地球が見える 2010年
シベリア・アラスカ、北方森林にて森林火災が延焼中〜森を守る光学観測衛星
![]() 図1 2010年7月26日に小型飛行機から撮影したアラスカの森林火災の写真
図1は、2010年7月26日にシベリアと同じ北極圏にあるアラスカにて小型飛行機から撮影した森林火災の様子です。木々や林床のミズゴケが勢いよく燃え、一筋の炎(Fire Line)となっているのが分かります。このように北方の森林火災では、楕円形に火災が広がります。黒く焦げた丸い焼跡のまわりをぐるりと森林火災の炎の輪が囲む様子がよく見られます。 図2 2010年8月4日に観測したモスクワ周辺の森林火災の分布
今年はモスクワ周辺と極東シベリアで大規模な森林火災が発生しています。図 2をご覧ください。これは、ヨーロッパから中央シベリアまでの約4,000 kmの範囲における森林火災の発生状況を地図上に赤く塗ったものです。多くの森林火災がモスクワ周辺で起こっており、キエフ周辺にまで到っています。報道等からも、森林火災によって発生した煙などが及ぼす健康被害が心配されます。 図3 2010年8月5日に観測したロシアに広がる森林火災の煙(クリックすると拡大)
図3をご覧ください。これは、衛星を用いて検出した森林火災の位置を、「いぶき」がとらえた煙の様子の上に重ね合わせたものです。赤く塗りつぶされた部分が、JAXA独自の方法により、米国のMODISのデータから検出した森林火災の位置です。この図では、森林が緑、水域が青、雲が白、煙が黄色〜茶色に見えます。モスクワの南東から北方向へ向かって茶色く森林火災の煙が伸びているのが分かります。この画像は天然色ではありませんが、近紫外線等を用いて自然に近い色合いで、かつ煙と雲がはっきりと識別できる画像となっています。 図4 モスクワ付近の森林火災の様子
もう少し森林火災の様子を見てみましょう(図4)。モスクワからニジニノブゴロド南部にかけて、大きな森林火災が観測されました。良く見るといくつかの火災では焼跡の端で、森林火災が活発で、そこから煙がもうもうと広がっているのが分かります。このように濃い煙があると、飛行機の離着陸が困難になり、社会生活が難しくなります。 ![]() 図5 JAXAが開発中のGCOM-C1衛星
JAXAは、地球の気候変動を観測するためにGCOM-C1衛星を開発しています(図 5)。この衛星では250 mの解像度で森林火災を検出します。消防隊は最後には歩いて火災現場に向かうため、正確な火災の位置を知ることは非常に重要です。これまではMODISによる1 kmの解像度がやっとだったため、250 mの解像度の火災情報は消防隊にとって貴重な情報です。また、GCOM-C1衛星は「いぶき」と同じく近紫外線の観測が可能です。そのため、煙と雲をはっきりと分ける事ができ、煙の下に潜む火災を検出できる様になります。 GCOM-C1から得られる森林火災情報は米国アラスカ州の消防機関と協力して開発し、その成果は世界中の森林火災の情報を公開され、センチネルアジアプロジェクトなどの防災情報システムで配信されます。さらに、JAXAが北海道大学やインドネシアと協力して推進するJICA-JSTプロジェクトを通じ、インドネシアの消防隊に携帯電話で森林火災の位置情報が通知される予定です。 観測画像について![]()
TANSO-CAIは、温室効果ガス測定の誤差要因となる雲やエアロソルの観測を行い、温室効果ガスの観測精度を向上します。
MODIS画像は森林火災の検知に用いました。各地図・画像の中で、検出した森林火災部分を赤く塗っています。 |