地球が見える 2004年
TRMM/ PRによる台風21号の詳細構造:台風22号にも要注意
台風21号(メアリー)は9月29日午前8時半頃、鹿児島県串木野付近に上陸した後、日本列島を縦断、死者・行方不明者27人と、各地に深刻な傷跡を残していきました。特に三重県中・南部では、1時間に130mmを超える猛烈な降雨となりました。この地域では降り始めからの降水量が900mmを超え、その他四国や近畿地方で400mmを超える降水量を記録しました。この豪雨は台風本体による降雨に加え、台風の前面で元々停滞していた秋雨前線に南から暖かく湿った空気が入り込んだ上に、日本の東海上の高気圧からの東風が加わり、前線の活動が活発になったことにより引き起こされました。 図 1 は 9月29日日本時間 18時30分頃に、熱帯降雨観測衛星( TRMM )搭載の降雨レーダ( PR )と、気象衛星 GOES (ゴーズ)9号が、台風21号の雨と雲の様子をとらえた画像です。降雨レーダは地上のみならず上空の雨も観測することができる装置です。水色〜黄〜赤の部分は降雨レーダが観測した雨の強さをあらわしていますが、この図では上空約 3km の高さにおける雨の強さを示しています。台風は上陸してから、陸上を移動して、かなり衰えているため、形としてはかなり崩れていますが、まだ強い降雨域を伴っています。特に中心に近い淡路島や兵庫県地方上空には、赤で示された非常に強い降雨が観測されています。図2は図1の線A-Bに沿った降雨の立体画像と、その断面の雨の強さをあらわしたものです。この断面は淡路島上空に合わせて切ったもので、ここに集中して強い降雨があることがわかります。降雨の高さは12kmと他の台風と比較して非常に高いと言うわけではありませんが、このとき淡路島では1時間に100mmを超える豪雨を観測しました。
図3はその約1時間半後に当たる20時頃のPRの水平画像とGOESの雲画像です。このとき台風の中心は琵琶湖付近に移動しており、これに伴い台風本体の雨雲も北に移動しています。これとは別に三重県中部にも強い降雨域があることがわかります。図4は図3の線C-Dに沿った降雨の立体画像と、その断面の雨の強さをあらわしたもので、断面は三重県上空に合わせて切ったものです。この降雨域は尾鷲に130mm降らせた雨雲とは別のものですが、それでも紀伊山地に上がる斜面上に、強い降雨域があることがわかります。このように台風接近時には、四国や紀伊半島の山地の南東斜面で、南東側から暖かく湿った空気が、地形により強制的に上昇させられることにより、強い降雨がもたらされることがよくあります。
今週もまた、台風22号(マーゴン)が近づきつつあります。図5は10月7日10時46分(日本時間)にアメリカの地球観測衛星Terraに搭載されたMODISによって観測された台風22号の画像です。中心の周りのしっかりとした渦巻きが見えています。また、水色は高層の氷でできた雲を表していますが、台風22号に伴う雲が全体的に高層まで良く発達していることが分かります。 図6は10月8日2時6分(日本時間)のAMSR-Eの準リアルタイム観測画像で、台風の目をはっきりと捉えています。海面上の青色が濃い部分は大気中の多量の水蒸気を表わし、また、黄色い部分は、発達した雲を表わしており、台風の北東側と中心の周りで強い雨が降っていることが推測されます。 現在のところ週末にかけて今年9個目の台風として上陸し、日本列島を縦断すると予報されています。台風21号では、浸水や土砂災害で多くの被害が出ました。22号で地盤のゆるんでいる地域もありますから、新たな土砂災害に対して、厳重な警戒が必要となります。
関連サイト: 台風21号、今年8個目の上陸:日本本土への年間上陸数の記録更新 TRMM台風データベース TRMM台風速報 AMSR-E台風速報 AMSR-E「今日の一枚」 MODIS「準リアルタイム画像」 (左側の窓の中で、TRICまたはEOC→1km→RcReflと進んでください。) |