょう。 オホーツク海に広がる流氷分布については「オホーツク海の海氷分布ページ」*5で最新状況を公開しています。オホーツク海全域に広がる流氷の様子、そして北海道沿岸に迫る細かい流氷分布の画像が毎日更新されています。また、スライドショーで流氷分布の動きを動画で見ることもできますので、ぜひご覧ください。 また、日本周辺の積雪分布・面積、日射量の推移についても、「衛星による地球環境監視のWebサイト(JAXA Satellite Monitoring for Environmental Study (JASMES))」*6にて、半月毎に公開しています。こちらも併せてご覧ください。
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