地球が見える 2004年
サハラ沙漠の円形農場と衝突クレータ
画像は昨年5月にGLIが観測したサハラ沙漠東部です。画像の主要部には、時計回りにエジプト、スーダン、チャド、リビアが含まれます。画像の右にはナイル川が見え、下の方には豊かな熱帯雨林が見えています。 この画像の元々の地上分解能は250mなので、部分的に拡大すると興味深いものが見えてきます。 フレームAの中央にはリビア東部のジョグブーブ・オアシスが見えています。東西48km、南北22kmに及ぶ大きなオアシスです。黒いのは水面、緑色は植生を表しています。白っぽい水色は地表面の塩だと思われます。 フレームBはリビア東部の低地ですが、右側には数多くの砂丘の襞、油田か天然ガス田の排ガスを燃やしているものと思われる赤い点とこげ茶色の煙、フレーム中央を南北に走る道路、そして規則正しく並んだ緑色やこげ茶色の点々が見えています。これらの点々の直径は約1kmあり、これは円の中心に井戸があって、そこを中心として長さ約500mの巨大なスプリンクラーが時計の針のようにゆっくり回転して灌漑(ピボット灌漑と呼ばれます)を行う農場で、小麦やアルファルファ(*1)が栽培されています。それぞれの点々の色の違いは、農作物の生育状況の違いを示しています。 汲み上げられる地下水は、サハラ沙漠が今よりずっと湿潤だった1万年以上前に降った雨水が、地下の帯水層(*2)に閉じこめられたものであり、化石水(*3)とも呼ばれます。現在サハラ沙漠に降る雨水だけで、汲み上げた地下水を補うには全く不十分なので、地下水資源はどんどん減少しつつあり、一部の研究者はリビア南部の井戸は今後40〜60年で干上がると予測しています。 フレームCの左側には、リビア東南部のクフラ・オアシスと、その周辺で小さな緑色やこげ茶色の円が木馬のような形に集まっている様子が見えます。これらもピボット灌漑による円形農場です。 アフリカ大陸は、6 億年前(先カンブリア時代の終わりころ)には既に存在していたゴンドワナ大陸が1億8000万年前〜9000万年前にかけて分裂してできた古い大陸なので、隕石が衝突して出来た衝突クレータがいくつか残されており、 GLI 画像でも、以下のクレータが見えています。 フレームC 〜Fの枠内をクリックすると、それぞれの拡大図を見ることができます。クレータは、形成された時代や地質、その後の地殻変動や風化・浸食などの影響で、形が崩れていますが、これらのクレータは現在、沙漠にあるため、植物に隠されることなく、良く見えています。生成時期の古い順に示します。
出典:カナダのニュー・ブルンズウィック大学が運営している地球衝突データベース リンク先: http://www.unb.ca/passc/ImpactDatabase/africa.html (*1)アルファルファ:和名はムラサキウマゴヤシ。ヨーロッパ産のマメ科植物で、牧草や緑肥として栽培されます。 (*2)帯水層:非透水性の地層の上にあって、礫や砂など透水性の高い物質からなり、相当量の地下水を含む地層のことを言います。 (*3)化石水とは、地下の帯水層に封じ込められ、水文循環に関わらない水のことを言います。
関連サイト: エジプトはナイルの賜物 サハラ沙漠を吹き荒れる春の砂嵐 アフリカ縦断軌道からの観測 〜人類発祥の地と世界最古の沙漠を訪ねて〜 衝突クレータを記憶する楯状地:カナダ、ラブラドル半島 |