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地球が見える

2009年7月2日掲載


 

クレムリンから広がった街、モスクワ


 
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図1 モスクワ市周辺

 図1はロシア連邦の首都モスクワ市街です。図の下半分をモスクワ川が黒く蛇行しているのが見えます。左が上流、右が下流で、やがてヴォルガ川に合流してカスピ海に流れ込みます。毎年11月から12月にかけて凍り、3月下旬から融け始めます(図は夏の画像です)。
 1147年、ウラジーミル公ユーリー・ドルゴルーキーがこの地で会合を開いたのが首都モスクワの始まりと記録されており、既に860年を超えています。その後、サンクト・ペテルブルクに遷都したりもしましたが、1918年にロシア革命によって再びモスクワは首都となりました。1991年のソビエト連邦の崩壊後、モスクワは首都であると同時に、ロシア連邦を構成するひとつの連邦市として、政治、経済、文化の中心として発展を続けています。
 画像中心部、モスクワ川沿いの緑で囲まれた三角形に見えるのがクレムリンです。街がクレムリンを中心に拡がっている様が、クレムリンから放射状に延びる主要道路と、それらを繋ぐ環状道路から見て取れます。この画像では、ほぼ円形に見えるサドーヴァヤ環状道路が目立っています。その外側には第3環状道路がありますが、これは1980年代までのモスクワ市境界線上に作られた延長35 kmの道路です。

 クレムリンの北約3.5 kmに位置する南北に2つ並んだ白いドーム状の建物は、ロシア最大の屋内競技場、オリンピック・スタジアムです。また、クレムリンの南西約5.5 kmの白い楕円形は収容人員10万人を超えるルジニキ・スタジアムです。かつては、レーニン・スタジアムと呼ばれ、1980年モスクワオリンピックのメイン会場として使用されました。現在はサッカーの試合で利用されることが多く、2008年5月にはUEFAチャンピオンズリーグ 2007-08の決勝戦が開催されました。 2013年には世界陸上モスクワ大会のメイン会場として使用される予定です。 

 画像下部のモスクワ川右岸は、コローメンスコエという史跡公園・自然保護地域となっています。かつては、イワン雷帝やピョートル大帝など、歴代皇帝の別荘地でした。ここには1532年に建てられたヴァズネセーニエ教会があります。ロシア国内に現存する最古の石造りの建造物で、1994年に「コローメンスコエの主の昇天教会」として、国際連合教育科学文化機関 (UNESCO)の世界文化遺産に登録されました。

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図2 モスクワ市街
(Google Earthで見るモスクワ(kmz形式、1.72MB、低解像度版))

 モスクワ市街を拡大すると、サドーヴァヤ環状道路の内側に、所々、緑地帯となっているブリヴァール環状道路が見えます。
 クレムリンの東側に位置する白い四角はホテル・ロシアの跡地です。ホテル・ロシアは1964年から1968年にかけて建設された床面積約4 haの巨大ホテルでしたが、2005年末で営業を停止し、翌3月には2500席の国立中央コンサートホールを除いて解体され、新たな娯楽複合施設が建設されることになっています。

 クレムリンの真西、約5 kmのモスクワ川左岸の第3環状道路内側では、モスクワ国際ビジネスセンター、または、モスクワ・シティと呼ばれる都市再開発プロジェクトが進められており、高いビルがもたらす黒く長い影が多数見えています。しかし、2007年9月に着工した高さ612 mを超える118階建ての超高層ビルのロシア・タワーは、ドバイのブルジュ・ドバイに次いで世界で2番目に高いビルとなる予定でしたが、2008年11月に金融危機により工事が凍結されました。

 ルジニキ・スタジアムとは川を隔てた雀が丘と呼ばれる高台の緑の中で、モスクワ大学本棟がモスクワ市街を見下ろすように建っています。また、日本各地で何度も開催されるボリショイサーカスの本拠地がその近くにあります。

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図3 クレムリンと赤の広場周辺

 図3はクレムリンと赤の広場周辺を拡大した画像です。ロシア語で「城塞」を意味するクレムリンは多くの都市に存在しますが、中でも有名かつ最大なのがモスクワのクレムリンです。城壁の周囲は2 kmを越えています。内部にはロシア連邦大統領府をはじめとする政治の中枢機関があるほか、大クレムリン宮殿やウスペンスキー大聖堂など、中世ロシアの美の粋を集めた建物が数多くあります。かつては、帝政ロシアの王朝府、ロシア革命後はソビエト最高会議場として用いられ、ソビエト政権の代名詞となった建造物です。

