地球が見える 2005年
縮小が進む北極海の海氷−2005年は観測史上、最小−
北極海の夏の海氷面積はここ数年減少を続けています(「犬ぞりで行けなくなる?北極点 〜減少を続ける北極海氷〜」参照)が、この夏は昨年の夏よりも一段と縮小して、観測史上最小となり、縮小傾向が依然として続いていることがAMSR-Eの観測によりわかりました。
北極海の海氷の衛星観測が行われるようになったのは1978年のことで、1980年ころの毎年9月の北極海の海氷面積は750万km2前後でしたが、その後、年ごとに多少増減しつつ、次第に減少し、昨年9月の約600万km2を経て、今年9月には約530万km2となり、観測史上、最小を記録しました。 今年の海氷変化の特徴は、早い時期から減少が進み、そして減少が過去最も遅い時期(9月下旬)まで継続していることです。減少が今年特に早い大きな理由は、例年冬季に完全に回復する海氷が、今年は十分に回復していなかったことにあります。2004年12月以降、2005年5月を除き海氷面積は観測史上最低記録を更新し続けています。 この現象は北極振動など従来の考えでは説明が難しく、地球温暖化の影響ではないかと考えられています。 海氷は太陽光を強く反射するため温まりにくく、逆に海面は太陽光をよく吸収するため温まりやすいという性質があります。海氷の量が減少し海面面積が広がると、北極圏に吸収される熱が増えるため気温が上がり海氷はますます減少するようになります。北極圏の過去10年間の平均気温は過去50年の平均気温に比べて2〜3℃上昇しており、2002年以降アラスカやシベリアでは雪解けが2〜3週間も早くなっていることが観測され、海氷の減少とともに気候や生態系に与える影響が懸念されています。 JAXAでは衛星観測を通じこれからも気候変動に関わる現象について報告していきます。
|