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2007年8月1日掲載


  千年にわたり作り上げた水の都、ヴェネツィア

 
図1 ヴェネツィア周辺画像
 図1は2007年6月に観測したイタリア北部ヴェネツィア(英語ではベニス)周辺の画像です。長靴の形をしたイタリア半島の付け根の東側にあたります。画像の右下がアドリア海の最奥部、左上の深い緑はアルプス山脈へつながる山地です。ヴェネツィアの土地は大陸からの川の流れによって運ばれた土砂とアドリア海の波と風の力によって作られた潟(ラグーナ)の上に作られたものです。ラグーナからアドリア海への出入口が3ヶ所見られますが、一番北の口の西側に茶色く見えているのがヴェネツィアです。

図2 ヴェネツィア周辺拡大画像
 ヴェネツィアを中心にさらに拡大してみると(図2)、大陸とは橋で結ばれているのがよく分かります。以前は大陸沿岸を走るオリエント急行が止まったメストレ駅から枝分かれした線路が海に突き出し、リベルタ橋を渡って10分ほどでヴェネツィアへ至ります。画像上部に見えるマルコ・ポーロ空港からはバスまたは水上バスでヴェネツィアへ渡れます。水上バスは浅い潟を浚渫(しゅんせつ)した水路を通るため、画像で白い航跡があたかも海の道のように見えています。
 メストレ駅の南にはマルゲーラの工業地帯が広がり、白く見えています。ここはイタリア最大の工業港の一つとなっています。その南側の緑深いところは葦(あし)が海面に出たラグーナです。空港の東側にもラグーナが広がりを見せているのが分かります。そのなかのトルッチェロ島は6世紀、蛮族に追われたヴェネト人が、アドリア海に面した葦の生い茂る湿地に逃げ込み、暮らし始めたところです。9世紀はじめには現在のヴェネツィア本島へ更なる避難をすることとなりました。ラグーナは自然の要塞であり、人々は無数の杭を打ち込んで家を建て、天然の水路を活かして運河にしました。ヴェネツィアの街は118の島を400もの橋と迷路のような運河でつなぎ海に浮かんでいます。
 ここを中心として、726年に東ローマ帝国から自治権を獲得したヴェネツィア共和国は、以来、国家元首(ドージェ)によって統治され、1797年のナポレオン侵攻により崩壊させられるまでの間、強大な海軍力と交易による富を背景に「アドリア海の女王」として君臨していました。「東方見聞録」を口述したマルコ・ポーロの生家はヴェネツィアにあります。
 ヴェネツィアは中世の昔から、馬や車を締め出して、交通手段は人間の足と船だけですが、南にある細長い島リード島は、ドイツの作家トーマス・マンの小説「ベニスに死す」の舞台であり、この島では車も自転車も通行できるようになっています。

図3 ヴェネツィア拡大画像
(Google Earthで見るヴェネツィア (kmz形式、1.31MB、低解像度版))
 図3は人々が1000年にわたり作り上げた人工美の極致、ヴェネツィアを拡大したものです。リベルタ橋を渡ったところがサンタ・ルチア駅です。その南西部に位置する港には大きな船が4隻停泊しているのが見てとれます。橋を渡った車はこのあたりまでしか来ることができず、駐車場専用の島が作られています。駅からヴェネツィアの真ん中を逆S字状に掘ってある大運河を出たところに白く見えているのが、サン・マルコ寺院、ドゥカーレ宮殿と、隣接するサン・マルコ広場です。観光スポットとして有名なリアルト橋、サン・ポーロ広場、サンタ・マリア・デッラ・サルーテ教会、サン・ジョルジョ・マッジョーレ教会も画像で見えています。ヴェネツィアの北には墓地だけの島、サン・ミケーレ島とヴェネツィアングラスで有名なムラーノ島も見えます。元は本島にあったガラス工場が火災を起こすことが多かったため、一つの島に移したもので、それが伝統工芸を護り抜く結果となったと言われています。

図4 PALSARによって観測されたレーダ画像
 図4は2007年1月にPALSAR*によって観測されたレーダ画像です。図3とほぼ同じ場所を見ています。リベルタ橋の橋脚からの反射が白く点々と連なっているのが見えています。リベルタ橋の北側やムラーノ島とヴェネツィア本島との間に見られる白い点々の連なり、ムラーノ島から空港の方向に等間隔で連なる白い点線上に見えるのは水路に沿って立てられた澪標(みおつくし)です。図3では行き交う船の航跡によって水路が分かりますが、図4では杭自体の反射が白い点線のように見えています。観測したのが夜間のため、航行する船が少なかったのも功を奏したものと考えられます。

 国際連合教育科学文化機関 (UNESCO)の世界遺産としての登録基準には文化遺産が6区分、自然遺産が4区分ありますが、「ヴェネツィアとその潟」は1987年に、文化遺産の登録基準すべてを満たす唯一の世界遺産として登録されました。



* 「だいち」に搭載されたフェーズドアレイ方式Lバンド合成開口レーダ(PALSAR)

観測画像について:
(図1〜図3)
観測衛星: 陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)
観測センサ: 高性能可視近赤外放射計2 型(AVNIR-2)
観測日時: 2007年6月9日10時15分頃 (世界標準時)
地上分解能: 10m
地図投影法: UTM(ユニバーサル横メルカトール)
 AVNIR-2は、4つのバンドで地上を観測します。図1及び図2は、いずれも可視域のバンド3 (610〜690ナノメートル)、バンド2(520〜600ナノメートル)とバンド1 (420〜500ナノメートル)を赤、緑、青に割り当てカラー合成しました。この組合せでは、肉眼で見たのと同じ色合いとなり、次のように見えています。
暗緑色: 森林
明緑色: 草地、農地
青っぽい灰色: 市街地、道路
赤: 赤煉瓦の建物
青: 水域

(図4)
観測衛星: 陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)
観測センサ: フェーズドアレイ方式Lバンド合成開口レーダ(PALSAR)
観測日時: 2007年1月15日午前21時32分頃(世界標準時)
地上分解能: 10m
地図投影法: UTM(ユニバーサル横メルカトール)
 PALSARは天候、昼夜に影響されない能動型のマイクロ波センサです。PALSARは観測方向を変更する機能やより広い観測幅の観測モード(ScanSAR)を持っています。

関連サイト:
ALOS 解析研究ページ
北西イタリア、トリノの街をクローズアップ
地球が見える 陸地・地形
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