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地球が見える 2014年

5年ぶりのエルニーニョ現象?

 今年は5年ぶりにエルニーニョ現象が発生する可能性があるとの予想が出たものの、最新の予報ではそれが秋になりそうだとのことで、なかなか予測は難しいようです。そもそもエルニーニョ現象とはどのような現象なのでしょうか?

 エルニーニョ現象は南米ペルー沖で海面付近の水温が平年より高くなり、その状態が一年近く続く現象です。南米のペルーからエクアドルの沿岸では、毎年、冬(7〜8月、日本では夏)の間は水温が低い状態が続き夏季には水温が高くなるという、季節変化を繰り返しています。水温が低い冬季は魚が集まってきて、この海域を代表する片口鰯等の漁が盛んですが、水温が上がってくると魚も少なくなって漁も休みとなります。クリスマスの時期に水温が高くなることから、地元の漁師達はこれをエルニーニョ(スペイン語で「男の子」、この場合は「神の子=イエス・キリスト」をさします)と呼んでいます。しかし、何年かに一度、クリスマス時期に上がった水温が冬になっても下がらず漁が再開できないということがあります。これが、近年の、衛星観測も含めた多くの観測の結果、南米沖に留まらず、太平洋赤道域、南米沖からインドネシア付近まで及ぶ地球規模の現象であることがわかり、エルニーニョ現象と呼ばれるようになりました(季節変化であるクリスマス時期の水温上昇を表す「エルニーニョ」と区別するために「エルニーニョ現象」という言葉が使われることもあり、ここでも「エルニーニョ現象」という言葉を使います)。

 エルニーニョ現象は、赤道の貿易風と密接な関係があります。太平洋の赤道域では、貿易風という西向きの風がペルー沖からインドネシア方面に向かって吹いています。この風により、赤道域で暖まった海水が西に吹き寄せられることで、インドネシア周辺で海面水温が高く、一方、ペルー沖では西に吹き寄せられた海水を補う形で下から冷たい海水が沸き上がり(湧昇)、この結果、水温は周辺より低めとなっています。ところが、何かの原因で貿易風が弱まると、インドネシア周辺にまで吹き寄せられていた暖かい海水は東に移動し、さらに海洋下層からの湧昇も弱まって、その結果、太平洋赤道域の東側で海面温度が上昇します。この状態が長く続くのがエルニーニョ現象です(逆に貿易風が強まって水温が低下する現象がラニーニャ現象です)。
一方、気象の分野では南方振動という現象があります。オーストラリアのダーウィンと南太平洋のタヒチにおける気圧が、一方が高くなれば一方が低くなるというように、シーソーのように変化をする現象で、貿易風の強弱に関係しています。貿易風と結びつく現象として、南方振動とエルニーニョ現象、さらに、ラニーニャ現象は密接に関係していることから、これらの現象をひとまとめにして、エルニーニョ・南方振動(ENSO=El Nino-Southern Oscillation)とも呼ばれています。

 水温の高い海水の上空では、海洋に暖められた大気の上昇が起こります。赤道付近で上昇した空気は、北半球では北に、南半球では南に流れ、やがて冷やされて中緯度帯で下降気流となって高気圧を形成します。日本に夏をもたらす太平洋高気圧もこのように形成されます。しかしエルニーニョ現象が起きると、インドネシア周辺の暖まった海水が東に移動することで、大気の循環も東に移動し、結果、太平洋高気圧も日本から遠ざかるように東に移動してしまいます。このためエルニーニョ現象になると日本では梅雨が長引いたり冷夏になりやすいと言われているのです。このように、エルニーニョ現象は日本だけでなく世界中で様々な異常気象を引き起こすこともわかっています。しかし、これらの異常気象は、大気と海洋が相互に作用しそれが伝搬することで起きるもので、その過程では様々な要因が複雑に影響しあっていると考えられます。このため、エルニーニョ現象が発生すると常に冷夏になるというわけではありません。今年の場合、フィリピン近海で水温が高い傾向が続いていることから、これによる大気の対流活動の影響で日本付近では高気圧が発達しほぼ平年並みの夏になる、という予報が出ています(6月25日気象庁発表3か月予報)。貿易風が変動する原因や、エルニーニョ現象が各地域の気候に与える影響については、まだまだ研究が必要な分野です。

