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陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)によるパキスタン集中豪雨被害の観測結果(6)
中央アジアのパキスタン北部において、2010年7月29日から起きた集中豪雨により洪水などの被害が発生しました。宇宙航空研究開発機構(JAXA)では、2010年8月3日、8月5日、8月6日、8月15日、8月23日に緊急観測を行った地域の継続調査として、9月1日15時0分頃(日本時間)に陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)搭載の高性能可視近赤外放射計2型(アブニール・ツー)*により現地の観測を実施しました。
図1は今回観測した画像全体の様子を示したもので、アブニール・ツーのバンド3, 2, 1を合成したトゥルーカラー合成画像で表示しており人の目で見た色に近くなっています。河川の大規模な増水や農耕地が広範囲に渡って冠水している様子を確認することができました。拡大画像
図2はChund Bharwana付近(首都イスラマバードから南南西約240km)において、災害後の2010年9月1日、2010年8月15日および災害前の2009年10月14日に観測された画像から、冠水している箇所を拡大したものです。アブニール・ツーのバンド4, 3, 2を合成したフォールスカラー画像で表示しており、植生(赤色)と冠水域(明るい灰色)が明瞭に区別できます。
図3は災害後の2010年9月1日、2010年8月6日および災害前の2009年10月14日に観測された画像から冠水している箇所を拡大したもので、Alhara Hazar(首都イスラマバードから南南西約260km)付近です。
図2および図3の災害後2010年8月と2010年9月1日に観測された画像を比較すると、冠水している範囲に大きな変化はないことが分かります。図4はGhazi付近において、災害後の2010年9月1日と災害前の2009年10月14日に観測された画像から、河川が増水している箇所を拡大したものです。
図5は災害後の2010年9月1日と災害前の2009年10月14日に観測された画像から、Multanから約15km北に位置する河川の冠水している箇所を拡大したものです。
図4および図5の位置は南北方向に約400km離れていますが、どちらの拡大画像でも河川の大幅な増水が認められることから、いまだ広い範囲に渡って冠水被害があると考えられます。被災地の復興には時間がかかると思われます。なお、JAXAでは今後も当該地域を継続して観測する予定です。
*1 高性能可視近赤外放射計2型(アブニール・ツー):
青域から近赤外域の電磁波を4つのバンドで観測することができる光学センサで、衛星直下を観測の際には幅70kmの範囲を地上10mで識別できる能力があります。また、東西44度まで観測範囲を変更することができるポインティング機能を有しています。今回の画像は0度で取得しました。なお2009年10月14日、2010年8月6日と8月15日の画像は、それぞれ0度、東方向に38度、0度で取得しました。