地球が見える 2004年
2004年、台風がもたらした豪雨と災害
8 月 17 日から 19 日にかけて、台風 15 号(メーギー)が西日本に接近、これに伴う集中豪雨のため、特に四国地方で大きな被害が発生しました。また韓国でも大きな被害が出ています。 このように今年の夏は、非常に多くの台風が日本に接近し、大きな被害がもたらされています。気象庁の統計資料によると、平年では 8 月中旬までの台風の発生数は 12 個程度なのに対し、今年はすでに 15 個とそれよりも多くなっています(今年の台風 14 号までの経路図は こちら )。また日本に上陸した台風はそのうち 4 個で、平年の年間上陸数 2.6 個をすでに上回っています。平年よりも高緯度で台風が発生・発達していて、特に台風 10 号(ナムセーウン)、 11 号(マーロウ)は、日本付近で発生し、降り始めからの降水量が 1000mm を越え、四国地方や紀伊半島に大きな被害をもたらしました。これらの地域で一年間に降る平均的な雨のおよそ 4 分の 1 以上もの雨が、この 2 つの台風でもたらされたことになります。
図 1 は 8 月 1 日日本時間 3 時頃に、熱帯降雨観測衛星( TRMM )搭載の降雨レーダ( PR )と、気象衛星 GOES (ゴーズ) 9 号が、台風 10 号の雨と雲の様子をとらえた画像です。降雨レーダは地上のみならず上空の雨も観測することができる装置です。水色〜黄〜赤の部分は降雨レーダが観測した雨の強さをあらわしていますが、この図では上空約 3km の高さにおける雨の強さを示しています。四国の上空で赤で示された非常に強い降雨が観測されています。 図 2 はこのときの台風の降雨の立体図を、九州の西側から台風に向かって進みながら見たものです。この棒グラフのようなものは、どのくらいの高さから雨が降っているのかを示しており、色は雨の強さをあらわしています。この図では、降雨の一番上の高さが高いほど雨が強くなる傾向にあります。一部の地域では降雨の一番上の高さは 13 kmに及び、非常に強い雨が降っていたことがわかります。このように、降雨は場所によって強さや高さが異なり、非常に複雑な内部構造をしています。
図3は8月4日日本時間23時頃に降雨レーダによって観測された台風11号付近の上空3kmの高さにおける雨の分布で、図4は図3の線A-Bに沿った降雨の立体画像と、その断面の雨の強さをあらわしたものです。台風11号自身は非常に小さいものでしたが、場所によっては上空15kmもの高さから雨が降りだしており、非常に強い降雨を伴っていたことがわかります。 このような豪雨は台風そのものの降雨域だけではなく、台風の北上に伴って暖かく湿った空気が流入することによって発達した活発な雨雲によるものもあります。台風15号によって四国にもたらされた被害は、まさにこのパターンと言えます。 TRMMは運用停止が発表されていましたが、NOAA(米海洋大気局)からの要請により、この夏の台風シーズンをカバーするため、本年末まで運用終了時期が延長されることになりました。TRMMは今後も台風の観測を続けていきます(*)。 最新の台風については、TRMM台風速報をご覧ください。 (*)TRMMは台風だけでなく、福井豪雨などの激しい降雨現象の詳細な構造も観測しています。
関連サイト: TRMM台風データベース TRMM台風速報 AMSR-E台風速報 AMSR-E「今日の一枚」 |