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陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)による『平成21年7月中国・九州北部豪雨』にともなう緊急観測(4)
2009年7月21日に中国地方で活発な梅雨前線の影響により局地的な豪雨が降り、山口、防府市で大雨にともなう災害が発生しました。宇宙航空研究開発機構(Japan Aerospace Exploration Agency、以下JAXA)は豪雨被害発生初期から、「だいち」搭載の3センサを用いて、当地を観測し、災害状況解析結果を発表してきました1)。Lバンド合成開口レーダ(Phased Array Type L-band Synthetic Aperture Radar -PALSAR; パルサー)による解析の結果が得られましたのでここにお知らせします。
図1は平成21年7月26日の夜間に山口、防府地区を観測したPALSAR画像です(オフナディア角30.8度)。図は正射投影2)し、地図にあわせています。災害発生から5日後の画像であり、すでに特別養護老人ホームを含むいくつかの箇所で土砂災害が発生していました。
変化抽出の為に、今年の2月9日に入射角34.3度で夜間に観測した画像と比較をします。図2-1、2-2が、真尾地区を含む7.5km四方を切り出したものです(2-1が災害前、2-2が災害後3))。PALSARは電波を斜めに入射し、地表の画像を作るのですが、山岳地帯を観測した場合、高い山が低い地面よりも手前に映る(レイオーバーといいます)ことがあり、この場合、正確に表せない領域が発生します。これを白で塗りつぶしています(白マスク)。この2枚の画像から、災害前後でいくつかの"筋"をみることができます。特別養護老人ホームのある真尾地区等、白まるで囲んだところですが、これらは土石流や大量増水によって生じた地表の傷跡(地形変化)をPALSARが明るさの違いとして検出したものです。次に、この2枚の差を取ったものを図3に示します。全体に白色の画像ですが、そのなかでもより白くなっている"筋"を確認することができます。
PALSARは全天候性で、分解能10mの電波センサです。斜め観測するために、特に山岳地帯では地形の傾斜や走行の影響を強く受けます。今回の観測は、南から北に向かう軌道から右斜め下を観測していたので、軌道に沿って流れる土石流や衛星に近づく土石流の観測に適していました。解析処理にはSIGMA-SARソフトウェアを使用しました。
2) 地球中心から見たかのように画像を写すこと。
3) なお、図2や図3では、地形の変化をよりわかりやすくする為に、特殊な処理(地形の勾配に明るさが影響を受けないような補正)を施しています。
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JAXA EORC