地球が見える 2007年
「赤毛のアン」のふるさと、プリンス・エドワード島
プリンス・エドワード島は最高標高152m、東西224km、南北は6〜64kmの三日月状に横たわる平坦な長い島です。セントローレンス湾を望む島の北海岸、ダルベイ・ビーチからキャベンディッシュ・ビーチまでは国立公園にもなっており、カナダでも有数の海岸として有名です。州立公園が36、キャンプ場が70以上もある、島全体が公園のようなところです。南海岸のサマーサイドは昔から保養所としても有名で、アメリカなどからも避暑に来る人が多いようです。 土地は赤土で肥沃、島の面積の80%が耕作されているため、別名「100万エーカーの農場」とも呼ばれています。図からも、島の方が耕作地の多いのが分かります。大麦、ライ麦、ジャガイモなどが栽培されていますが、プリンス・エドワード島のジャガイモは特に有名です。しかし、何にも増してこの島を有名にしているのは、『赤毛のアン』シリーズを書いたルーシー・M・モンゴメリが住んでいた島だからではないでしょうか。図中左側の赤い枠線で囲んだところが少女アンの「故郷」アヴォンリー村のモデルでもあり、モンゴメリが生まれ育った地、キャベンディッシュ村です。
「赤毛のアン」は1908年に出版され、アンの11歳から16歳までを描いています。画像中央のニュー・ロンドン湾の周りがモンゴメリの暮らしたところです。1874年にモンゴメリが生まれた家は湾の南側、ニュー・ロンドン村にあり、現在モンゴメリ博物館になっています。 モンゴメリは1歳9ヶ月で母に先立たれ、湾の東のキャベンディッシュ村で、モンゴメリの祖父母に引き取られて育ちました。そこには「赤毛のアン」の舞台である「グリーン・ゲイブルズ」、「恋人の小径」、「お化けの森」、「輝く湖水」など作品に登場する場所が残されています。 湾の西に位置するパーク・コーナーにはモンゴメリの第二の我が家であるキャンベル家の農場があります。そこは母方の叔母の家で「銀の森屋敷」と呼ばれ、モンゴメリが1911年に、象牙色のドレスとベールを身にまとい、白い薔薇とすずらんのブーケを 持って、結婚式をあげたところです。現在、屋敷の一部を博物館として公開し、当時のオルガンや家具など「赤毛のアン」の時代の生活ぶりを見ることができます。また、湾の西にはシリーズ第5作「アンの夢の家」のモデルとなった家が残っています。ここはアンが結婚してフォア・ウィンズという漁村で所帯をもった舞台です。 映画「赤毛のアン」ではアンが汽車でアヴォンリーへ到着し、馬車に乗ってグリーン・ゲイブルズへ向かいます。映画に出てくる道路はいずこも赤土でしたが、現在はほとんどが舗装されて白く見えています。しかし、図をよく見ると、所々に赤土の道路が残っているのが見えます。一方、プリンス・エドワード島の鉄道建設は1871年に決定し、島を縦断するよう本線が設置された後、全ての村を結ぶよう支線が縦横に交差して建設されましたが、コストが計画を大幅に上回ったため1989年に廃止となり、現在はコンフェデレーション・トレイルとなって、ハイキングやサイクリングに利用されています。
2008年には「赤毛のアン」出版100周年を記念する祝賀イベントが1年間にわたってプリンス・エドワード島で開催されるようです。
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