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地球が見える 2006年

北海とバルト海を結ぶキール運河とハンブルク

図1 ドイツとデンマーク周辺
図1は、環境観測技術衛星(みどりII)が捉えたドイツ北部とデンマーク周辺です。ドイツとデンマークの国境近く、ユトランド半島の付け根にスエズ、パナマ両運河と並び重要な国際運河であるキール運河があります。世界三大運河の一つに数えられ、正式には北海バルト海運河(Nord-Ostsee Kanal)と呼ばれています。現在の運河は、長さ98 km、幅102 m、水深11 mで、多くの商船が行きかっています。これは、1919年のベルサイユ条約ですべての国の商船に通行権が与えられたからです。また北海とバルト海の海面の間に高度差が少ないですが、潮の満ち干に対応するための閘門(こうもん)が運河の両端にあります。

図2 北海とバルト海を結ぶキール運河
図2は、地球資源衛星1号(ふよう1号)に搭載された光学センサが捉えたキール運河です。右上の黒い部分(バルト海につながるキール湾)と左下の黒い部分(北海に注ぐエルベ川)を結ぶ黒い線が運河です。また、運河の東端の赤紫色の部分はシュレスヴィヒ・ホルシュタイン州(乳牛のホルシュタイン種はここに由来します)の州都キール、右下の赤紫色の部分はベルリンに次ぐドイツ第二の都市ハンブルクです。
運河建設以前、北海とバルト海の通商はデンマークのユトランド半島を回り、幅20数kmのエーレスンド海峡(デンマークの首都コペンハーゲンの目の前の海峡)を通るコースで行われていました。しかし、ユトランド半島沖は波が荒い上、狭いエーレスンド海峡ではデンマークが高い通行税を課していました。このためハンブルクやリューベックなどのハンザ同盟都市は、協力してキールからアイダー川に抜ける小さな運河(アイダー運河)を作り、さらにアイダー川を拡張して2つの海を結んで、1784年に完成しました。この運河は通商に役立っただけでなく、運河の水は周辺の灌漑にも用いられ、この地方の農業生産を高めたそうです。
しかし、その運河の幅は29 m、深さ3 mしかなく通れる船が限られていたため、1887年に新運河の建設が開始されました。これがキール運河です。新運河はキールからレンズブルクまでは旧運河を拡張し、その先はアイダー川ではなく、南のエルベ川のブルンスビュッテルに抜けるルートに開かれました。運河は9年の歳月を費やして1895年に完成しました。

図3 キール周辺
図3はキール周辺の拡大図です。バルト海につながるキール・フィヨルドは奥行きが約17kmあり、その中程の西岸にキール空港とキール運河の出入り口が見えています。キール・フィヨルドの奥の方の灰紫色のところがキール市街地で、1865年以降、ドイツの海軍基地が置かれ、これに伴って造船業が繁栄しています。その他は、概ね緑色に見えていて畑地や牧草地が広がっていることがわかります。
キール・フィヨルド奥の西岸には鉄道駅があり、その北に新市庁舎が見えます。さらに北側には第二次世界大戦の時の空襲を免れた旧市街地があり、その中心にアルター・マルクト(古市場)と聖ニコライ教会があります。
キール・フィヨルド奥の東岸にはキールとバルト海沿岸の各都市を結ぶ定期フェリーが発着するフェリー埠頭があります。その北には、広大な敷地の造船所が見えます。
世界最大のヨット競技の祭典「キール週間」は一年のうちで最も昼間の時間が長い毎年6月下旬にキール沖で開催されます。起源は1882年のレガッタで、今では、2,000隻のヨットと5,000人の選手が参加します。同時期にシュレスヴィヒ・ホルシュタイン音楽祭も開催され、北欧最大の夏祭りとなっています。1936年のベルリン・オリンピックと1972年のミュンヘン・オリンピックの時には、オリンピックのヨット競技がキールの沖合で行われました。

図4 ブルンスビュッテル周辺
図4はブルンスビュッテル周辺の拡大図です。キール運河の出入り口付近に閘門がかすかに見えています。また、運河の水が黒く、エルベ川の水が灰紫色に見えていて、灰紫色のエルベ川の水が、閘門より奥のところまで入り込んでいることが分かります。

