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2005年11月25日掲載


  縮小が進む北極海の海氷−2005年は観測史上、最小−

   北極海の夏の海氷面積はここ数年減少を続けています(「犬ぞりで行けなくなる?北極点 〜減少を続ける北極海氷〜」参照)が、この夏は昨年の夏よりも一段と縮小して、観測史上最小となり、縮小傾向が依然として続いていることがAMSR-Eの観測によりわかりました。

図1 過去4年間の9月の北極海の海氷分布
 毎年9月は北極海の海氷の面積が最小となる月ですが、図1は、AMSR-Eの観測により捉えられた過去4年間の9月の北極海の様子を左から順に並べたものです。赤い線は過去の9月の海氷の端の平均値(*1)を示しています。その年によって、いろいろな変化が見られますが、いずれの年も海氷面積が過去の平均値よりも縮小していることが分かります。今年は去年よりも一層減少しており、特に図の上の方のロシア側の海氷が大幅に減って、海面が大きく広がっていることがわかります。

 北極海の海氷の衛星観測が行われるようになったのは1978年のことで、1980年ころの毎年9月の北極海の海氷面積は750万km2前後でしたが、その後、年ごとに多少増減しつつ、次第に減少し、昨年9月の約600万km2を経て、今年9月には約530万km2となり、観測史上、最小を記録しました。

 今年の海氷変化の特徴は、早い時期から減少が進み、そして減少が過去最も遅い時期(9月下旬)まで継続していることです。減少が今年特に早い大きな理由は、例年冬季に完全に回復する海氷が、今年は十分に回復していなかったことにあります。2004年12月以降、2005年5月を除き海氷面積は観測史上最低記録を更新し続けています。
 この現象は北極振動など従来の考えでは説明が難しく、地球温暖化の影響ではないかと考えられています。

 海氷は太陽光を強く反射するため温まりにくく、逆に海面は太陽光をよく吸収するため温まりやすいという性質があります。海氷の量が減少し海面面積が広がると、北極圏に吸収される熱が増えるため気温が上がり海氷はますます減少するようになります。北極圏の過去10年間の平均気温は過去50年の平均気温に比べて2〜3℃上昇しており、2002年以降アラスカやシベリアでは雪解けが2〜3週間も早くなっていることが観測され、海氷の減少とともに気候や生態系に与える影響が懸念されています。

 JAXAでは衛星観測を通じこれからも気候変動に関わる現象について報告していきます。



(*1)海氷の端の平均値
 ここでは1988年から2000年の平均値を示しています。1988年から2000年の9月の月平均データは13回あり、ある画素でこれらをカウントしていって半数以上が海氷あり(密接度で15%を超えていることを示す)の場合に、その画素では海氷が存在すると判断しています。海氷端の線は、これらの海氷範囲図の一番外側を取ったものです。
 また、海氷面積は、海氷がある各画素の面積(標準的には625km2)を合計して求めています。なお、北極点付近は観測できませんが、海氷があるとして計算されています。

参照サイト:
NASA地球観測・環境サイト(英語)
米国国立雪氷データセンター・ニュース(英語)
米国国立雪氷データセンター・解説ページ(英語)

観測画像について:
(図1)
観測衛星: 地球観測衛星Aqua(NASA)
観測センサ: 改良型高性能マイクロ波放射計 AMSR-E (JAXA)
観測日時: 2002年9月、2003年9月、2004年9月、2005年9月
 いずれもAMSR-Eの6つの周波数帯のうち、36.5 GHz帯の水平・垂直両偏波と18.7 GHz帯の水平・垂直両偏波のデータを元に、AMSR/AMSR-Eのアルゴリズム開発共同研究者(PI)であるNASAゴダード宇宙飛行センターの Josefino C. Comiso博士のアルゴリズムを用いて算出された海氷密接度を表しています。図1のデータの空間分解能は25 kmです。

関連サイト:
犬ぞりで行けなくなる?北極点 〜減少を続ける北極海氷〜
北半球の素顔−大地と海氷と海底−
地球が見える 北極・南極のページ
AMSR/AMSR-Eページ

付録:北極振動と海氷
 北極の海氷の増減には数年からそれ以上の周期で変動する北極の周囲を巡る西風の強さの変化(北極振動)が影響することが知られており、西風が強まると海氷は減少する傾向があります。
 1990年代の減少については当時西風が強い時期に当たっていたことから北極振動の影響ではないかと考えられていましたが、現在は西風がさほど強くない時期にあたるため、北極振動だけではここ数年の海氷の減少を説明できなくなっています。
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