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地球が見える 2005年

TRMMで観測した2005年のハリケーン

図1 a) 2004年とb) 2005年のハリケーンの経路図
今年も12月になり、北西太平洋の台風シーズン及び北大西洋のハリケーン・シーズンがほぼ終わりました。2005年の北大西洋では例年に比べるとかなり多いハリケーン(*1)が発生しました。最大風速64ノット(32.6 m/s)以上であるハリケーンの今年の発生数は12月2日に発達したイプシロンで14個となり、これまでの記録だった1969年の12個を上回りました。また12月になってからのハリケーンの発生も異例のことです。最大風速34ノット(17.3m/s)以上の熱帯低気圧に対しては各地域で名前が付けられますが、今年は用意していた21個の名前を使い果たし、それ以後はギリシャ文字の名前が付けられており、上記のイプシロンは熱帯低気圧としては今年26個目となりました。さらに今年のハリケーンの特徴として、数が多いだけでなく、例年より勢力が発達したのが特徴です。これまでの最低中心気圧の記録を更新(882 hPa)したハリケーン「ウィルマ」を始めとして、3つのハリケーンがこれまでの観測史上でベスト10に入りました。図1は北大西洋における2004年と2005年の熱帯低気圧の経路図を示しています。昨年もハリケーンの被害が多く報告されていますが、今年はさらに数多くの熱帯低気圧が発生していることがわかります。

図2 ハリケーン「カトリーナ」のa) 高度2kmの降雨分布と雲画像、b) 降雨の立体画像
この中で特に8月23日から31日にかけて発生したハリケーン「カトリーナ」により、米国南部で甚大な被害が発生しました。特にルイジアナ州ニューオーリンズでは、堤防が決壊し、市の8割が水没、千人以上の死者が出たほか、100万人以上の人が避難を余儀なくされました。カトリーナは最盛期で最大風速が78m/s、最低気圧が902hPaと猛烈に発達しました。図2は熱帯降雨観測衛星(TRMM)の降雨レーダ(PR)が捉えた2005年8月28日3時25分(世界標準時)のカトリーナの様子です。カトリーナはこのとき急速に発達している時間に当たり、この数時間後には米国海洋大気庁(NOAA)の分類で最高の「カテゴリー5」(*2)に発達しました。高度2kmの断面図と可視赤外観測装置(VIRS)による雲画像(図2a)を見ると、ちょうどPRの観測範囲の端にハリケーンの目があり、そのすぐ外側の壁雲と、その周りに赤で示される線状の非常に強い降雨域が、同心円状に幾筋もあることがわかります。この立体構造(図2b)を見ると、それぞれの線状降雨域が狭い領域で高い高度(最大15km)にまで発達している様子がわかります。この様子は発達期から最盛期の熱帯低気圧に特徴的なものです。

図3 TRMM/VIRSによるa) 2004年9月の海面水温、b) 2005年9月の海面水温
今年のハリケーンの勢力が強く、発生数も多かったのは、この海域の海面水温が平年よりも高かったことが一因です。図3aと図3bの上段は月平均の海面水温を、下段は月平均の海面水温と平年値との差を示しています。右上の西インド諸島の周辺、すなわちメキシコ湾、カリブ海から大西洋にかけての部分を比べると、上段の図ではあまり差は見られませんが、下段の図では、2004年9月は水色に見えていますが、2005年9月は黄色っぽく見えていて、2005年9月の方が2℃くらい海面水温が高いことが分かります。
地球の温暖化が進むと、降水量の変動量が大きくなり、台風やハリケーンなどによる豪雨や干ばつなどによる被害が増加すると言われています。まだ昨年(2004年)の日本での降雨災害頻発や、今年(2005年)のハリケーン被害が温暖化の影響とは言い切れませんが、このような降水量の全球観測を長期間継続して続けていくことが重要です。

TRMMは昨年一旦運用停止が決まっていましたが、今年9月に2009年9月30日までの運用継続が決まりました。TRMMは今後もこのような世界中の気象災害を観測し続け、価値あるデータを取得していきます。



(*1)太平洋北中部・太平洋北東部・大西洋北部で発生した熱帯低気圧のうち、最大風速が64ノット以上のものを「ハリケーン」と呼びます。熱帯低気圧の分類については、こちらをご覧ください。

(*2) ハリケーンを強度によってカテゴリ1〜カテゴリ5の5段階に分けたもので、ハリケーンのもたらしうる被害の大きさの指標として、米国などでよく用いられています。各カテゴリーは、こちら(シンプソンのスケール)をご覧ください。

参考資料:
台風の統計資料」気象庁ホームページより
「測定が始められて以来の最も強烈な大西洋ハリケーン上位10位」ウィキペディア「ハリケーン・カトリーナ」より

観測画像について:
観測衛星: 熱帯降雨観測衛星(TRMM)*3
観測センサ: 降雨レーダ(PR)可視赤外観測装置(VIRS)
観測日時: 2005年8月28日3時25分(世界標準時)(図2)
2004年9月(図3 a)
2005年9月(図3 b)

*3 TRMMは、NASA, NICT及びJAXAの共同プロジェクトです。

関連サイト:
JAXA/EORC台風データベース
TRMM/VIRSによる海面水温
TRMM台風速報
TRMMギャラリー
AMSR-E台風速報
AMSR-E 今日の一枚


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画像:衛星利用の情報を発信 衛星利用推進サイト
画像:衛星から見た地球のデータ集
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