ページの先頭です。
本文へジャンプする。
【重要なお知らせ】このページは過去に公開された情報のアーカイブページです。更新を終了しているため、リンク切れや古い情報が含まれている可能性があります。 最新情報については、新サイト Earth-graphy (earth.jaxa.jp) をご利用ください。
ここからサイト内共通メニューです。
サイト内共通メニューを読み飛ばす。
サイト内共通メニューここまで。
ここから本文です。

地球が見える 2007年

彷徨える湖の残影、ロプ・ノール

図1 ロプ・ノール
(Google Earthで見るロプノール (kmz形式、913KB、低解像度版))
図1は陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)搭載の高性能可視近赤外放射計2型(AVNIR-2)が2007年1月に捉えた中国、新疆(しんきょう、シンチャン)ウイグル自治区にあるロプ・ノールという湖の画像です。ここはタクラマカン沙漠を含むタリム盆地の東部に当たります。今では干上がってしまいましたが、その昔は約50km四方の砂漠に浮かぶ大きな湖でした。黒く見えるのは水が干上がった跡です。今ではその干上がった跡で形作られた地球の耳が宇宙からも見えます。
ロプ・ノールとはモンゴル語で、ロプの湖という意味ですが、19世紀の後半、このロプ・ノールは探検家の注目の的でした。それはこれほど大きな湖があることが知られていたにもかかわらず、どこにあるかを誰も知らなかったからです。また、この湖の北西のほとりにあったシルクロードの古代オアシス都市、楼蘭(ろうらん)も貿易上の重要な拠点でしたが4世紀半ばにはなくなり、6世紀にはどこにあったかさえもわからなくなっていたのです。

長い論争と探検の末、1900年にスウェーデンの探検家ヘディンにより偶然、楼蘭の遺跡とロプ・ノールの湖床が発見されました。その時にはロプ・ノールには水はありませんでしたが、34年後に再度ヘディンが訪れたときには満面に水をたたえており、カヌーに乗って下ることができました。
ロプ・ノールは、このヘディンによって沙漠を南北に移動する「彷徨える湖」として提唱され有名になりました。その仮説とは、ロプ・ノールの北部と南部の間の高低差がわずか2mしかないことから、わずかな地表の変化により流路を変えるというものです。沙漠の北にある天山(てんざん)山脈と南にある崑崙(こんろん)山脈の雪を水源とするタリム河が土砂をロプ・ノールに流し込むことにより湖底が高くなる一方、沙漠が烈風でどんどん浸食されていき、やがてロプ・ノールの湖底と沙漠の高低が逆転し、水は低いほう(南のほう)に流れ始めます。そうすると今度は逆に、北方の楼蘭付近の沙漠もまた烈風で浸食されていくので、やがてタリム川の水路が北方に戻るというものです。4世紀頃、ロプ・ノールは移動し始め、その湖畔(図1左上ですが図では判別できません)に栄えていた楼蘭は生命の水を失って、深い流砂に埋もれたということです。
一方、1972年頃にはロプ・ノールは事実上消滅していたことが衛星画像などで確認されています。これは気候変動によるタリム盆地の乾燥化、タリム河上流での灌漑、天山山脈と崑崙山脈からの雪解け水の減少などにより、タリム河が途中で消えてロプ・ノールに水を注ぎ込まなくなってしまったためと考えられます。

また、図1上に見えるような正方形の塩田もできており、もはやロプ・ノールに水が注ぎ込むことはなさそうです。ロプ・ノールは二千年も昔、蒲昌海(ほしょうかい)または塩沢と呼ばれ、塩水湖だったので干上がった湖の跡には多量の岩塩が残っています。
画像だけでは判定できませんが、採掘した塩と汲み上げた地下水を塩田の池に入れて溶かし、不純物を取り除いたあと岩塩粒を取り出す湿式(溶解)採鉱、もしくは地下水に溶け込んでいる濃いかん水(塩水)が噴出する「自流井」方式による精製をしていると言われています。塩といっても、塩水を濃縮する過程で生産できるのは食塩の塩化ナトリウムだけではなく、硫酸マグネシウム、臭化マグネシウム、塩化マグネシウム、硫酸カルシウム、塩化カルシウム、塩化カリウムなどがあります。ここで産出されるのが何であるのかは不明ですが、中国の塩の生産量は世界第2位(内訳は海塩が約60%、岩塩が約30%、湖塩が約10%)と十分に塩が採れるので、このような特殊な方法で精製するからには、塩化カリウムなどの肥料用の塩ではないかと推測されます。

図2 2002年1月5日 図3 2002年2月22日 図4 2002年3月17日
図5 2002年5月4日 図6 2002年5月20日 図7 2002年8月8日
ロプ・ノール周辺と塩田の変遷
図2〜7は2002年1月から8月にかけてNASAの地球観測衛星に搭載されているMODISによるロプ・ノール周辺と塩田の画像です。1月5日(図2)と2月22日(図3)では、まだ塩田の構造物が見られませんが、3月17日(図4)には左側の長方形の部分ができあがっています。5月4日(図5)には右の方にも構造物が広がっているのがわかります。5月20日(図6)には正方形の構造の骨格がほぼできあがり、8月8日(図7)では塩田の正方形がほぼ完成していることがわかります。このように衛星画像を用いることにより、世界各地の構造物がいつどれぐらいの期間で構築されたかなどの情報を入手することが可能です。この塩田の正方形部分は、2002年の3月から6月にかけ、たった3ヶ月程度で作られたということがわかります。もう一度、図1を見るとその後も大幅に塩田を拡大し続けているようです。



観測画像について:
(図1)
観測衛星: 陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)
観測センサ: 高性能可視近赤外放射計2 型(AVNIR-2)
観測日時: 2007年01月02日04時54分頃 (世界標準時)(図1)
地上分解能: 10 m
地図投影法: UTM(ユニバーサル横メルカトール)
AVNIR-2は、4つのバンドで地上を観測します。図1は、いずれも可視域のバンド3 (610〜690ナノメートル)、バンド2 (520〜600ナノメートル)とバンド1 (420〜500ナノメートル)を赤、緑、青に割り当てカラー合成しました。この組合せでは、肉眼で見たのと同じ色合いとなり、次のように見えています。

黄土色: 沙漠
青、緑: 水面
黒: 水が干上がったところ、またはデータのないところ

(図2〜7)
観測衛星: 地球観測衛星Terra (NASA)
観測センサ: MODIS (NASA)
観測日時: 2002年01月05日(図2)、
2002年02月22日(図3)、
2002年03月17日(図4)、
2002年05月04日(図5)、
2002年05月20日(図6)、
2002年08月08日(図7)
空間分解能: 500 m

関連サイト:
ALOS 解析研究ページ
西遊記の世界、火焔山
沙漠を前進する不思議な河
地球が見える 陸地・地形
本文ここまで。
画像:人工衛星の情報を掲載 サテライトナビゲーター
画像:衛星利用の情報を発信 衛星利用推進サイト
画像:衛星から見た地球のデータ集
画像:ページTOP