地球が見える 2014年
黒潮の蛇行
図1は米国の衛星Terraに搭載されたMODISにより観測された2013年5月9日と10月13日の日本近海の画像で、海面の温度を表しています。画像の灰色の部分は陸域、白い部分は雲で覆われた部分です。雲の合間から見える海面の温度をみると、日本の紀伊半島から東海沖で南側に比べて温度の低い部分があることがわかります。黒潮はこの低温の水塊の南側に沿って流れており、図の右では黒潮の流れが大きく蛇行していることが見てとれます。
図1 Terra/MODISによって観測された海面水温
(左)2013年5月9日蛇行始まり (右)2013年10月13日蛇行後 図2は図1と同じTerraに搭載されたMODISから2012年5月4日に観測された日本近海の画像です。図1と比べると紀伊半島沖から東海沖にかけて、南側に比べて水温の低い大きな塊は見られません。 黒潮は赤道の北側を西向きに流れる北赤道海流に起源をもつ海流で、ルソン島の東方域を源として北に向かい、台湾の東方を経て台湾と石垣島の間から沖縄トラフ域に入って東北に向かいます。さらにトカラ海峡から九州東方へ出て、九州・四国・本州の太平洋岸を東進し、房総近海に至ります。日本の南岸における黒潮の安定した流路には、大きく分けるとほぼ四国・本州の南岸に沿って流れる流路と紀伊半島・遠州灘沖で南に大きく蛇行して流れる流路があり、後者の流路の蛇行現象のうち、ある条件に当てはまるものを黒潮大蛇行と呼びます。
図3 黒潮大蛇行の分類
出典:海上保安庁(参照2) 図4はTerra/MODISが2005年4月28日に観測した日本近海の海面水温です。やはり紀伊半島沖から東海沖にかけて黒潮が大きく蛇行している事が分かります。この際の黒潮の大蛇行は1年2ヶ月の間継続していました。図4では、流れの型はA型に属していると思われます。 黒潮大蛇行が発生すると船舶の運航コストに影響したり、冷水域の発生によりカツオなどの回遊魚の漁場の場所が変わったりするほか、冷水域では反時計回りの流れが生じるため、東海から関東地方沿岸で潮位の上昇がみられたりします。また、黒潮の大蛇行と東京での降雪の関係が指摘されており(参照3)、黒潮が直進する場合と比べ黒潮が蛇行する場合に東京で降雪が起こりやすい傾向があるそうです。2014年2月8日には、東京でも大雪警報が発令され45年ぶりの大雪に見舞われました。また1週間後の2月14日から15日にかけても大雪でしたが、黒潮の大きな蛇行の影響があったのかもしれません。 MODISは、可視から熱赤外までに36の観測バンドを持ち、250 mから1000 mの分解能で2330 km幅の観測を行います。熱赤外では1000 m分解能の観測が可能です。日本の地球環境変動観測ミッションGCOM(Global Change Observation Mission)は、宇宙から地球の環境変動を長期間にわたって、グローバルに観測することを目的としたプロジェクトです。GCOMは、地球の水循環と気候変動を観測する、いわば宇宙から地球を健康診断する役割を持っています。GCOMには水循環変動観測衛星(GCOM-W)と気候変動観測衛星(GCOM-C)という2つのシリーズがあります。多波長光学放射計(SGLI)を搭載するGCOM-C1は、海面水温の他、雲、エアロゾル(大気中のちり)、海色、植生、雪氷など様々な対象を観測します。SGLIの熱赤外バンドの分解能は500 mで1400 km幅の観測が可能です。 参照サイト
観測画像について
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