観測対象に対応した計測技術と、具体的に設計されたEarthCAREの観測装置について概要を示したものが次の図です。
EarthCARE衛星の観測の特徴は、「レーダ」「ライダ」「イメージャ」および「放射収支計」という観測方式の異なる4種類の観測装置によるデータを取得し、それらを複合的に組み合わせた情報をプロダクトとして提供することです。そのため、対象の場所と時間がほぼ一致した観測データを各センサ同時に取得する「シナジー(同期)観測」をおこないます。
観測対象に対応した計測技術と、具体的に設計されたEarthCAREの観測装置について概要を示したものが次の図です。
雲・エアロゾルの分布や特性に関する鉛直プロファイルを計測するためには、装置からアクティブに信号を送信する「能動型タイプ」のセンサが必要です。対象からの後方散乱信号により情報を得るこのタイプのセンサでは、用いる送信波の波長に依存して、探知できる対象の大きさが決まります。EarthCAREの対象は雲とエアロゾル(すなわち粒子)ですから、送信波長によって感度の対象となる粒子の大きさが異なる、というわけです。
地球上に存在する雲とエアロゾルは、粒子の大きさが直径10nm~0.1mm程度まで幅があり、それぞれの粒子の直径に対して適した観測装置を準備する必要があります。94GHz帯のミリ波レーダーは、送信波長約3.2mmであり、地球上のほとんどのタイプの雲に関して感度が高く、効果的にデータを収集することが可能です。また、雲粒よりもややサイズが大きいドリズル(霧雨)や弱い雨に対しても感度を持ちます。一方で、エアロゾルは雲より粒子のサイズがさらに小さく、レーダーよりも送信波長の短いライダが有効です。波長355nmの紫外線を用いたライダは、エアロゾルに対して感度を持つほか、巻雲のようなごく薄い雲に対しても感度を持ちます。レーダーとライダの同時観測を行うことで、両方の装置の感度特性における利点を組み合わせて、より精度の高いデータを得ようというのがEarthCAREの装置設計における大きな特徴です。
さらに、大気観測用にチャンネルの選択がおこなわれたイメージャによる雲やエアロゾルの水平分布データを組みあわせることで、衛星直下方向にしかデータが得られないレーダーとライダーの観測を補い、3次元的な情報を再現します。
ドップラー気象レーダーは、粒子の運動によるドップラー効果を利用して局所的な風の動きを探知することが可能で、空港などでは実際に利用されています。EarthCAREでは、ミリ波レーダーにドップラー速度計測機能を備えることで、雲粒の上下方向の動きをもとに、鉛直風の強さに関する情報を得られることが期待されます。