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地球が見える 2006年

PALSARのスキャンサー・モードで見た流氷と北海道周辺

図1 PALSARのスキャンサー・モードで観測した流氷と北海道周辺
(Google Earthで見る北海道 (kmz形式、1.88MB、低解像度版))
図1は2006年4月18日夜10時頃、北上する軌道から、北海道を含む幅350 km、長さ1,000 kmの領域を陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)に搭載したフェーズドアレイ方式Lバンド合成開口レーダ(PALSAR)のスキャンサー・モード*1で観測したものです。
図1の上部には北海道の大部分が捉えられ、図の左上には札幌の市街地が明るく見えています。図の下の方は三陸沖から茨城沖の太平洋です。
図1を詳細に見ると以下のように、PALSARの高いSNを有するスキャンサー・モードでの観測によって、海面の観測がかなり詳細に行えることや、昼夜の別なく、また天候に左右されずに日本近海の流氷観測が行えることが確認されました。


流氷(領域A)
北海道のオホーツク海沿岸では、例年12月から4月にかけて、流氷が押し寄せます。流氷の中や下では植物プランクトンが大量に発生して、良好な漁場の形成に一役買いますが、船舶の安全航行上、問題となるので、日本では海上保安庁が航空機、衛星画像を用いて観測を行っています。
流氷の表面はざらざらしており、合成開口レーダ(SAR)で見るとやや明るく見えます。衛星方向にほとんど電波を返してこない海面に比べて、流氷は明るいことから、SAR画像で比較的容易に見分けることができます。特に、LバンドSARでは他の波長のSARに比べて明るく見えます。この画像が取得されたのは4月18日で、北海道沿岸の流氷はほぼ消え、その代わりサハリンのアニワ岬の沖を漂う様子が確認できます。

図2 2006年4月19日の北海道オホーツク海沿岸の海氷分布図
(海上保安庁の海氷速報より転載)
図2は図1の翌日の海上保安庁の海氷速報による海氷分布図で、これと比べると、流氷の分布がほぼ合致していること、レーダ画像の分解能が高く、より詳細なレベルで流氷把握ができそうなことがわかります。


海面の高温域と低温域(領域B及びC)
北海道の南の海上に目を移しましょう。PALSARの電波の入射角は画像の左から右にかけて大きくなります(左端は18°、右端は43°)。右に行くほど暗くなるのは海面の反射係数が徐々に小さくなるからで、いわば当たり前です。しかし、いずれも左端なのにB域は白く、C域は黒く見えます。
図3 AMSR-Eによる2006年4月19日の三陸沖の海面水温
図3は改良型高性能マイクロ波放射計AMSR-Eによる翌日の海面水温を示しており、領域Bは海面水温が高く、領域Cでは海面水温が低いことが分かります。海面水温が大気温度よりも高ければ、海面からの熱移動を最大にすべく表面積が広くなって海面が荒れ、結果として白く(反射係数が大きく)見えます。一方、海面水温が低ければ(そして大気温度と差がなければ)、海面と大気のエネルギー授受はなく、海面は滑らかとなります。そして反射係数は小さく結果として暗く見えます。PALSARのSN(信号対雑音比率)はこれまで以上に高く、海面の観測に適しています。


フロント(領域D)
ここでは何らかの境目が明瞭に確認できます。このような境目ができる要因としては、波の分布の差、海面水温の差などが考えられますが、まだよく分かっていません。


船舶(領域E)
図4 PALSARが捉えた船舶
さらに南に目を移してみましょう。図4は領域Eの拡大図です。海面上に、白い点が3つ確認できます。これらは海上を航行する船舶です。画像分解能が70 mであることから、かなり大きな船舶でしょう。この分解能では船舶の起こす波は見られず、進行方向までは確認できませんが、人工衛星からの船舶のモニターは、海上交通の安全監視にとって重要です。


陸域(領域F)
図5 北海道東部
最後に北海道東部の画像を見てみましょう。図5は領域Fの拡大図です。陸上の特徴が細かく捉えられます。根釧台地(原野)の格子状の構造は、この地方の特徴である防風林です。能取湖(のとろこ)、屈斜路湖(くっしゃろこ)では氷が解け、暗く見えていますが、摩周湖の湖面は灰色に見え、まだ氷が残っていることが分かります。



*1 スキャンサー・モードとはPALSARの観測モードの一つで、電波の照射方向を瞬時に切り替えて、観測領域を従来のSARより広げるものです。PALSARの標準的な観測幅は70 kmですが、このモードでは一度にその5倍の350 kmが観測できます。ビームを振る分、特定の場所へのエネルギー量は減り、信号品質は下がります(信号対雑音比(SN)が劣化します)が、観測幅の制限を取り除く観測モードです。レンジ方向(衛星進行方向と直交する方向)の分解能は従来通り20 m程度と変わりませんが、アジマス方向(衛星進行方向)は70 m程度と粗くなります。観測幅が広くなるため、各種観測、特に環境モニターに非常に有効となります。なお、本図は100 m単位で等緯度経度座標系に投影しています。

観測画像について:
(図1、図4及び図5)
観測衛星: 陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)
観測センサ: フェーズドアレイ方式Lバンド合成開口レーダ(PALSAR)
観測日時: 2006年4月18日午後9時40分頃(日本標準時)
観測周波数: 1,270 MHz (Lバンド)
地上分解能
(スキャンサー・モード):
20 m (衛星進行方向と直交する方向) ×70 m (衛星進行方向)
地図投影法: 等緯度経度図法
PALSARは、地球資源衛星1(ふよう1号)に搭載された合成開口レーダ(SAR)の機能・性能を更に向上させたもので、天候、昼夜に影響されない能動型のマイクロ波センサです。PALSARは観測方向を可変する機能や広い観測幅を有する観測モード(ScanSAR)を持っています。なお、PALSARの開発は宇宙航空研究開発機構と経済産業省(METI)/(財)資源探査用観測システム研究開発機構(JAROS)の共同で行いました。


(図3)
観測衛星: 地球観測衛星Aqua (NASA)
観測センサ: 改良型高性能マイクロ波放射計AMSR-E (JAXA)
観測日時: 2006年4月19日
AMSR-Eのプロダクトおよびアルゴリズムについては こちらをご覧ください。

関連サイト:
(JAXAプレスリリース)
陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)によるインドネシア・ジャワ島中部地震被災地の観測について(JAXAプレスリリース)
陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)によるタイ王国北部の洪水の観測について(JAXAプレスリリース)
陸域観測技術衛星「だいち」の初期校正運用段階への移行について(JAXAプレスリリース)
陸域観測技術衛星「だいち」搭載フェーズドアレイ方式Lバンド合成開口レーダ(PALSAR)が観測したレイテ島画像の提供について(JAXAプレスリリース)

(地球観測研究センター(EORC)ホームページ)
ALOS 解析研究ページ
JERS-1 SAR 全球森林マッピング (GRFM/GBFM) プログラム
道東の冬景色:流氷と格子状防風林
地球が見える 北極・南極

本文ここまで。
画像:人工衛星の情報を掲載 サテライトナビゲーター
画像:衛星利用の情報を発信 衛星利用推進サイト
画像:衛星から見た地球のデータ集
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