 赤の広場は、クレムリン北東の壁の外側にあります。かつて、ソ連を象徴する映像が世界に発信されたところで、「赤」という形容詞は古いロシア語で「美しい」を意味します。広場周辺には「ねぎ坊主」のような形の色鮮やかな屋根の塔が並ぶ聖ワシーリー聖堂、赤レンガでできた国立歴史民俗博物館、レーニン廟、国立のグム百貨店などがあり、観光客でいつもにぎわっています。
 「モスクワのクレムリンと赤の広場」は1990年に国際連合教育科学文化機関 (UNESCO)の世界文化遺産に登録されました。

 クレムリンの南西、モスクワ川沿いには、金色に輝く円形ドームを載せた高さ103 mの救世主キリスト大聖堂が見えます。この聖堂は44年もの歳月をかけて1883年に完成しましたが、1931年にスターリンによって爆破されました。その後、新生ロシアの象徴として1997年のモスクワ建都850年の目玉として再建事業が始まり、1999年になって完成したものです。
 また、バレエやオペラの公演で有名なボリショイ劇場もクレムリンから程近いところにありますが、工事中のため、現在は6,000人を収容できる国立クレムリン宮殿にて上演されています。

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図4 全体画像

 図4は全体画像です。白く点在する雲に加えて薄雲がかかっていますが、モスクワ市を囲む大環状道路やシェレメーチエヴォ国際空港が見えています。大環状道路は、1961年に作られた延長109 kmのアスファルト舗装自動車道です。シェレメーチエヴォ国際空港は乗客数と取り扱い貨物数において、ロシアで2番目に大きな空港で、アエロフロート・ロシア航空のハブ空港です。

 モスクワ周辺には宇宙関連施設がいくつかあります。この図では、ロシアの宇宙飛行士の多くが家族と共に住んでいる「星の街」が見えます。ここには1960年代から宇宙飛行士が訓練を受けていたガガーリン宇宙飛行士訓練センター (GCTC) があり、ソビエト時代には、厳重に警備された地域で、他の世界からは隔離されていました。今では一部が開放され、宇宙博物館などが見学可能です。
 なお、図1では、1999年に日本人宇宙飛行士が国際宇宙ステーション(ISS)への搭乗に備えて、長期閉鎖実験に参加した施設である生物医学問題研究所とプロトンロケット製造のクルニチェフ宇宙センターが見えています。



観測画像について

観測衛星: 陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)
観測センサ: 高性能可視近赤外放射計2 型(AVNIR-2)(図1〜4)
パンクロマチック立体視センサ(PRISM)(図1〜3)
観測日時: 2008年7月8日08時45分頃(世界標準時) (AVNIR-2)
2007年9月19日08時46分頃(世界標準時) (PRISM)
地上分解能: 10 m(AVNIR-2)および2.5 m(PRISM)
地図投影法: UTM(ユニバーサル横メルカトール)

 (図1〜4)
 AVNIR-2 は4つのバンドで地上を観測します。図はいずれも可視域のバンド3(610 〜 690ナノメートル)、バンド2(520〜600 ナノメートル)、バンド1(420〜500ナノメートル)を赤、緑、青に割り当てカラー合成しました。通常と異なって、緑にバンド2の値×90%とバンド4(760〜890ナノメートル)の値×10%の和を割り当てるという工夫をしたので、植生の分布が見やすくなっています。この組合せでは、肉眼で見たのと同じ色合いとなり、次のように見えています。

緑色: 森林
明緑色: 草地、農地
灰色: 市街地
白色: 建物、雲
茶色: 裸地
青みがかった黒: 水域

(図1〜3)
 PRISMは地表を520〜770 ナノメートル(10億分の1メートル)の可視域から近赤外域の1バンドで観測する光学センサです。得られる画像は白黒画像です。前方、直下、後方の観測を同時に行いますが、ここでは直下視の画像を使っています。
 AVNIR-2の、バンド3 (610〜690ナノメートル)、バンド2 (520〜600ナノメートル)とバンド1 (420〜500ナノメートル)を赤、緑、青色に割り当てカラー合成したAVNIR-2画像を「色相(Hue)」、「彩度(Saturation)」、「明度(Intensity)」に変換(HSI変換)し、明度をPRISM画像で置き換えて再合成することで見かけ上、地上分解能2.5 mのカラー画像を作成することができます。図1〜3はこのように高分解能の白黒画像と低分解能のカラー画像を組み合わせて合成された高分解能のカラー画像、つまりパンシャープン画像です。

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