地球が見える 2008年
アドリア海の真珠・ドブロヴニク旧市街、クロアチア
アドリア海沿岸地域は、100〜150kmの内陸まで、そのほとんどが石灰岩からなるカルスト地形です。沿岸には石灰岩が露出する多島海がよく発達していますが、ここは氷期の海面が低下した時期に、陸上で雨水により溶食されて形成されたカルスト地形が、その後の海面上昇により没してできた沈水カルスト地形と考えられます。この地域では最終氷期(およそ7万年前〜1万年前)に現在より125mの海面低下があったとされています。図1にも沿岸部に多くの島が存在している様が見て取れます。
ドブロヴニクの町はアドリア海に突き出した旧市街と、スルジ山の裾野に広がる新市街からなり、旧市街は城壁で囲まれオレンジ色のレンガで出来た家々が立ち並んでいます。ドブロヴニクには鉄道が通っていませんが、グルージュ地区にバスターミナルや大型客船・フェリー乗り場があり、市内交通や近海の島々への交通網が整備されています。ドブロヴニク市北西には近年F・トウジュマン橋が架けられ、湾の奥まで迂回する必要がなくなりました。 ドブロヴニク市北方のスルジ山(標高412m)山頂にはナポレオンが贈ったという白い十字架が立っています。また、南東約700m沖合にあるロクルム島は3つのビーチを持つリゾートアイランドです。無人島ですが夏になると観光客が押し寄せます。
旧市街を取り囲む城壁は幅3〜6m、高いところでは25mの高さがあり、角にある各要塞を結んでいます。旧市街への入り口の一つ、西側のピレ門から東に向かって目抜き通り(プラツァ通り)が走り、通りの両側に狭い路地が網の目のように伸びています。通りは大理石できれいに舗装されているため画像でも真っ白に光っています。旧市街に入ってすぐ左手にフランシスコ会修道院があります。 1391年に開業したヨーロッパでも3番目に古い薬局があり、2万個以上の薬壺や手書きの処方箋が保存された薬学博物館にもなっています。 旧市街北東部にドミニコ会修道院があります。ロマネスクやゴシック、ルネッサンス様式などを取り入れ15世紀に造られた修道院で、院内は宗教美術館となっています。また南東部には1192年に英国のリチャード王が創建したと伝えられる大聖堂があります。17世紀にバロック様式で再建されたもので、貿易都市として繁栄していた当時を偲ばせる財宝が保存されています。 1991年に始まった独立戦争でドブロヴニク等の沿岸域に栄えた旧市街は一時壊滅状態に陥りました。現在は独立後の混乱を抜け出し、市民の手で修復も進み再び昔の面影を取り戻しつつあります。
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