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2020年お知らせ

令和2年9月23日
宇宙航空研究開発機構
地球観測研究センター

雨粒の大きさの世界的な分布と季節変化を宇宙から観測(論文解説)

JAXAでは、NASAとの共同プロジェクトである全球降水観測(GPM)計画の下、GPM主衛星に搭載された二周波降水レーダ(DPR)により、宇宙から世界の雨を観測しています。衛星観測は、世界中の雨の分布を同じ観測センサで均質に観測するため、地球温暖化や気候変動などの地球規模の課題に有効な情報を提供することができます。

本稿では、衛星によって得られた世界の“雨粒の大きさ”の分布について、最新の研究成果として論文が公開されましたのでお知らせするとともに、その内容をご紹介します。

ポイント
  • ・雨粒の大きさは、雨の強さだけでなく雨の降り方の違いと深く関係している。熱帯から中緯度に至るまでの地球規模での雨粒の大きさ(平均雨滴粒径)の分布が初めて明らかになり、海上に比べて陸上で雨粒が大きいことをはじめ、雨粒の大きさの特徴的な地理的分布が得られた(図1)。
  • ・北西太平洋に着目した解析から、雨の構造の違い(温帯低気圧に伴う層状性の雨か、熱帯の対流性の雨か、など)が季節によって変わることに対応して、雨粒の大きさも季節によって顕著に変化していることがわかった(図2~4)。

GPM主衛星二周波降水レーダによる世界の雨粒の大きさの分布

GPM主衛星は、2014年2月に種子島宇宙センターから打上げられ、二周波降水レーダ(DPR)という、波長の違う二種類の電波(Ku帯とKa帯のマイクロ波)を用いて詳細に降水の観測することができるセンサを搭載しています。DPRによって雨粒の粒子に関する情報を得ることができるため、本研究では、4年分のDPRのデータを用いて世界の雨粒の大きさ(平均雨滴粒径)の分布と、その季節変化を調べました。
図1には、DPRによる平均雨粒粒径の4年平均値(左)と雨の強さの4年平均値(右)の分布を示しています。左右を比較すると、雨粒の大きさは雨の強さと異なる分布をしており、海上に比べて陸上で、雨粒が大きい様子がわかります。

雨粒の大きさの季節変化

本研究では、雨粒の大きさの季節による変化に着目しました。図2には、DPRによる雨滴粒径と降雨強度の北半球夏(6~8月)と北半球冬(12~2月)それぞれの平均分布および、それらの差の分布を示しています。比較してわかる通り、雨粒の大きさは、亜熱帯や中緯度を中心に季節的に変化していることに対して、それらの領域での雨の強さはそれほど顕著な季節変化がみられません。北西大西洋に着目すると、亜熱帯では夏季に比べて冬季に雨粒が小さくなっているのに対し、中緯度では夏季に比べて冬季に雨粒が大きくなっていることがわかります。

なぜ雨粒の大きさが季節変化しているか?

図2の結果から、雨粒の大きさが顕著に季節変化していることがわかりました。これまでの先行研究では、強い雨ほど雨粒が大きいという関係性が一般的に示されていましたが、図2では雨の強さが季節によってそれほど変化していなくても、雨粒の大きさが顕著に変化していたため、雨の強さとは異なるファクターが平均雨滴粒径の季節変化に関係していることが示唆されます。本研究ではこの要因について考察するため、北太平洋の中緯度の領域Aと亜熱帯の領域B(図2参照)に着目し、DPRによって得られた降水を特徴づける物理量を調べました。
図3は、図1や図2で示した雨滴粒径と降雨強度に加えて、降水頂高度と層状性の降水面積の比について、領域AとBそれぞれの頻度分布を示したものです。降水頂高度は、DPRによる降水の三次元分布の観測データから、雨が降り始める最も高い高度として推定したものです。層状性の降水面積の比は、DPRによる降水観測データから、降水が観測された格子数に対して、層状性の雨(上層の氷晶が落下するうちに溶けて落ちてくるようなシトシト雨)と判定された数の割合を示しており、値が大きいほど層状性の雨が多く、値が小さいほど対流性(積雲や積乱雲などからもたらされる対流性の雨)が多いことを示しています。
図3から、降水頂高度や層状性の降水面積の比が季節によって異なっていることがわかりました。この結果から、雨粒の大きさの季節変化と対応して、降水頂高度や層状性の降水面積比などによってあらわされる雨の構造(降水システム)が季節によって変化していることが示されました。

卓越する降水システム(雨の構造)の季節変化

これらの結果や先行研究による知見などを総合的に考慮して、季節による降水システムの違いと雨粒の大きさの関係を図化した概念図を図4に示します。夏季(図4左)は、中緯度亜熱帯ともに降水頂高度が高く、層状性降雨と対流性降雨の両方が存在していることから、台風や梅雨前線など組織化した降水システムが卓越していると考えられます。
冬季になると、中緯度(図4中央)と亜熱帯(図4右)で、卓越する降水システムが変化します。中緯度では、冬季に層状性の雨が卓越することが特徴的で、これは温帯低気圧の雨の特性と整合しています。中緯度冬季の温帯低気圧性の雨では、上層に氷晶が存在し、それが地表の比較的近くでとけて落ちてくるため、地表付近での雨粒の大きさが平均的に大きくなると考えられます。
一方、冬季の亜熱帯では、雨が降り始める高度が低いという図3の結果や、貿易風循環下で亜熱帯高圧帯が卓越するという環境場の特徴から、雨雲が高くまで発達せずに、積雲などの背の低い雨雲からもたらされる降水システムが、雨滴粒径が冬季に小さくなるという結果と関連していると考えられます。

本研究によって、地球規模での雨粒の大きさと卓越する降水システムの関係性に関する知見が初めて示されました。近年、干ばつや豪雨が増加・激甚化していますが、世界の雨の立体構造を観測することができる衛星センサは、現在、日本のGPM/DPRが唯一であり、地球規模での雨のふるまいを理解する上で非常に重要な役割を担っています。本研究で調査した雨粒の大きさをはじめとする雨の特徴が、気候変動下で今後変わってくる可能性もあることから、雨の量だけでなく、雨の構造・降り方の変化を捉え、そのしくみを理解することが、今後益々重要になってくると考えられます。

本記事で紹介した科学論文の出典

日本気象学会の学術論文誌「Journal of the Meteorological Society of Japan; 気象集誌」の2020年8月号に掲載。

論文タイトル:
4-year climatology of global drop size distribution and its seasonal variability observed by spaceborne Dual-frequency Precipitation Radar

著者:
山地萌果1,2、高橋 洋2、久保田拓志1、沖 理子1、濱田 篤3、高薮 縁4
1. 宇宙航空研究開発機構(JAXA)、2. 東京都立大学、3. 富山大学、4. 東京大学大気海洋研究所

関連サイト

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