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2004年12月2日掲載


  AMSR-Eによるエルニーニョウォッチページの公開を開始

 
図1 AMSR-E で観測した海面水温分布
(2004年11月27日〜12月1日までの5日間平均)

 図1において、赤道を中心に南北緯20度以内に拡がっている赤いところは海面水温が高く(最高32℃)、青いところは海面水温が低い(最低12℃)ことを表しています。この画像はNASAの地球観測衛星Aquaに搭載されているJAXAの改良型高性能マイクロ波放射計AMSR-E(*1)による観測で、ここでは太平洋とインド洋の赤道域の海面水温分布を示していますが、このように衛星からの観測は地球上の広い範囲に現れる大規模な現象を捉えるのに好適です。AMSR-Eの観測データは異常気象との関連が深いと言われるエルニーニョ現象を捉えるためにも役立っています。

図2 AMSR-E による海面水温平年偏差分布
(2004年11月27日〜12月1日までの5日間平均)

 図2は、図1の観測値と同時期の平年値(過去30年間の平均値)との偏差を示したもので、この観測を行った2004年11月末においては、東太平洋の赤道付近(図中の四角い枠内の部分)で偏差の大きさは-2℃〜+2℃程度(平年並み)であることがわかります。この四角い枠の部分は北緯4度と南緯4度、西経150度と西経90度で囲まれた海域で、気象庁はこの海域の海面水温と平年値との偏差値を5ヵ月移動平均して、半年以上連続して0.5℃以上高くなっていると「エルニーニョ」と定義しています(逆に、0.5℃以上低くなることを「ラニーニャ」と定義しています)。

図3 エルニーニョ監視海域における海面水温平年偏差の時系列変化
(2002年7月〜2004年11月のAMSR-Eの観測データを使って作成)

 図3を見ると、2002年夏から2003年春にかけて発生した21世紀最初のエルニーニョ現象の期間において、観測値の平年値に対する偏差が大きくプラス側(赤い領域)になっていることがわかります。

宇宙航空研究開発機構(JAXA)地球観測研究センター(EORC)では、今後も海面水温の変化を衛星から観測しエルニーニョ現象などの気候変化を見守っていきます。最新情報については、エルニーニョウォッチページ“El Niño Watch” をご覧ください。



(*1) AMSR-Eは、地表や大気から自然に放射される微弱な電波(マイクロ波)を複数の周波数帯で高精度に観測し、地球の水に関する物理データを取得するマイクロ波センサです。マイクロ波センサは、光学センサと異なり、昼夜の別なく、また雲に影響されることなく常に観測を行うことができるため、海面の動向を継続的に監視することが可能です。

観測画像について
観測衛星: 地球観測衛星Aqua(NASA)
観測センサ: 改良型高性能マイクロ波放射計AMSR-E (JAXA)
観測日時: 2004年11月27日〜12月1日(図1及び図2)
2002年7月〜2004年11月(図3)
 AMSR-Eの観測データから算出された海面水温について、5日平均した画像です。

 AMSR-Eのプロダクトおよびアルゴリズムについては こちらをご覧ください。

関連サイト:
Aqua/AMSR-Eから見た2002/03エルニーニョ
エルニーニョに関する気象庁のページ

付録:エルニーニョ現象について
 地球の気候には数年またはもっと長い間隔で不規則に変化する要素があることが知られています。エルニーニョ現象は、そのような気候の年々変化に伴って現れる大規模な現象の一つです。この現象をエルニーニョと呼ぶわけは次のとおりです。

南米のペルーやエクアドル沖合いの太平洋は養分を含んだ南からの寒流が流れているため、豊かな漁場となっています。毎年12月になると季節変化で海面水温が上がり、魚が少なくなるのですが、何年かごとに極端に海水温が高くなり、魚が全く取れなくなることが起こります。現地の人たちは、この事象がクリスマスの頃に現れることからキリスト誕生になぞらえて「エルニーニョ」(スペイン語で、その男の子、つまりキリスト)と呼んできました。近年になって、地球全域についての長期的な気象観測データが得られるようになって、

○この海水温度上昇はペルー沿岸だけでなく、東太平洋の赤道付近一帯の広範囲の海域で発生する現象であること

○季節変化によるものとは別に、海面水温が平年よりも2〜3℃高くなり、その状態が一年程度維持されるという現象がこの海域で数年おきに発生していること、そして

○この海面水温上昇が発生している場合、気候が平年値からずれる現象、いわゆる異常気象が地球全域で発生すること

が、次第にわかってきました。現在では、この海面温度上昇(狭い意味でのエルニーニョ)を含んで関連する諸事象を指してエルニーニョ現象と呼んでいます。この海域では反対に海面温度が異常に下がることもあるわけで、その現象のことを研究者たちは「ラニーニャ」(女の子)と呼んでいます。

 一方、南太平洋の気圧配置の長期的なゆらぎについては以前から、西端にあたるオーストラリアのダーウィンの気圧が高くなると東側の中部太平洋のタヒチの気圧が低くなり、逆に西で低くなると東で高くなるというシーソー関係が発見されておりこれを南方振動と呼んでいました。この南方振動に伴って赤道付近の海面上の風系はダーウィンで気圧が高いとき西風、気圧が低いときは東風となります。東風のときは、東風に引きずられて赤道付近の海水は東から西に流れ、東端の南米大陸沖合いでは逃げていった海水を埋めるように、下層ないし大陸沿岸南側の冷たい海水が供給されます。東部太平洋で西風ないし無風のときは、冷たい海水の供給が断たれ、赤道直下の強い日差しのため海面水温は高くなります。これがエルニーニョが起こった状態です。

 このように、南方振動と海面水温の変動とは実は表裏一体のものであり、同一の現象をそれぞれ大気側、海洋側から捉えたものであるということがわかってきました。そのため、エルニーニョは南方振動と合わせてエルニーニョ・南方振動 ("El Niño - Southern Oscillation"の頭文字を取ってENSO:エンソ)と呼ばれることもあります。
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