ページの先頭です。
本文へジャンプする。
【重要なお知らせ】このページは過去に公開された情報のアーカイブページです。更新を終了しているため、リンク切れや古い情報が含まれている可能性があります。 最新情報については、新サイト Earth-graphy (earth.jaxa.jp) をご利用ください。
ここからサイト内共通メニューです。
サイト内共通メニューを読み飛ばす。
サイト内共通メニューここまで。
ここから本文です。

地球が見える 2006年

8,000m峰と氷河群(その5):ヒマラヤ、ナンガ・パルバット

図1 ナンガ・パルバット周辺
図1は地球資源衛星(JERS-1)に搭載された光学センサが捉えたヒマラヤ山脈の8,000 m峰の一つナンガ・パルバット(標高8,126 m)を含む山々です。世界第9位の標高をもつパキスタン・カシミール地区に位置するこの山は、周囲に高い山が無いことからサンスクリット語で「裸の山」と呼ばれました。また西側山麓の住民からはディアミール「山の王」と呼ばれています。氷河の侵食を受けた地形は険しく、南側のルパール壁は標高差が約4,500 mあり、世界屈指の登攀難壁です。初登頂までに数多くの犠牲者を出した山として有名で、登山家のあいだでは「魔の山」と呼ばれています。ナンガ・パルバットの北東約185 kmのところには世界第二の高峰K2(標高8,611 m)があり、K2を擁するカラコルム山脈が北西−南東方向に伸びています。チベット高原に源を発し、北西に流れるインダス川がカラコルム山脈とナンガ・パルバット山群を隔て、ナンガ・パルバットを巨大な独立峰にしています。

図2 図1中央の部分拡大図
(Google Earthで見るナンガ・パルバット (kmz形式、2.27MB、低解像度版))
図2は図1中央の部分拡大図で、白い部分は雪や氷で覆われた山頂付近です。南から照らす太陽の光が地形に陰影を与え、急峻な山頂は自身の影を左上方向にのばします。尾根はナンガ・パルバット山頂から北に向かってラキオト・ピーク(7,074 m)、チョンラ・ピーク(6,824 m)と続き、周囲にはいくつもの氷河が見られます。

ナンガ・パルバットには氷河に削られた3つの深い谷があります。その中の一つ、北のラキオト谷の中に松の森に囲まれたのどかな放牧地があります。ドイツ語で「妖精の草原」を意味するメルヘン・ヴィーゼ(英語名Fairy Meadows)と呼ばれ、その名の通りおとぎの世界のような美しい景色が広がるのどかな草原です。

図の左上に見えるインダス川の渓谷に沿って、世界でも有数の展望に恵まれた山岳道路カラコルム・ハイウェイが走っています。パキスタンのラワルピンディーと、中国の新疆ウイグル自治区カシュガルを結ぶ全長1,300 kmのハイウェイで、中国・パキスタン両国が協力し20年かけて1978年に開通しました。インダス川に沿った渓谷は深く、ほとんどが断崖絶壁で工事は難航を極めたそうです。パキスタンと中国を結ぶこのルートはパミールを越えるシルクロードの一つで、険路でありながらも古くからの主要交通路です。法顕や玄奘をはじめ多くの求法僧や隊商が通った道でもあります。ナンガ・パルバットを遠望すると、仏教の聖地インドへの入り口であるガンダーラはもう目の前です。



参考文献:
ヒマラヤ名峰事典、平凡社、1996年

観測画像について:
観測衛星: 地球資源衛星1号「ふよう1号」(JERS-1)
観測センサ: 可視近赤外放射計(VNIR)短波長赤外放射計(SWIR)
観測日時: 1993年9月27日午前5時58分頃(世界標準時)
地上分解能: 18.3 m×24.2 m
地図投影法: UTM(ユニバーサル横メルカトール)
近赤外域の760〜860 nm、可視域の630〜690 nm、520〜600 nmの各バンドに緑、赤、青色を割り当てているので、肉眼で見た色にほぼ近い色付けですが、植生の緑色がやや強調され、雪や氷が紫色がかって見える合成画像です。森林は濃い緑色に、草地は明るい緑色に、氷河は濃い赤紫色に見えます。また、山頂部については上記3バンドが飽和(まぶしくて目がくらんだ状態)していたため、飽和していない短波長赤外域の2.27〜2.40µmバンドのデータから灰色のモノクロ画像を作成して置き換えました。黒はデータが無いことを示しています。

関連サイト:
8,000m峰と氷河群(その4):K2、ブロード・ピーク、ガッシャーブルムI及びII
8,000m峰と氷河群(その3):ヒマラヤ、ダウラギリ
8,000m峰と氷河群(その2):ヒマラヤ、チョー・オユー
8,000m峰と氷河群:ヒマラヤ、シシャパンマ
地球が見える 陸地・地形のページ

付録:
ナンガ・パルバットの初登頂:
1895年以来、イギリス隊、ドイツ・アメリカ合同隊、ドイツ隊がナンガ・パルバットに挑戦しましたが、1953年、西ドイツ隊(K.ヘルリッヒコファー隊長ら10人)のH.ブールが16時間を超える厳しい登高のすえ初登頂に成功しました。日本人としては1983年に富山県山岳連名隊(木戸繁良隊長ら14人)のうちの2名が初登頂を果たしました。
本文ここまで。
画像:人工衛星の情報を掲載 サテライトナビゲーター
画像:衛星利用の情報を発信 衛星利用推進サイト
画像:衛星から見た地球のデータ集
画像:ページTOP