地球が見える 2009年
ヨーロッパへの郷愁を映しだす街並み、ブエノスアイレス
ラプラタとは「銀」の意味のスペイン語です。大航海時代の16世紀初頭に、この地を探検したスペイン人が銀の産地と誤解したことから名づけられました。ラプラタ川の両岸(図右上のウルグアイ側と図左下のアルゼンチン側)に広がる緑地と耕地が迷彩を施したかのように見える大地は、肥沃な大平原のパンパです。そこではアルゼンチンの主産業である農牧業が営まれています。
図左上に見えるパレルモ地区の広大な緑地は「2月3日公園(通称パレルモ公園)」です。総面積400ヘクタールの敷地内にはゴルフ場、競馬場、テニスクラブ、動物園、バラ園、日本庭園などの娯楽施設があり、まさに市民の憩いの場となっています。 アルゼンチンといえばタンゴが想起されますが、芸術に対する市民の関心は高く、市内には数多くの劇場・美術館があります。なかでも2008年に創立100周年を迎えたコロン劇場は、ミラノのスカラ座、パリのオペラ座と並ぶ世界三大劇場のひとつと言われ、市街を南北に貫く「7月9日大通り」に面しています。劇場近くの大通りの中央に丸く見える塔は市内観光の道標ともなる白亜のオベリスコです。そこから斜行する通りの先にある茶色の空地が「5月広場」です。その名は独立運動のきっかけとなった1810年の5月革命に由来します。広場の正面に見えるピンク色の建物は大統領府(カサ・ロサーダ)です。その前庭の位置を占める広場は、大統領就任時、抗議デモなど、事あるごとに大勢の市民が集まる場所でもあります。 アルゼンチンは熱狂的なサッカー国として有名です。2008年の北京オリンピックで金メダルに輝いたことは記憶に新しいところです。その人気を裏付けるように市内にはサッカー場がいくつも見えています。図右下の旧市街ボカ地区にあるのは人気クラブ「ボカジュニアーズ」のスタジアムです。アルゼンチンが1986年ワールドカップメキシコ大会で優勝したときの中心選手マラドーナもかつてこのクラブに所属していました。ボカはヨーロッパからの移民が最初に上陸したところで、タンゴ発祥の地としても有名です。 アルゼンチンは、地球上のあらゆる気候を一国で体験できるとたとえられるほど、南北に長く(約3,800km)、日本の約7.5倍(約280万平方km)の広大な国土を有する国です。その国名は「銀」という意味のラテン語「アルヘントゥム」に由来します。全輸出品の80%を農畜産業が占める農業国ですが、近年国名に違わぬように鉱業にも積極的に投資を始めました。ブエノスアイレスは、その長大な国土のほぼ中央に位置し、日本と同じく(南半球に位置するため夏・冬は正反対ですが) 明瞭な四季のある穏やかな気候帯に属しています。そこに広がる光景は19世紀に施行された移民政策によってもたらされた多様な外国文化と新大陸特有の自由な気風の賜物です。特に、欧風建造物を散りばめた街並みは、「南米のパリ」と称されるほどに、遥かなるヨーロッパへの郷愁を濃厚に映し出しています。
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