 地球観測研究センターでは、改良型高性能マイクロ波放射計(AMSR-E)、高性能マイクロ波放射計2(AMSR2)を使ってエルニーニョ監視海域における海面温度の監視をしており、将来的には、GCOM-Cに搭載される多波長光学放射計(SGLI)のデータも使って監視を続けていきます。今年の日本の夏がどうなるのか、エルニーニョ監視海域の水温変化やフィリピン近海の水温変化について、太平洋高気圧の動向と併せて注意して見れば、興味深いことが見えてくるかもしれません。

 図1〜6は、観測した海面温度とその平年値からの差(偏差)、及び、2002年から現在までのエルニーニョ監視海域における海面温度、及び、偏差の平均の時系列。(時系列中、背景がピンクまたは水色の期間はそれぞれ気象庁発表のエルニーニョ現象、ラニーニャ現象発生期間を表す)
南米沖のエルニーニョ監視海域(NINO.3)では、今年に入ってから水温が上昇し、4月以降、海面温度が平年より高い状態が継続していることがわかります。一方、フィリピンに近い西太平洋熱帯域(NINO.WEST)では、4月以降、急激に水温が上昇していることがわかります。今後の水温変化はJAXA EORCのエルニーニョ監視ページをご覧ください。

AMSR2 SST(Descending passes)
図1 AMSR2 SST(Descending passes)
SST Anomaly [AMSR2 - Climatology(1984-2013)]
図2 SST Anomaly [AMSR2 - Climatology(1984-2013)]
Time series of AMSR-E/Windsat/AMSR2 SST in NINO.3
図3 Time series of AMSR-E/Windsat/AMSR2 SST in NINO.3
Time series of AMSR-E/Windsat/AMSR2 SST Anomaly in NINO.3
図4 Time series of AMSR-E/Windsat/AMSR2 SST Anomaly in NINO.3
Time series of AMSR-E/Windsat/AMSR2 SST in NINO.WEST
図5 Time series of AMSR-E/Windsat/AMSR2 SST in NINO.WEST
Time series of AMSR-E/Windsat/AMSR2 SST Anomaly in NINO.WEST
図6 Time series of AMSR-E/Windsat/AMSR2 SST Anomaly in NINO.WEST

 図7〜8は、海面高度偏差(上:TOPEX/Poseidon衛星が観測した1997年1月〜7月の海面高度の平年値からの差。下:OSTM/Jason-2衛星が観測した今年1月〜7月の海面高度の平年値からの差。TOPEX/Poseidon、OSTM/Jason-2:欧州CNESと米国NASAによる海面高度観測のための共同ミッション)
海面から深層にかけて広範囲で水温が上昇すると熱膨張により海面が上昇します。したがって海面高度が高い海域では水温が上昇していると考えられます。左図を見るとインドネシア付近で発生した海面高度の正偏差(平年より海面が盛り上がっている=水温が高い)が東に移動し、その後、南米沖から西に強い正偏差の海域が広がっていく様子が見てとれます。一方、今年(下)は、インドネシア付近から東に移動する正偏差は見られますが、南米沖に到達した後の1997年のときのような大きな正偏差の広がりは、これまでのところ見られません。

AMSR2 SST(Descending passes)
図7 TOPEX/Poseidon衛星が観測した1997年1月〜7月の海面高度の平年値からの差
SST Anomaly [AMSR2 - Climatology(1984-2013)]
図8 OSTM/Jason-2衛星が観測した今年1月〜7月の海面高度の平年値からの差


観測画像について

観測衛星: 水循環変動観測衛星 しずく(GCOM-W)(図1〜2)
観測センサ: マイクロ波放射計(AMSR2)(図1〜2)
観測日時: 2014年6月29日〜7月3日 (図1〜2)

観測衛星: 地球観測衛星Aqua(NASA), Coriolis, 水循環変動観測衛星 しずく(GCOM-W)(図3〜6)
観測センサ: 改良型高性能マイクロ波放射計AMSR-E (JAXA), WindSat, マイクロ波放射計(AMSR2)(図3〜6)
観測日時: 2002年7月〜2014年7月 (図3〜6)

観測衛星: TOPEX/Poseidon(図7)
観測センサ: レーダー高度計(図7)
観測日時: 1997年1月〜7月 (図7)

観測衛星: OSTM/Jason-2(図8)
観測センサ: レーダー高度計(図8)
観測日時: 2014年1月〜7月 (図8)
本文ここまで。
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