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地球が見える 2008年

グリーンランド西部の融ける氷床

図1 グリーンランド西部の氷床上の池(その1)
図1はグリーンランド西部のイルリサットから北東に約110kmの領域で、氷床の表面上に雪や氷が融けてできた融解池*が数多くできていることを示しています。左は2001年夏に米国のランドサット7号が観測した画像で、右は今年(2008年)夏に陸域観測技術衛星「だいち」が捉えた画像です。 左右の画像を比べると、多くの池は7年の時を経てもほぼ同じ場所にできていること、そして2001年の画像の色の薄い(つまり浅い)細長い池が2008年の画像では色の濃い(つまり深い)池に取って代わられたことが分かります。
中央部が白くて、周囲が青い池がいくつか見ますが、これらは、池の表面の中央が凍っているものの、その周囲は凍らずに水面が見えている状態だと考えられます。このような池は2001年の画像では10個ほど見えますが、2008年の画像では、その多くは色の濃い池に変わってしまいました。これらのことは、この7年間にグリーンランド西部の氷床の融解が進んだことを示しています。 図の下の距離尺を使うと、細長い池の幅は100mほど、一番北の池の大きさは0.9km×1.7kmほどあることが分かります。

図2 グリーンランド西部の広域図
(Google Earthで見るグリーンランド・イルリサット(kmz形式、5.29MB、低解像度版))
図2は2008年7月にだいちが捉えたグリーンランド西部の広域図で、東側の半分は氷床、西端はディスコ湾で、両者の間には、露出した岩とフィヨルドが複雑に入り混じった領域が広がっています。拡大図を見ると、ディスコ湾やいくつかのフィヨルドの水面上に氷山が白い点として見えています。
図の中央には長さ54〜60km、幅4.4〜13.6kmのイルリサット・アイスフィヨルドが見えています。このフィヨルドの河口の北岸には人口4,000人のイルリサットの市街地が、その北3kmほどのところにはイルリサット空港の長さ1,000mの滑走路が見えています。
イルリサット・アイスフィヨルドは地球の歴史の一段階である第4紀の最終氷期の傑出した事例であること、巨大な氷床と、氷山に覆われたフィヨルドに氷山を生み出す流れの速い氷河の組み合わせがグリーンランドと南極とでしか見られない現象であることから、2004年、国際連合教育科学文化機関 (UNESCO)の世界自然遺産として登録されました。

図3 ヤコブスハン氷河の後退
図3はイルリサット・アイスフィヨルドの上流部の画像です。左右の画像を比べると、イルリサット・アイスフィヨルドに流れ込んでいるヤコブスハン氷河(グリーンランド語ではセルメク・クジャレク)の終端がこの7年間に図の黄色の矢印の位置から青い矢印の位置へ、最大13.6kmも後退したことが分かります。これは、平均して1年間に1.9kmずつ後退したことを意味し、「南米、パタゴニアの巨大氷河が大きく後退」で取り上げたウプサラ氷河の終端の後退速度220m/年のおよそ9倍に相当します。このため、イルリサット・アイスフィヨルドを埋め尽くしているのは、今では、氷河ではなく、氷河から誕生した無数の氷山となってしまいました。なお、1994年と2007年の状況については、EORCホームページ内のIPYデータセットホームページを参照願います。

図4 グリーンランド西部の氷床上の池(その2)
図4はイルリサットから南東へ約100kmのところ、図1の領域から約70km南の領域を示しています。図4の左右の画像を比べると、2001年に存在した池の大部分は2008年にも存在していますが、非常に小さくなったものもあります。また、池を結ぶ川がいくつか見えていますが、この7年間に細くなったことがわかります。右の画像の左上には1.6km×2.6kmの大きな池が新しくできています。
図1と比べると、より大きな池があり、図1の領域よりも氷床の融解が進んでいるようです。



* 「メルト・ポンド(melt pond)」のきちんとした日本語訳が決まっていないようなので、ここでは「融解池」と呼ぶことにします。氷河の表面にできた同様な池は「エヴェレスト周辺でも融ける氷河」の図2(b)、(c)で見ることができます。

参照サイト:
シリーズ「地球の悲鳴」 消える氷の大地 2007年6月号 ナショナルジオグラフィック(日経ナショナル ジオグラフィック社のサイト)

観測画像について:


(図1の右側、図2、図3の右側、図4の右側。図をクリックすると2段階で拡大します)
観測衛星: 陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)
観測センサ: 高性能可視近赤外放射計2 型(AVNIR-2)
観測日時: 2008年7月3日15時10分頃(世界標準時) (図2の東側、図4の右側)
2008年7月8日15時16分頃(世界標準時) (図1及び図3の右側、図2の西側)
地上分解能: 10m
地図投影法: UTM(ユニバーサル横メルカトール)
AVNIR-2は、4つのバンドで地上を観測します。いずれも可視域のバンド3 (610 〜 690ナノメートル)、バンド2 (520 〜 600ナノメートル)とバンド1 (420 〜500ナノメートル)を赤、緑、青に割り当ててカラー合成して作成しました。この組合せでは、肉眼で見たのと同じ色合いとなり、雪や氷は白ないし薄い灰青色に、露出した岩は茶色っぽく、水面は青または水色に見えます。黒はデータがないことを示しています。なお、図2は6枚の画像を貼り合わせて作成しました。また、より広い範囲を表現するため、図1、図3、図4では地上分解能を20mに、図2では地上分解能を50mに、それぞれ落としています。

(図1の左側、図3及び図4の左側。図をクリックすると2段階で拡大します)
観測衛星: ランドサット7号(NASA)
観測センサ: 改良型セマティック・マッパー・プラス(ETM+)
観測日時: 2001年7月7日(世界標準時)(図1の左側、図3の左側、図4の左側)
地上分解能: 30m
地図投影法: UTM(ユニバーサル横メルカトール)

ここでは米国メリーランド大学のGlobal Land Cover Facility (GLCF) Earth Science Data Interfaceのサイトから無料でダウンロードしたデータを用いました。
可視域のバンド3 (630〜690ナノメートル)、可視域のバンド2 (520〜600ナノメートル)、可視域のバンド1 (450〜520ナノメートル)の各バンドに赤、緑、青色を割り当ててカラー合成したので、肉眼で見たのとほぼ同様に、雪や氷は白または薄い紫色に、露出した岩肌は茶色に、水面は青く見えます。

関連サイト:
ALOS 解析研究ページ
南米、パタゴニアの巨大氷河が大きく後退(その2)
ブータン・ヒマラヤの氷河湖
エヴェレスト周辺でも融ける氷河(その2)
25万年前の氷を蓄える白い島:グリーンランド
地球が見える 陸地・地形
本文ここまで。
画像:人工衛星の情報を掲載 サテライトナビゲーター
画像:衛星利用の情報を発信 衛星利用推進サイト
画像:衛星から見た地球のデータ集
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