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地球が見える 2004年

GLIが見たメキシコ湾流

図 2003年4月16日に観測されたGLIによる海面水温画像(左)と
クロロフィルa濃度画像(右)

左図においてオレンジ色で示した20℃以上の高温部分が北アメリカ大陸東岸の沖合を北上していますが、これがメキシコ湾流です。メキシコ湾流は沖合の水深200mの等深線付近を大陸棚に沿って北上し、黒潮と同様に蛇行することが知られています。画像では、メキシコ湾流がコッド岬沖でU字型に蛇行している様子を鮮明に捉えています。
メキシコ湾流(ガルフストリーム)は、メキシコ湾に端を発し、フロリダ半島の周りを反時計回りに周って、北アメリカ大陸の東海岸の沖合いを北東に向かって流れており、太平洋における黒潮とともに世界最大の暖流です。メキシコ湾からアメリカ合衆国とカナダの沿岸を通過し、北ヨーロッパのスカンジナビア半島沿岸にまで流れるこの暖流は、ヨーロッパでは北大西洋海流と呼ばれます。低緯度のメキシコ湾地域で受け取った太陽の熱を、高緯度のヨーロッパへ運ぶ、非常に重要な役割を果たしています。このため、イギリスやアイルランドでは高緯度のわりに温暖な気候となっています。
クロロフィルa(*1)濃度画像(右図)では、春季に日射の増加とともに植物プランクトンが急激に増加する現象(植物プランクトンブルーム)を鮮明に捉えています。水温の高いメキシコ湾流の海域では、植物プランクトンが少なく(青色)、逆に水温の低い沿岸域や北緯35度以北のメキシコ湾流の北側(*2)で、植物プランクトンが多い(緑からオレンジ色)ことがわかります。特に北緯35度以北の沿岸域、メキシコ湾流のフロント域(*3)周辺、蛇行部分の内側で植物プランクトンが多いことがわかります。海洋フロント域は、潮目や渦等が多数形成され、植物プランクトンが豊富で好漁場が形成されやすいと言われています。メキシコ湾流の海域、特にコッド(タラ)岬の沖は世界有数のタラ漁場として知られており、日本周辺で言えば黒潮と親潮がぶつかる三陸沖とよく対比されます。
海流は気候変動や植物プランクトンの分布変動メカニズムにも大きな影響を与える非常に重要な海洋の物理環境の一つとして知られています。GLIは一つのセンサで海面水温とクロロフィルa濃度を同時に観測できるため、植物プランクトン分布と水温との関係を理解するのに役立つという特徴を持っていました。



(*1) クロロフィルaは植物に含まれ、光合成において重要な働きをする葉緑素の一種です。クロロフィルにはa,b,c,d,eなどがありますが、クロロフィルaはこの中でもすべての植物プランクトンに共通に含まれるので、植物プランクトン量の良い指標になります。

(*2)  これらの海域で水温が低いのは、カナダのラブラドル半島沿岸を南下するラブラドル海流の影響です。ラブラドル海流は、北西大西洋のラブラドル半島沿岸を南下する寒流で、きわめて低温低塩分であることで知られています。

(*3) 2つの性質の異なった海水がぶつかる部分を海洋前線域(海洋フロント域)といいます。水温画像ではオレンジ色のメキシコ湾流(高温・高塩分水)とラブラドル海流の影響を受けた青から緑色の沿岸水(低温・低塩分水)との境界線部分を指します。

観測画像について
観測衛星: 環境観測技術衛星「みどりII」(ADEOS-II)
観測センサ: グローバルイメージャ(GLI)
観測日時: 2003年4月16日
GLIは36の観測チャンネルを持っていますが、そのうち海洋圏の研究のために設定されたチャネルの分光輝度値の組み合わせから、標準アルゴリズムと呼ばれる計算式を用いて海面水温とクロロフィルa濃度を算出しました。元データの空間分解能は1 kmです。
左図の海面水温画像では、濃い赤ほど水温が高く、濃い青ほど水温が低いことを表しています。右図のクロロフィルa画像では、濃い赤ほど濃度が高く、濃い青ほど濃度が薄いことを表しています。いずれの画像においても、雲と陸地の部分は、GLIの可視域の678 nm、545 nm、460 nmに赤、緑、青を割り当てて肉眼で見たの同じように見える画像としているので、雲は白か灰色、陸地は灰色または濃い茶色に見えています。また、データのない部分は黒く示されています。なお、右図において、フロリダ半島の先端部と南東沖にクロロフィルa濃度の高い海域が見えていますが、水深が浅いために海底が見えていて、実際とは異なった値を示しているので、注意が必要です。

関連サイト:
AMSR-Eで見えた黒潮大蛇行
黒潮のゆくえを追う
日本近海の海洋植物プランクトンの春季大増殖
みどりII搭載のグローバルイメージャ(GLI)および高性能マイクロ波放射計(AMSR)の標準プロダクト公開について
宝石のように美しいキューバ、バハマの海

本文ここまで。
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