地球が見える 2009年
この春、林野火災が頻発
図1は、NASA人工衛星(Terra)で検知した3月21日に阿蘇山で発生した林野火災の分布の様子をJAXA地球観測研究センターにて解析した結果です。1-Aが当日午前のTrue Color画像*1、1-Bが当日午前の赤外擬似カラー画像*2です。1-AのTrue Color画像を見ても、かろうじて煙が北へ伸びているのが見える程度で本当に火災が起きているのかはっきりしませんが、右側の赤外線画像を見ると、明らかに高温部(火災)が赤〜橙色として確認できます。画像中の赤い四角は、温度分布から推定される火災の位置情報(ホットスポット)です。 *1 True Color画像とは、人工衛星のデータから人の目で見た色を再現した画像です。 *2 赤外疑似カラー画像とは、本来目に見えない赤外線を用いて色付けした画像です。
日本ではあまりまだ馴染みの無い人工衛星での林野火災の検知ですが、ロシアやアメリカ、また最近大惨事となったオーストラリアなどでは、人が全く住んでいない地域での林野火災が多く発生するため、速やかに火災を発見し、消火活動を行う上で人工衛星は非常に重要な役割を担っています。 人工衛星による火災検知は役に立つものの、まだまだ問題があります。大きな問題は2つあり、一つは検知プログラムの問題、もう一つは検知に使う衛星の問題です。現在、林野火災検知には米国NASAが開発したMOD14というプログラムが広く使われています。以前と比べれば性能は大幅に向上しましたが、依然誤検知や見落としが多く見られます。 また検知に使う人工衛星には、NASAのTerraとAquaが広く用いられています。しかし、解像度が1km程度と限られ、キメが粗いため、日本やアジアの様に人口の多く、多様な土地利用や植生の地域には向いていません。 そこでJAXAでは、既存の衛星を用いて高精度に林野火災を検知できる火災検知プログラムを開発中です。高度な統計的検定や、新しい火災判定基準の導入、非火災域の判定基準の追加など、プログラムを白紙から組み直す事により、既存の林野火災検知プログラムと比べて大幅な精度向上を実現しつつあります。
すなわち、JAXAの火災検出プログラムでは、まだ火の弱い午前中から正確に火災の分布を捉えることに成功し、NASAのプログラムと比べて2時間早く火災の分布を把握できた事となります。この情報が消防に活かされれば、これまでより2時間早く消火活動に当たる事ができ、火の小さなうちに早期消火することで、効果的な消防活動が実現できます。 この火災検知プログラムは昨年よりアラスカ州にて消防活動に活用され、さらに今後はインドネシアの消防隊にも火災検知結果を提供する予定です。 また、JAXAは新しい人工衛星も開発中です。現在よりもキメの細かく250mの解像度を中心とした衛星GCOM-C1の研究開発を推進しています。よりキメの細かい赤外画像を使う事で、林野火災検知の性能も向上できると期待されます。
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