図5 ハンブルク
(Google Earthで見るハンブルク (kmz形式、4.28MB、低解像度版))
図5はハンブルクの拡大図です。赤紫色の部分が市街地や港湾施設で、黒い部分は水面です。図の右下がエルベ川の上流で、一旦、北エルベ川と南エルベ川に分かれ、再び合流して図の左の方へ流れています。図の上の方からはアルスター川が流れてきて、市街地のすぐ近くの人造湖、外アルスター湖と内アルスター湖を経て北エルベ川に合流します。図の上の方には2本の滑走路を持つフールスビュッテル国際空港が見えます。その南西には、柵がないことで知られるハーゲンベック動物園とサッカースタジアムAOLアレナが見えています。
このスタジアムはドイツのプロサッカー一部リーグ「ブンデスリーガー」に所属するハンブルガーSVの本拠地です。このチームは、ドイツブンデスリーガー創立以来一度も二部リーグに落ちたことのない古豪チームで、現在は高原直泰が所属しています。このスタジアムでは2006年6〜7月のドイツワールドカップの5試合が予定されています。
図5左下のエルベ川の南岸に滑走路を伴ったエアバス社のハンブルク工場があります。エアバス社の工場はヨーロッパ中に数多くありますが、最終組立はフランスのトゥールーズとドイツのハンブルクの二カ所で行われています。昨年(2005年)4月に初飛行に成功した、世界最大の旅客機A380の製造に当たって、ハンブルク工場は胴体部分の組立と最終組立を担当しています。
ハンブルクは人口約170万を擁するドイツ第二の都市で、ドイツ北部の経済の中心地です。ハンブルク大学をはじめとする学術研究機関が多く、また作曲家のヨハネス・ブラームス(1833〜1897)、フェリックス・メンデルスゾーン(1809〜1847)の生誕地でもあり、北ドイツ放送交響楽団の本拠地となっています。ハンブルクはエルベ川河口の港湾都市で、「ハンザ同盟」の一員として繁栄しました。「自由都市」としての特権を持ち単独でドイツ連邦共和国を構成する州のひとつとなっています。



参考サイト:
キール市公式サイト(ドイツ語版)
キール運河公式サイト(英語版)
ハンブルク市公式サイト(英語版)

観測画像について:
(図1)
観測衛星: 環境観測技術衛星「みどりII」(ADEOS-II)
観測センサ: グローバルイメージャ(GLI)
観測日時: 2003年5月25日〜6月9日(16日間)
地上分解能: 1 km
地図投影法: メルカトール図法
この地域は、観測範囲の全体が晴れていることが少なかったので、上記の16日間のデータから雲なしコンポジット(合成) 画像を作成しました。特殊なチャンネルの組み合わせで、短波長赤外域の1,640ナノメートル(チャンネル28)、近赤外域の865ナノメートル(チャンネル19)、可視光の 678ナノメートル(チャンネル13)の観測データに、それぞれ赤、緑、青色を割り当てて合成した画像です。このため、次のように見えています。

薄緑色〜深緑色: 植生
ピンク〜薄赤色: 裸地、土壌
紫色: 都市
深青色(塗りつぶしてあります): 水域

(図2〜図4)
観測衛星: 地球資源衛星1号「ふよう1号」(JERS-1)
観測センサ: 可視近赤外放射計(VNIR)
観測日時: 1993年6月29日及び30日
地上分解能: 18.3 m×24.2 m
地図投影法: UTM(ユニバーサル横メルカトール)
図2〜図4では近赤外域の760〜860ナノメートル、可視域の630〜690ナノメートル、520〜600ナノメートルの各バンドに緑、赤、青色を割り当てているので、いずれも肉眼で見た色に近い色付けで植生をやや強調した合成画像です。雪や氷は白または薄紫色に、市街地は茶色っぽく、森林は濃い緑色に、草地や畑は薄い緑色に、北側の斜面は黒っぽく、水面は黒く見えます。データのないところも黒く表現されています。


関連サイト:
地峡を越える、船の近道:パナマ運河
沙漠を貫く、船の近道:スエズ運河
壁で分断された都市:ベルリン(その2)
壁で分断された都市:ベルリン(その1)
地球が見える 陸地・地形のページ


付録:
キール運河の近道効果、交通量、制約など:
フィンランドのヘルシンキとイギリスのドーバーとの間の航路長は、ズンダ海峡経由の場合、1,223カイリ、キール運河経由の場合、1,045カイリで、178カイリ節約できます。キールとドーバーの間はズンダ海峡経由の場合、778カイリ、キール運河経由の場合、410海里で、368カイリ節約できます。
キール運河を通航する船舶は近年徐々に増えており、2004年には約42,000隻、総トン数では1億2500万トンを記録しました。
2003年の統計ですが、キール運河経由でバルト海側から北海側に運ばれた貨物は4,570万トン、逆に北海側からバルト海側に運ばれたのは2,650万トンで、バルト海側から北海側に運ばれた貨物が非常に多いことがわかります。貨物の内訳としては、一般貨物:47%、石油及び派生品:14%、化学製品:8%、鉄及び鉄鋼:7%、材木:5%などとなっています。
通航する船舶を大きさ別に見ると、総トン数2,601〜6,000トンの船舶が38%、6,001〜10,000トンの船舶が27%、701〜2,600トンの船舶が18%などとなっており、スエズ運河、パナマ運河と比べると小型の船舶が多いことがわかります。
また、船籍別に見ると、ドイツ:19%、オランダ:14%、イギリス:12%、アンティグア・バーブーダ(カリブ海の島国):9%、フィンランド:8%、キプロス:5%などとなっており、国際運河であることがわかります。
キール運河には小さめの旧閘門と大き目の新閘門があり、新閘門の大きさは利用可能な長さ:310 m、利用可能な幅:42 m、深さ:14 mと、パナマ運河の閘門より一回り大きくなっています。しかし、2003年に通航した最大の船舶はバハマ船籍の「ノルウェーの夢(Norwegian Dream)」で総トン数50,764トンでした。
本文ここまで。
画像:人工衛星の情報を掲載 サテライトナビゲーター
画像:衛星利用の情報を発信 衛星利用推進サイト
画像:衛星から見た地球のデータ集
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