衛星と観測センサ

4つの観測装置によるシナジー観測

EarthCARE衛星の観測の特徴は、「レーダ」「ライダ」「イメージャ」および「放射収支計」という観測方式の異なる4種類の観測装置によるデータを取得し、それらを複合的に組み合わせた情報をプロダクトとして提供することです。そのため、対象の場所と時間がほぼ一致した観測データを各センサ同時に取得する「シナジー(同期)観測」をおこないます。

各センサの観測方法

CPRとATLIDは、装置自身が地球表面に向かって信号を発信して対象の探知をおこなう能動型(アクティブ)センサで、視線方向(信号を発信する方向:おおむね鉛直方向)の距離に応じた情報を探知することができます。CPRの場合は最大で地上~高度20km付近、ATLIDの場合は最大で地上~高度40km付近の間の鉛直分布データを取得します。

CPRの視線方向は衛星直下であるのに対してATLIDの場合は衛星直下より3度後方で、この差は地表付近の距離で20km程度、時間にするとおよそ3秒のずれとなります。これは、衛星による雲やエアロゾルの動態把握の観点ではほぼ無視できる差です。

MSIとBBRは、地球表面から宇宙に反射・放射される電磁波を受信して対象の探知をおこなう受動型(パッシブ)センサで、センサの視野に応じた面的な情報を探知することができます。MSIはクロストラック方向に約150km幅の範囲、BBRは前方・直下・後方の3方向にそれぞれ10km四方の範囲の情報を取得します。

センサ名 CPR 雲プロファイリングレーダ ATLID 大気ライダ MSI 多波長イメージャ BBR 広帯域放射収支計
センサのタイプ アクティブ(能動型) アクティブ(能動型) パッシブ(受動型) パッシブ(受動型)
センサの種類 レーダ(ドップラーレーダ) ライダ(高スペクトル分解ライダ) 可視赤外放射計(プッシュブルーム方式イメージングスキャナ) 広帯域放射収支計
周波数・感度帯 Wバンド(94 GHz) 紫外(355 nm) 可視~赤外帯 7バンド 短波帯・長波帯
観測方向 鉛直観測 (衛星直下) 鉛直観測 (後方3度) 水平帯状観測 (衛星直下より左側115km、右側35km) 水平3方向観測 (直下・前方・後方)
最大観測範囲 地上~高度20 km 地上~高度40 km 水平 150km幅 10km×10km
フットプリント径(IFOV) 750~850 m < 32 m 約 500 m 10 km×10 km
サンプリング間隔 水平 約 100 m 鉛直 約 100 m 水平 約 280 m (目標 140 m) 鉛直 約 100 m 水平 約 500 m 水平 約 1 km
おもな観測対象 雲粒、ドリズル、雨粒 鉛直風 エアロゾル 薄い雲の雲粒 雲、エアロゾル 放射エネルギー